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三国志・劉曄伝ー曹操の影として生き切った漢ー  作者: 涼風隼人


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45/64

第45回 劉曄、潼関の戦い(五)

 朝日が昇る。

 

 両陣営に、闘気が漲ってきた。

 

 馬超は、相変わらず陣頭に立つ。馬超が言う。

 「曹操よ!韓遂の身柄は拘束した!お前の策謀は、我々には通用しない!いざ、尋常に勝負せよ!」

 

 許褚が答える。

 「丞相は匹夫の勇を振るうお方ではない。どうしてもというのであれば、再びこの許褚がお相手致す。」

 

 「許褚か。相手に不足はない、参る!」

 

 馬超は陣営より勢いよく飛び出した。

 

 許褚も負けじにと前に進む。

 

 再び、両者の打ち合いが始まった。

 

 賈詡が曹操に言う。

 「馬超はやはり何もわかっていないようです。総大将でありながら、一騎打ちに興じるとは・・・。丞相、ここを逃す手はありません。夏侯淵殿率いる先鋒を、敵陣営に突撃させてください。」

 

 「わかった。夏侯淵!出番だぞ!先日の仕返しをしてやれ!」

 

 夏侯淵が言う。

 「徐晃、張郃、出撃だ!」

 

 夏侯淵は雪辱を晴らすべく、敵陣営に猛烈な勢いで突撃をかけた。

 

 馬超は相変わらず、許褚と一騎打ちをしており、総大将として、指揮官としての責務を忘れている様であった。今までは、その部分を韓遂が後ろで担っていてくれたことに、馬超はまだ気付いていなかったのである。

 

 さすがの馬超も、全体的に自軍が押し込まれていることに気付いた。しかし、許褚がなかなか離してくれない。

 

 先鋒の指揮系統は乱れ、夏侯淵軍の餌食となっていく。

 

 この時の夏侯淵の獅子奮迅の働きは、今までで一番と言えるものであった。敵兵を次々に血祭りにあげる。

 

 そして、陣形も大きく乱れだし、軍閥の長たちでは、立て直すことが出来なかった。唯一、善戦していたのは楊秋であるが、楊秋も全体の戦局を変えることは出来ずに、徐々に後ろに下がり始めた。

 

 そしてとうとう、反乱軍の陣営は崩壊の一途を辿った。

 

 ここにきて馬超は、ようやく、あの書状が曹操の策略であることを理解した。許褚をかわしつつ後退し、韓遂の軍営を目指した。

 

 馬超はすぐさま韓遂の縄をほどき、全体の指揮をとり、立て直しをすることを願い出た。しかし、既にその様な状況は通り過ぎ、出来ることと言えば、それぞれの本拠地に逃げ帰ることくらいであった。

 

 夏侯淵は徐晃と張郃に言う。

 「只今より、急行軍の構えで進む。安定に逃げるのであろう楊秋を生け捕りにするぞ。遅れることなく、ついて参れ!」

 

 急行軍の指揮と言えば、曹操陣営では夏侯淵か、張遼が得意とするとこであり、それについていく能力が徐晃と張郃には備わっていた。

 

 初日の敗北の全てを清算するかのように、夏侯淵はものすごい勢いで突き進む。兵たちも、必死に食らいつき、凄まじい速さで追撃を行い、とうとう楊秋を生け捕りにしたのである。

 

 夕暮れとなった。戦場に転がる死体は、ほとんどが反乱軍のものであった。残念ながら、韓遂と馬超を取り逃がしたが、これだけの打撃を与えれば、しばらくは動けないであろう。

 

 軍閥の長たちも、討ち取られた者が多く、生き残った者は全員が今後、曹操に忠誠を誓うことを約束した。

 

 こうして、関中の平定作戦は完了した。

 

 劉曄はこの大戦を通して、君主の器量、軍師の智謀、将軍の技量、その全てが重なったとき、こうも強さを発揮することが出来るのだと、改めて実感した。この充実した時間は、今後の劉曄に大きな影響を与えた。

 

 こうして、曹操軍は関中の支配を改めて鍾繇に任せ、自らは鄴へと帰還した。

 

 そして、時代は新たなる方向へ、向かおうとしているのである。

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