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三国志・劉曄伝ー曹操の影として生き切った漢ー  作者: 涼風隼人


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第39回 劉曄、軍議に参加する

 曹操により、西方遠征の軍議が招集された。

 

 参謀の筆頭は、賈詡であり、将軍の筆頭は夏侯淵となる。

 

 その他、錚々たる顔ぶれがそろった。

 

 曹操が言う。

 「皆、そろったようだな。この軍議に参加させている者全てに、等しく発言の権利を与える。官位や経験などで遠慮せずに、忌憚ない意見を言ってもらいたい。」

 

 全員が拝礼した。曹操が伝える。

 「まずは、鍾繇。お前の方では、今回、我々の目的は漢中の張魯討伐と益州の劉璋の討伐が目的であり、関中の通行を許可してほしい、と割拠する軍閥と、西涼の韓遂、馬超に触れを出してほしい。」

 

 「かしこまりました。長安に帰りましたら、その様に致します。」

 

 曹操が続ける。

 「無論、これは口実だ。今回の狙いは、関中の軍閥を一掃すること、そしてあわよくば、涼州の韓遂と馬超を討ち取ることが目的となる。」

 

 曹操が更に続ける。

 「そして関中の軍閥を一掃し、安定したところで、漢中の張魯、益州の劉璋を狙う、というのが今のところの考えだ。この方向性に、意見がある者は、是非、発言してほしい。」

 

 夏侯淵が発言をする。

 「なぜ、鍾繇殿に事前の触れを出せとのご命令なのでしょうか。いずれは倒さなければいけない相手であれば、各個撃破していく方が危険は少ないように感じますが。」

 

 曹操が言う。

 「夏侯淵、確かにお前の言う通り、各個撃破していくことは可能であろう。しかし、それには時がかかる。私の考えとしては、全てを一ヶ所に集め、一網打尽にする方が労力はかからないと考えてのことだ。」

 

 「考えが至らず、申し訳ございません。」

 

 「いや、軍議の場で疑問を解消するのは恥ずかしいことではない。この後も、何かあれば申せ。」

 

 夏侯淵は拝礼した。

 

 曹操は続ける。

 「鍾繇、仮に反乱軍が長安に向かった場合、それを跳ね返す勝算はあるか?」

 

 「残念ながら、今の長安では難しいかもしれません。」

 

 「そうか。その場合は、すぐに長安から離脱するように。被害を最小限に抑えることを考えてくれ。特に鍾繇、お前が死ぬことは絶対に許さぬ。」

 

 「かしこまりました。丞相の仰せのままに。」

 

 曹操が言う。

 「賈詡よ、今回の戦い、どう考える?」

 

 「はい。丞相の方針通り進めれば、こちらの勝利は揺るがないでしょう。ただし、私は涼州出身でありますので知っていますが、兵個々の力を比べた時、涼州兵が勝ると思っていただいきたい。それ故、できれば丞相は後方にお控えいただいた方がよろしいかと存じます。」

 

 「なるほど、わかった。ただし、緒戦に関しては、少し前方に本陣を置き、敵の実力を見極めたい。」


 「かしこまりました。許褚殿、いつも通り丞相の身辺警護、よろしくお願い致します。」


 「無論です。命懸けで、対応を致します。」


 曹操が言う。

 「ところで劉曄、何か意見はあるか?」

 

 劉曄は一呼吸おいてから話し出す。

 「はい。以前、許都において、関中の軍閥の勢力の情勢分析を荀彧様としたことがございます。軍閥同士が一枚岩になるのは、おそらく最初だけです。利権の絡みなどから、徐々にその結束は崩れてくると思います。そこを突ければ、こちらの勝利はより確実になるでしょう。また、優秀な人材もそれなりにいると考えられ、降伏する者は今後の関中安定のためにも、受け入れる度量が必要だと思います。」

 

 「なるほど。人材の登用とな。例えば、代表的な者はおるか?」


 「代表としては、安定の楊秋でしょうか。安定は良く治まり、その兵の強さは関中では一番だと思われます。」


 「楊秋か・・・。確かに、使えそうだな。覚えておこう。」

 

 曹操が聞く。

 「他に何か聞きたいことや意見がある者はおるか?」

 

 見渡した限り、誰もいなかった。

 「それでは、これにて軍議を終了する。各人、自分の役割をしっかりと果たしてくれ、頼んだぞ。」

 

 全員が拝礼した。

 

 劉曄が退出しようとしたとき、賈詡が声を掛けてきた。

 「劉曄殿。お久しぶりでございます。その後、荀彧様の下で修養されたと聞いておりました。」

 

 「賈詡様。ご無沙汰しております。色々とお世話になったにもかかわらず、お礼を言う機会もございませんでした。」

 

 「それにしても、先ほどの情勢分析、中々のものでしたぞ。人材の登用にまで気を配ったのはお見事でした。」

 

 ここで曹操が言う。

 「そうか。もともと、劉曄は、賈詡の紹介で我が陣営に来たのであったな。」

 

 賈詡が言う。

 「はい。あの頃の劉曄殿は若さが故、その鋭さが体中からほとばしっているような感じを受けましたが、数年の間に円熟味が増したようですな。」

 

 「賈詡よ、うまいことを言うな。確かに、荀彧の下で学ばせたのは様々な効果があったようだ。」

 

 劉曄が答える。

 「お恥ずかしい限りでございます。荀彧様の名を汚さぬよう、尽力したいと思います。」

 

 曹操が言う。

 「劉曄よ。今回は、私と賈詡の側にいるように。大戦になるであろうから、しっかりとお前の経験と言う名の糧にするがよい。」

 

 劉曄と賈詡は拝礼して立ち去った。

 

 劉曄が、賈詡に話しかけようとしたとき、賈詡は首を横に振った。

 

 「以前申し上げた通り、お話するのは軍議や幕営の中のみ。外に出れば、必要以上に話をするのは控えるべきです。」

 

 劉曄は拝礼して、賈詡を見送った。

 

 こうして、軍議は終了し、間もなく、大規模と言える征西が始まるのである。

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