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三国志・劉曄伝ー曹操の影として生き切った漢ー  作者: 涼風隼人


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第23回 劉曄、許都にて鄴の陥落を知る

 曹操は荀彧からの書状を確認した。最後に一筆入っていた。

 

 「此度の見立ては、劉曄殿から出たものです。」

 

 曹操は荀彧が予測した通り、この書状を見て大笑いをした。

 

 控える側近たちの筆頭である荀攸が聞く。

 「曹操様、その書状には一体何が。」

 

 曹操は、書状を荀攸に渡した。賈詡、程昱、郭嘉など参謀たちがそこに集まり、皆で書状の内容を確認する。

 

 荀攸が言う。

 「劉曄殿、まだお若いのに、かなり優秀な方なのですな。この見立て、こちらの見立てと全く同じ、と言っていいものでしょう。」

 

 「ああ。何と言っても、荀彧から直接薫陶を受けているからな。最初は才気煥発、その才がやや先走りすぎていたように感じたが、いよいよ成熟してきたと言えよう。近い将来、お前たちと共に働くことになるかもしれんな。」

 

 この話を聞いて、賈詡は思った。

 「劉曄殿、ここまで成長したか。あとは、必要以上に目立たぬよう、謙虚さを持ち合わせてくれれば、問題ない。ともに働ける日を楽しみにしておりますぞ。」

 

 実際に、今後の展開はまさに劉曄の見立て通りのものになっていく。

 

 まずは袁譚軍を前面に押し出し、冀州の最重要拠点「鄴」周辺の支城を次々と落としていく。そして、とうとう鄴を包囲するに至ったのである。

 

 冀州は大混乱、鄴の袁尚もこれまでにない焦りを感じていた。袁尚が言う。

 「兄上・・・。いや、袁譚め。袁家の恥さらしよ、まさか曹操と手を組むとは・・・。それほどまでに、父に愛されていた私が憎いのか・・・。」

 

 審配が言う。

 「私も、袁譚がここまでするとは思いませんでした・・・。しかし、こうなった以上、次なる一手を考える必要があります。」

 

 「何を考えるというのだ!この状況で、戦う術がまだ、何かあるというのか!」

 

 郭図が言う。

 「こうなりましたら、出来ることと言えばひとつしかありますまい・・・。」

 

 「何だ、何か策があるのか!」

 

 「いえ・・・。この状況で籠城をしても、援軍のあてはありませぬ。幽州の袁煕様は、この争いに加わる気は無い様子ですので。ですが、兄弟のよしみとして、逃亡すれば受け入れてくれるのではないでしょうか?」

 

 「逃亡・・・。幽州か・・・。審配、どうだ?」

 

 「郭図殿の言う通りだと思います。ここはまず幽州に向かい逃亡し、次の一手を考えるべきかと・・・。」

 

 「・・・。わかった、そうしよう。しかし、こんな惨めな思いをするとは思わなかった・・・。袁譚め、絶対に許さぬぞ!」

 

 こうして袁尚は、側近たちと夜陰に紛れて、次兄の袁煕を頼って逃亡をしたのである。

 

 翌朝、主を失った鄴はあっさりと陥落をした。

 

 ここに、曹操は完全に冀州を掌握し、今後、この鄴を軍事の拠点として定め、更なる飛躍の足掛かりとするのである。

 

 曹操は、ここまでの状況を、許都を守る荀彧に知らせた。

 

 荀彧は劉曄を呼び出し、言う。

 「劉曄殿。あなたの見立て通りに事は進み、鄴を落とすことで冀州の制圧は完了致しました。」

 

 「私の見立てなど、曹操様の参謀陣の方々がそれを上回るものをしていたと思いますので・・・。」

 

 「曹操様の側で仕えている甥の荀攸からも文が来たが、皆、劉曄殿の事を褒めていた、とのことだ。」

 

 「お恥ずかしい話でございます。」

 

 「劉曄殿は、謙虚さにも磨きがかかってきたな。それはとても大切にした方がいい。さて・・・。」

 

 劉曄は荀彧の言葉を待った。

 「袁尚は逃亡したとのことだが、どこへ向かったと考えるのが自然かな?」

 

 「今の状況では親族を頼るしかないと考えます。すなわち、次兄の袁煕が治める幽州ではないかと。」


 「その通り。そして、袁煕は受け入れると思うか。」


 「はい。一旦は受け入れると思います。しかし、ここまで一貫してこの争いに加わらなかったことが幽州の平穏を保っていたと言えますので、家臣や豪族たちからの反発があるものと思います。」


 「なるほど。そうすると、袁煕はどうする?」


 「袁尚を追い出すか、若しくは処断してその首を曹操様に届けて保身を図る、ということもなくはないかと・・・。」


 「ふむ。ここは、なかなか難しい問題になるな。そして、袁尚の前に対応すべき問題があると思うが・・・。」


 「はい。袁譚の処遇だと思います。」


 「その通り。袁譚をどうするか。今、曹操様が一番お考えになっていることであろうな。」


 「ええ。恐らくですが・・・。」


 「恐らく?」


 「袁譚を窮地に追い込み謀反を起こさせ、処断されるのではないでしょうか。」


 「その理由は?」


 「既に袁譚の利用価値はありません。人材としても、曹操様の目には不要な者、としか映らないと思うからです。」


 「なるほど。非常に冷静で無駄のない分析だ。私が口を挟む余地が全くない。もう教えることは、何もなさそうだ。」


 「何をおっしゃいます!私はまだまだ荀彧様より教えを請いたいと思っております。」


 「その様に言ってくれるのは嬉しいことよ。いずれ、朝廷の方の職務にも携わってもらおう。」


 「朝廷・・・。献帝様に関わる職務を私如きが・・・。」


 「まあ、それはもう少し先になるだろうが、そういう心づもりだけはしておいて欲しい。」


 「かしこまりました。」


 こうして、劉曄の評価は曹操陣営で確実に高まってきており、その才能を徐々に開花させていくことになるのである。

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