7.トゥルーエンドはどっち?
玲子を攻略対象とくっつけようと画策する日々を送っていた。
女子ハーレムはまだまだ時間がかかりそうだったが、長期戦で頑張るつもりでいた。そう、諦めてなどいなかったのだ。
「もう、やめてくださらない?」
「迷惑されているわ」
「なれなれしく接しすぎなのよあなたは!!」
呼び出しをされました。
女の子の誘いを断るわけにはいかぬと、行った先には5人ほどの女子生徒がいた。なんだこの懐かしい感じ。攻略者がらみかと思っていたが、私の予想をはるかに超えていた。
「久遠様から離れなさい!!!」
なんと、玲子関係の呼び出しだった。彼女は取り巻きを作らない珍しいタイプの悪役だった。その気高い様子は、確かにファンクラブの頂点に立つ者であり、皆の憧れだったのだろう。
「いいわね?忠告したわよ!!」
「今度一緒にいるところを見たらただじゃおかないわ!」
そう言って彼女たちは私を置き去りにしてどこかへ行ってしまった。
(どうしよう……。)
玲子と仲良くなってファンクラブの子ともお近づきになろうと思っていたのに。こっぴどく嫌われてしまった。私はしばらく茫然としていた。
悪いことは立て続けに続くものだ。
これからの計画について考えながら歩いていると、珍しく玲子から話しかけられた。
「春風さん、少しいいかしら?」
「玲ちゃん?」
どうしたんだろう、玲子から話しかけてくるなんて。まさか私の熱いアタックが実を結んだのか!?……なんて軽口を叩けるような雰囲気ではなかった。
「あなたがあの方々に好意を持っていないことは十分にわかったわ」
「うん」
だってあいつらヤンデレだもん。
「だからといって、わたくしをあの方々に近づけるようなことはやめてください。……わたくしには、婚約者がいるの」
「ふぇ!!!!????」
「ファンクラブの会員にはわたくしからお話しておきますわ。……ごきげんよう、春風さん」
唖然としている私にそう言うと、玲子は去っていった。今、なんて言った……?
婚約者がいるなんて聞いてないぞ!?もっと真剣にこのゲームの話を聞いておけばよかった!!
後悔しても遅い。
(困った………!)
ヤンデレたちのアタックは、日に日に増していたのだ。生徒会長とか生徒会長とか生徒会長とか。何とかやり過ごしていたが、時間の問題かもしれない。
私は窮地に立たされていた。
「ちょっと来て」
そんな状況を打破してくれたのは、一人のイケメンだった。攻略者たちに出会わないようビクビク廊下を歩いていた。あいつらは突然現れるからね…!!Gかってくらいに。
突然腕を掴まれ、空き教室に連れていかれる。
「お前、『僕の中には君ひとり』ってゲーム知ってるか?」
「えっ!?」
頭の中のはてなマークは、びっくりマークに変わる。イケメンの口から衝撃的な事実が話されていった。
彼はある日突然思い出した。
自分は以前死んでしまったことを。そして思い出す。妹に無理やりプレイさせられたゲームの世界であることを——。思い出した彼はこのゲームの主人公を観察してみることにした。
しかしどうもおかしい。主人公は話どうりに動かず、攻略者の誰ともくっつかない。そしてある推論を導き出した。
もしかして、自分と同じ転生者なのではないのか?
「………というわけだ」
すごい、この人頭いい!てか私以外にもいたんだね転生者!!超感動した!てか、このゲームのことを知っているとはつまり……
「これ乙女ゲームで年齢制限ありだよ?」
「マジつらかった」
ご愁傷様です。女である私でさえ苦痛に感じたのだ。男である彼は……心中痛み察します。
「俺は隠しキャラの深水 真琴だ」
「隠しキャラ!?」
なにそれ初耳。このゲームそんなのいたんだ!!
「ファンクラブないみたいだけど」
これほどイケメンだったらありそうだ。なのに私は彼を今日初めて見た。深水はあっさり言った。
「潰した」
なんですと!?あ、分かった。だから隠しキャラなんだーなるほど納得☆……って物騒だなおい。
「何回潰しても、理解できないバカがファンクラブを立ち上げようとしてうっとおしい。……なぁ、取引しないか?」
「取引?」
「お前、俺の恋人にならないか?」
はい!?なんでそうなるの!?急な展開に、頭がついていかない。
「付き合ってるフリでもいい。俺はファンクラブが面倒だ。お前は、あのヤンデレ攻略者たちにせまられてるだろ。ヤンデレが好みなら別に構わないが……」
特に生徒会長。
あいつのルートは全部みたけど、正直ツライぜ?
苦笑いしながら深水に言われる。
ぞわり。
背筋に薄ら寒いものが通った。
「こんな馬鹿げたゲームだけど、俺は何も関わらず平穏に過ごしたい。何もずっとじゃなくても、好きな奴ができるまででいい……どうだ?」
魅力的なお話である。同じ転生者だから気も楽だ。他の攻略対象たちを避ける理由にもなるから、今度はもっと楽に女子ハーレムの道が開けるかもしれない!!
「よろしくお願いします!」
私は彼の手を取った——
「じゃあ、またね!」
そう言って手を振る彼女は小動物のようで愛らしい。後姿を眺めながら、誰もいない空き教室でぽつりと呟いた。
「オレ自身がヤンデレじゃないなんて一言も言ってないけどな。……しのさま?」
ずっと彼女のことを見ていた。彼女が交通事故に遭ってしまうまでずっと。『しの』のいない世界に意味はない。そう思って自ら命を絶った。
そして、見つけた。姿かたちは違っても、あれは『しの』だと一目で分かった。
もう次は絶対に離さない。
「ゲームスタート」
唇が弧を描く。
物語はまだまだ始まったばかり——
これにて完結です。
ちなみに真琴は精神束縛系ヤンデレです。
じっくり時間をかけて主人公を洗脳していくでしょう。
読んでいただいきありがとうございました!




