第21回 劉曄、袁紹の死を聞く
許都に急報が入る。
「袁紹死す」というものであった。
官渡の敗戦、約二年後の事である。
そして袁紹は遺言を残した。
「後継は、袁尚に託す」というものであった。
この話に怒り心頭なのは、長男の袁譚である。
袁譚は収まりがつかず、冀州への侵攻を開始した。
冀州は内戦状態になったが、袁尚の方がはるかに戦力的には優位で、袁譚は敢え無く敗退した。
この二人がやりあっている間に、曹操は冀州の一部切り取りに成功し、その勢いは増してきた。
この情勢の変化は許都の荀彧にも知らせが入った。
荀彧は劉曄を呼び出し、言った。
「劉曄殿。とうとう袁紹が亡くなり、袁譚と袁尚の戦いが始まった。さて、今後の情勢をどう見る?」
劉曄は少し考えてから言う。
「こちらとしては、袁尚と袁譚の争いが長く続けば続くほど優位になりますので、一番注視すべきは内戦がどれほどの間、行われるかということだと思います。」
「なるほど。しかし、袁尚優位の現状を袁譚が変えられるほどの材料はあるだろうか?」
「そうですね・・・。青州を押さえているとはいえ、冀州を押さえている袁尚に比べれば、兵も物資も少ないと思われますので、そう簡単ではないかと。」
「うむ。劉曄殿、もし、あなたが袁譚の参謀であれば、どういった助言をするかね?」
劉曄は予測をしていない質問で少し戸惑ったが、冷静に考える。そして、答えた。
「私であれば、袁譚にすぐさま内戦を終わらせ、ここは一度袁尚と手を組み、曹操様へ対抗するべき、と提案すると思います。」
「それで、感情的になっている袁譚が動くかな?兄を見下している袁尚が話に乗るかな?」
「・・・。そうですね。あまり、現実的な提案になっていないと思います。」
「私であれば・・・。」
荀彧は少し間をおいた。そして、言う。
「曹操様の力をお借りして、袁尚を討つべし、と言うであろう。」
「曹操様との同盟・・・。」
「ああ。しかし、これはこれでかなり危険な提案だ。仮に、袁尚を倒したとしても、いずれ、曹操様に飲み込まれることが目に見えているからな。しかし、袁尚憎しで収まりのつかない袁譚であれば、自分でそういう考えに行きつくかもしれんな・・・。」
「なるほど・・・。私には全くない視点でありました。」
こうして、劉曄は荀彧の凄さにまたもや驚かされた。
しかし、本当に驚くことになるのは、しばらく後の事になるのである。




