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三国志・劉曄伝ー曹操の影として生き切った漢ー  作者: 涼風隼人


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第48回 劉曄、早々に書状を渡す

 曹操はまだ魏公に就任していない。

 

 しかし、その日は刻々と近付いていると言っていいであろう。董昭を中心とした重臣たちが、確実に外堀を埋めている。

 

 その様な最中、劉曄は曹操に荀彧からの書状を預かった旨、報告をした。すぐに曹操に召し出された。

「劉曄、荀彧の長男である荀惲から書状を預かったそうだな。」

 

「はい。ここに荀彧様の封泥が施されております。」

 

 曹操の側近くにいる者が、その書状を取りに来た。

 

 曹操は書状を眺めて言う。

「確かに荀彧の封泥だ。どれ、早速開けてみよう。」

 

 曹操は自ら書状を取り出した。

 

 曹操はゆっくりと、書状に目を通した。そして言う。

「劉曄よ。ここに書かれている内容をお前は知らないのか?」

 

「はい。荀惲殿も知らない、と申しておりました。」

 

「そうか・・・。これが荀彧の最後の言葉ということか・・・。」

 

 曹操は、まじまじと書状を見つめて、言った。

「何事においても慎重な荀彧らしい言葉が連なっておる。劉曄よ、中身を確認せよ。」


「かしこまりました。」


 劉曄は書状を受け取り、読んだ。内容はこうである。

「曹操様。私は、曹操様のお力で漢室の復興をすることだけを願い、これまで生きて参りました。魏公になられることを反対したのは、決して曹操様にその力量が無いからというわけではなく、あくまで、私一人の信念に基づくものです。私は、この思いを、長男以下、自分の子供達に伝えたことも無ければ、押し付けることなどもしておりません。私が亡くなった際には、是非、曹操様の下で、曹操様の国で何かしらのお役目を頂けるようであれば、ありがたき幸せです。そして、数年間、私と共に許都で過ごした劉曄殿でございますが、劉曄殿につきましても、漢室の復興を願う、と言った話を個人的に一切したことはございません。それ故、私と距離が近かったという一理で、劉曄殿を遠ざけることだけはお控えいただきたく存じます。劉曄殿は、曹操様の覇道を力強く後押しするだけの力を十二分に持ち合わせております。これからの時代を率いていく人材であると考えますので、我が子同様、曹操様の下でお引き立て頂きたく、重ねてお願い申し上げます。さしたる功も無き私が、曹操様へお願いをするなど本来は許されず、自ら恥じ入る所ではございますが、愚臣の最後の言葉としてお受けいただければと思います。」


 劉曄の瞳から涙がこぼれた。


 死の際に立たされた時、息子だけではなく、自分の様な者のために、曹操へこの様な書状を書いたのはどういう気持ちであったのであろうか。


 この荀彧の優しさに、劉曄の涙は止まらなかった。


 その劉曄を見ながら、曹操が言う。

「劉曄よ。この私にも荀彧の言葉は十分伝わった。荀彧の家族もお前も、私の下で安心して働くがよいぞ。劉曄、王佐の才たる荀彧にここまで言わせたのだ。しっかり結果を出してくれ、頼むぞ。」


 劉曄は涙をぬぐい拝礼して退出した。


 こうして、劉曄は曹操の「覇道」を後押しすべく、ここから益々の活躍をしていくのである。

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