第7回 劉曄、劉表に仕える
劉曄は成徳県に戻った。
劉渙は、弟の無事の帰還を喜んだ。劉曄はここに至るまでの話を劉渙にした。
「なるほど・・・。劉勲殿はお前の助言を聞かずに滅びたか・・・。」
「はい。しかし、劉勲と孫策では元々の器の大きさが違いますから、いずれにしても、孫策には太刀打ちできなかったと思います。」
「孫策は、それほどの人物か?」
「はい。大げさに言えば、この国の南方を全て支配してもおかしくない人物だと思われます。」
「それほどか。ところで劉曄よ、お前は劉表殿のことは知っているか?」
「はい。荊州一帯を治めている、大儒でも名の高いお方だと思いますが。」
「実は、お前が劉勲殿に出仕した直後に、劉表殿の使者がここに参った。」
「劉表殿の使者・・・。どういった要件だったのですか?」
「劉曄、お前の事を是非、高位で迎えたい、という話であった。」
「劉表殿が・・・。」
「ああ。劉表殿も我らと同じ王族の血筋。私としては悪い話ではないと思うが。」
「確かにそうですね。しかし兄上、私が劉表殿の所に行ってしまっても大丈夫でしょうか?」
「劉曄。お前の才能を活かすには、この場所はあまりにも狭く、小さい。劉表殿の下であれば、お前の才能を大いに活かせるのではないか。」
「わかりました。兄上がそうおっしゃるなら、劉表殿に会いに行ってみます。」
「使者殿からこの書状を預かっている。これを見せれば、すぐに会うことが出来るとのことだ。」
「ありがとうございます。それでは、早速、行って参ります。」
「うむ。息災でな。何かあれば、いつでも戻ってくるがよい。私はお前の帰りを待っている。」
劉曄は劉渙に拝礼した。
劉曄は劉表の居城である襄陽に向かった。
特に急ぐことは無い、と一〇日程かけて到着した。
劉曄はすぐに荊州牧の劉表がいるであろう州府に向かい、門番に劉渙から預かった書状を渡した。門番は劉曄に拝礼し、「しばし、お待ちを」と言って中に入っていた。しばらくすると、別の者が出てきて拝礼して言う。
「劉曄様、お待ちをしておりました。劉表様もすぐにお会いしたい、とのことですので、どうぞ、中へ」
誘われるがまま、劉曄は奥へと向かった。そこに、緩やかな儒服をまとい、穏やかな雰囲気を醸し出し、立派で美しい髭を蓄えている男が待っていた。劉表である。
劉表は立ち上がり、自ら劉曄を部屋の中に迎え入れた。そして言う。
「劉曄殿、よくぞいらしてくれた。私は荊州牧を拝命している劉表です。遠い所、お越しいただいたことに感謝する。」
劉曄は拝礼して言う。
「いえ、こちらこそ、すぐに参れず申し訳ございませんでした。まだ何者でもない私の様な若輩者にお声をおかけ頂いたこと、心より感謝致します。」
「何をおっしゃる。揚州だけではない、こちら荊州にも劉曄殿の名士としての評判は聞こえてきている。率直に言う。この劉表に劉曄殿の力をお貸し願えまいか?」
「私の力・・・。何が出来るかわかりませんが、私なりに劉表様のために尽くさせて頂きます。」
「そうか、お聞き届け頂けるか!この上ない喜び。まずは、賓客として劉曄殿の持てる力を発揮してほしい。どんな直言、諫言でも、思ったことをおっしゃって頂ければ。」
「かしこまりました。今後とも、よろしくお願い致します。」
こうして、劉曄はしばらくの間、劉表に賓客の立場で仕えることになるのである。




