第33回 劉曄、孫権の合肥侵攻の急報を聞く
曹操が荀彧、劉曄と話をし、鄴に戻ろうとする最中、許都に急報が飛び込んできた。
「孫権自ら、合肥に侵攻開始。その兵力、一〇万」というものであった。
曹操が言う。
「孫権め・・・。小癪な真似をしおって・・・。」
荀彧が言う。
「さすがに一〇万と言うのは、大げさな気がします。その実数は、多くても四、五万、さらに言えばもっと少ない、と言ったところではないでしょうか。」
「そうであろうな。江陵を周瑜に攻めさせ、且つ、合肥を攻める二面作戦を大軍で行えるほどの兵力は有していまいからの。しかし、合肥は我が方にとっても失うことは出来ぬ場所だ。私自ら、援軍に立たねばなるまい。」
ここで劉曄が言う。
「援軍を出す必要はあるかもしれませんが、合肥城は先日お亡くなりしました、築城の名人と言われた劉馥様がその心血を注ぎ築き上げ、物資の備蓄も十分な堅͡固な城と言えます。今、合肥を預かる蒋済様の知略もありますれば、そう易々と孫権に打ち負かされることはないのではないでしょうか。」
荀彧が言う。
「劉曄殿の言葉、ごもっともだと思います。取り急ぎの援軍をまずは送り、丞相は十分な準備をされてからでも間に合いましょう。場合によっては、出陣する必要無く、孫権を退ける可能性もあると思います。」
曹操が言う。
「そうか。それではまず張喜に五〇〇〇騎を与えて先行させる。そして、状況に応じて私も出陣することにしよう。」
曹操は劉曄と荀彧の言葉により、いつも通りの冷静な判断を行った。そして、劉曄の言う通り、蒋済の知略が冴えわたる。
蒋済は、曹操が合肥城宛に出したように見せかけた偽の使者三人を仕立てて、その書状にこう書いた。
「まずは耐えよ。取り急ぎ、張喜に五万の兵を託し先行させた。その後、私自ら合肥に駆け付ける。」
このうちの二人を、意図的に孫権軍に捕らえさせたのだ。
この二通の書状を見て、孫権は慌てた。
「取り急ぎの援軍で五万、その後に曹操自ら来ると申すか!それでは、話にならん。口惜しいが、ここは急ぎ撤退だ!」
孫権は、蒋済の偽書の計にはまり、全軍で撤退していったのである。
曹操はこの話を受けて、劉曄に大いに感心した。そして、心の中で呟いた。
「その力、本当かどうか、見せてもらうか。」
こうして、劉曄は新たな道へ進むことになるのである。




