第22回 劉曄、袁譚の使者来訪に驚く
曹操の軍営に報告が入る。
「袁譚の使者、辛評来訪」というものであった。
曹操はすぐ会うことにした。辛評が拝礼して言う。
「曹操様。私の兄である辛毗がいつもお世話になっておりますこと、まずは御礼をさせて頂きます。」
「辛毗からは弟の辛評は非常に優秀だ、とよく聞いているぞ。どうだ、今から私に仕える気は無いか?」
「ご冗談を・・・。私は今、袁譚の使者として曹操様にお願いの儀があり、参った次第でございます。」
「そうか・・・。私としては、冗談のつもりではないのだが・・・。よし、まずはその願いとやらを聞こうか。」
「率直に申し上げます。我が主である袁譚にご助力を頂き、ともに袁尚を攻め滅ぼして頂きたく思います。」
「・・・。袁譚と同盟せよということか。」
「はい・・・。袁家の正当は長男の袁譚であり、袁尚がその地位に就くことは容認できません。ただ、軍事力で劣ることは認めざるを得ず、恥を忍んでお願いに参りました。」
「私が袁譚に味方して、私は何を得られるのであろうか。はっきり言おう。兄弟喧嘩、大いに結構。二人が争えば争うほど、こちらが有利になるのは自明の理だ。」
「おっしゃる通りです・・・。そこを曲げてお願い致します。何かご要望があるようでしたら、可能な限り、こちらでは受け入れさせて頂く覚悟は出来ています。」
「なるほど・・・。辛評、お前はどれだけの裁量権を与えられ、ここに来ているのだ?」
「大抵の事は、私の判断で決めてよい、と主の袁譚からは言われております。」
「そうか。条件はただ一つ。袁尚を倒した暁には、私に臣従せよ。それ以外は、話にならん。」
「・・・臣従。さすがに私の裁量権を超えております。一度、袁譚の下に戻るお時間を頂けますでしょうか。」
「わかった。しかし、そう長くは待てない。すぐに返答を持ってくる様に。」
辛評はすぐに袁譚の下に戻った。
袁譚が激怒するかと辛評は思っていたが、思いの外、あっさりと受け入れた。まずは、憎き袁尚を倒すことを最優先と考えたのであろう。
そして辛評は、再び曹操に会うために曹操の軍営に向かった。曹操が言う。
「早かったな。して、その答えは?」
「臣従することを誓う、と言うのが我が主袁譚の言葉でございます。」
「そうか、それでは早速連携して、共に冀州の奥深くへと侵攻をしようではないか。袁譚に、すぐに出陣するよう伝える様に。こちらも、軍の編成を急ごう。」
「かしこまりました。それでは。」
こうして、曹操と袁譚が組むという、普通では考えられない同盟が締結された。この情報は、曹操が書面にしたため、荀彧に知らせた。荀彧が言う。
「劉曄殿、こちらの読み通りの流れになってきましたな。」
「はい。まさに、荀彧様のおっしゃる通りとなり、非常に驚いております。」
「さて、この後だが・・・。劉曄殿、どう考える?」
「はい。まずは、袁尚を倒す上で、なるべく前線には袁譚の軍を立たせて使うべきです。我が軍は、情勢が整ってからの参戦でいいのではと思います。」
「なるほど。その後は?」
「その後でございますが、冀州統一がおおよそ決まるくらいまでは袁譚を懐柔した上で利用するべきだと思います。」
「その後は?」
「曹操様の方で、袁譚の利用価値が無くなったと考えれば・・・。」
「考えれば?」
「処断すべきかと・・・。どうしても、袁譚が完全に臣従するとは考えられません。それこそ、袁家の復興を願う者などに担ぎ出される恐れもあり、危ない芽は早めに摘むのが肝要かと。」
「劉曄殿・・・。だいぶ、先を見通す力がついてきたようだ。私も同じ意見だ。今ここで話したに内容は他言無用。書状にて、曹操様にお知らせ致そう。劉曄殿の見立て、と書いて送るがよろしいか?」
「私如きの見立てを曹操様が信じますでしょうか?」
「問題ない。あなたに能力があるからこそ、私の補佐として曹操様はここに残したのだ。この書状を見て、大笑いする曹操様の姿が目に浮かぶわ。」
劉曄は、ようやく荀彧に認められたことに、珍しく気分が高揚した。確実に成長を遂げている劉曄。そして、また次の段階に進んでいくのである。




