第49回 劉曄、濡須口攻めの軍議に加わる
西方は、潼関の戦いを制することで、しばらくは安定する、と曹操は考えた。そして、そのまま、漢中の張魯、益州の劉璋へと進むのか、赤壁の雪辱もあり、孫権を攻めるのか。
結論として、曹操は孫権を攻めることを選んだ。
曹操は主だった者を招集し、軍議を開いた。その末席に、劉曄も連なっている。
曹操が言う。
「率直に言う。赤壁の雪辱を果たすために、孫権攻めを考えている。まずは、濡須口に向かって進軍したいと思う。皆の者、賛否は問わない、意見を言ってくれ。」
まず、董昭が発言をする。
「西方が安定した今、その目が南に向かうのは必然だと思います。私は、賛成致します。」
程昱が言う。
「私も賛成です。今、西方の戦いの圧勝を受けて、我が軍の士気は最高潮に達していると言えましょう。ここは、勢いに乗り、一気呵成に攻勢に出るべきかと。」
荀攸が言う。
「水戦になりますので、赤壁同様、簡単な戦いではないと考えますが、以前に比べれば、こちらの勝機は見出しやすいと言えるでしょう。よって、賛成と致します。」
参加していた夏侯惇や曹仁も、当然のように賛意を示した。
ここで、曹操が言う。
「賈詡よ、お前の意見はどうなのだ?」
「はい・・・。皆様のおっしゃることはよくわかるのですが・・・。やはり、水戦という我が軍から見れば不得手な戦いとなりますから、予断を許さない戦いになると思います。」
「勝機は、全く無いと考えるか?」
「いえ、そこまでは言いません。しかし、簡単な戦いではない、ということはお伝えさせて頂きます。」
「わかった。完全に反対、というわけではないと。劉曄、お前はどうだ?」
劉曄は迷った。素直な自分の意見を言えば、「反対」、ということになる。その時、賈詡が自分に送る視線を感じた。この視線は何を意味するのか。考えた末に、発言する。
「西方の大勝利にて、我が軍の士気は高まっています。水戦が難しいのは事実ですが、挑戦する価値はあると思います。」
「挑戦か・・・。確かに、我が軍にとって、水戦はまだ挑戦と言える段階かもしれんな。」
曹操は続ける。
「皆の者の意見はわかった。勢いに乗りつつ、慎重に事を進める。よって、濡須口攻めをここに決定する!」
全員が拝礼をし、退出した。
劉曄は一人になった時、賈詡が送ってきた視線の意味を改めて考えた。
「反対するな、賛成せよ!」
そう劉曄は受け取った。
何故なら、軍議の大勢は決まっていた。
ここで、末席の劉曄が反対を唱えても軍議の決定は覆らないこと、そして、もし、反対をしていれば、「やはり荀彧の影響か」と、曹操に思われる危険性があった。
それを、賈詡は視線を送って劉曄に伝えてくれたものだと思い、心の中で感謝した。
こうして、曹操は赤壁の雪辱を晴らすべく、濡須口に兵を向けるのである。




