第41回 劉曄、潼関の戦い(一)
曹操軍が潼関に到着した。
既に、韓遂を総大将とした反乱軍は、万全の陣を敷いてこちらを待ち受けている格好であった。
曹操が言う。
「なかなか壮観な陣立てだな。さすがは韓遂、と言うべきか。」
実は、曹操と韓遂は旧知の間柄であった。
若き時、官僚として洛陽でともに働いたことがあるのだ。
「若い時の韓遂は、帝のために働きたい、と言っていたのが、今ではこの漢の丞相に歯向かう逆賊に成り下がったか・・・。」
賈詡が言う。
「丞相。敵陣を見ますに、韓遂の威令が行き届いているのでしょう。私が思っていた以上に、隙の無い陣立てになっております。これは容易ではありませんぞ。」
「わかっている。速戦速攻で何とかなるものでもなさそうだな。」
「はい。こちらから仕掛けず、相手の出方を見るのがよろしいかと。しかし、一時の油断が命取りになります故、こちらとしては守りながらも常に臨戦態勢を維持する必要があります。」
「そうであろうな。敵の先鋒は、馬超か?」
「恐らくは。韓遂が本陣を守り、関中の軍閥を馬超が率いるという格好になりましょう。丞相の傍らには、いつもの様に、常に許褚殿がいるようにしてください。馬超は、非常に危険な存在となります。」
「わかった。賈詡よ、いつにもまして慎重な提言だな。」
「はい。正直申し上げれば、にわか仕立ての烏合の衆であることを期待しておりましたが、その期待は見事に裏切られました。こちらとしても、性根を据えて戦う必要があります。」
「そうだな。劉曄、お前はどう見る?」
劉曄は、敵の韓遂たちの陣を目の当たりにして、その荘厳さに「これが本当の戦か」と思った。そして、言う。
「西方の兵と言うのは、屈強ではあっても、まとまりや協調性に欠けるのではないか、と思っておりましたが、この陣立てからは、そういった乱れは感じられません。準備万端で、こちらが出てくるのを待ち構えているのがよくわかります。ただ・・・。」
「ただ、何だ?」
「敵は戦いを急ぐと思います。それは、こちら以上に、兵糧の心配があるからです。急ぐ敵を如何にかわしながらこちらの優位に持っていくかが、勝負の分かれ目となりましょう。」
「なるほど、兵糧の心配か・・・。こちらは万全を期しているが、確かに奴らに余裕はないであろう。それ故、敵は速戦速攻でやってくるか。」
「はい。必ずや、近いうちにあちらから動き出すものと思います。」
賈詡が言う。
「劉曄殿の申す通りです。丞相、もう少し本陣を後ろに下げられたら如何でしょうか?」
「いや、緒戦はこのままの状態で挑みたい。いざとなれば許褚がいる、心配するな。」
曹操は後ろに控える許褚を見ながら言った。許褚は「俺に任せろ」と言わんばかりの視線を賈詡に向け、小さく頷いた。
こうして、お互いのにらみ合いがしばらく続く。
そして、いよいよ、開戦の火ぶたが切られるのである。




