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19:卒業旅行

 少し早めの卒業旅行――台湾。

6人共初台湾なこともあって、それぞれがガイドブックを買い、行きたい場所、周る順番が決まるまでそれは大騒ぎだった。


チェックインを済ませて早々に出発する。さすがに6人で泊まれる部屋はなかったから、3人ずつで2部屋。部屋割りはじゃんけんで決めた。誰と一緒になっても楽しい大好きな友達。


まずは腹ごしらえ、と小籠包を目当てにお店へ向かう。敢えて日本でも有名なあの名店ではない別のお店へ行った。信じているからね、ガイドブック。


結論から言いましょう。何もかもが絶品だった。何種類もある小籠包を6つずつたくさん頼んだ。ショウガが取り放題なことにはびっくりだった。日本で食べると千切りショウガが数本しかついてこないもんね。大根餅も美味しかった。


お腹を満たした後は、迪化街巡り。思う存分買い物三昧だ。みんな旅テンションで変なもの買っちゃうんだよね。これ帰ったら絶対使わなそう、なんてものも大笑いしながら買っちゃった。

家族へのお土産に、お茶や乾物をたくさん買った。家族用は袋に入ったお茶にしたけれど、廣田くんへのお土産は可愛い缶に入ったものを選んだ。美夕には人気の台湾コスメにした。


あまりにもたくさん買いすぎたので、一度ホテルに荷物を置きに戻った。便利な場所のホテルにしてよかったね、なんて言いながらすぐにまた出発。


次に目指したのはアイスクリーム屋さん。6人で円陣を組むように丸くなって、中央にアイスを並べて写真を撮った。マンゴーのアイスと、台湾茶のアイスが美味しかった。


その後は高級店へ。「彼氏にお土産ー」っていう友達と一緒に私も少しドキドキしながらついて行った。どうやらネクタイを買うみたい。私も買おう、かな。友達に廣田くんと付き合い始めたことは報告済み。


友達たちは両手にネクタイを持って、頭をひねっている。

廣田くん、どんなネクタイが似合うかな。小学校の先生だってスーツを着る機会はあるものね。何本持っていても邪魔にならない。うん、贈っても大丈夫。私はひとり自分に言い聞かせながらネクタイを選び始めた。


ついつい奇抜な色に目が行くけれど、こういうのは好みが分かれそう。私は一本のネクタイを手に取って、それをじっと眺めてみた。藍色のネクタイで、何色かの同系色のストライプが入っている。派手じゃなくて、ありふれているかもしれない。でもきっと廣田くんに似合う。

店員さんが、紺やグレーのジャケットにそのネクタイを合わせて見せてくれた。うん、いい感じ。


「これをお願いします」


細長い箱に入れて、紙袋で渡してもらった。受け取る手が少し緊張していた。気に入ってくれるかな、そうだと嬉しいな。


その日の夜、私は小籠包の写真と6人の手とアイスが写った写真を廣田くんに送った。


 翌日も目いっぱい観光して、あっという間の帰国だ。「楽しかったね」「次はヨーロッパだね」って言いながら、地元の空港に着いた。


飛行機を降りてすぐ、廣田くんにLINEを送った。


[着きました。今から電車に乗って帰ります]


[おかえり]


その一言が嬉しかった。


 家に帰り荷物を開く前にお茶で一息入れた。お土産で買ってきた東方美人茶を早速お母さんが淹れてくれる。お湯が沸くまでの間も、お茶を飲みながらも、いっぱい話をした。それからようやく片づけをして、自分の部屋に戻る。机の上にちょこんと座っているこけしが出迎えてくれた。「ただいま」


次の月曜日の夜には美夕に会って、お土産を渡した。美夕専用に買ってきたコスメの他に、パイナップルケーキも付けて。


「ありがとう!台湾楽しかった?」


から始まって、美夕ともたくさん話をした。ねえ美夕、気がついている?愚痴が減ったね。お客さんとこんな話をした、あんなことがあったって楽しい話を次々してくれるようになったよ。

廣田くんとのことも話そうか迷ったけれど、この日は止めておいた。美夕と廣田くんも友達だものね。ちゃんと廣田くんに聞いてから話す方がいいかなと思って。


翌日は美夕がお休みの日。だから早めに解散しようと思って店を出た。同じバスに乗って家へ帰る。バスを降りるときになって美夕が小さな包みを渡してきた。


「1日早いけど、誕生日おめでとう沙樹」


それだけ言って、タタタと降りて行っちゃった。バスを降りた美夕がこっちを見てくれたから「ありがとう」と口だけ動かして伝えてみた。ニカッと笑った美夕が大きく手を振ってくれる。帰ったらちゃんとLINEでお礼を言わなくちゃ。



そう、明日は私の誕生日。数日ぶりに廣田くんと会える。毎日LINEでやり取りしていても、直接会える日は特別。何を着ていこうかな、ネクタイ気に入ってくれるといいな。

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