第2回 劉曄、許劭に出会う
汝南に許劭という、人物評価で有名な人物がいた。
戦乱を避けて許劭が揚州にやってきているという話を劉普は聞いた。劉普は、我が子二人の人物評価を頼むために、賓客をもてなす礼に基づいて招待した。
許劭は招きに応じて劉普の邸宅にやって来た。劉普が言う。
「この度は、ご高名な許劭先生が我が邸にお越しくださったこと、非常に名誉に思います。」
「何をおっしゃいます。劉普様はこの一帯で一番の名族。その方よりお招き頂いたことこそ、私の名誉です。」
「その様におっしゃって頂けるとは、実にありがたいことです。早速ですが、私には二人の息子がおります。是非、人物評価をお願いしたいのですが。」
「わかりました。お二人をお連れくださいませ。」
劉普は家人に劉渙と劉曄を呼んでくるように命じた。しばらくすると、二人がやって来た。劉渙は緊張で体が固くなっている。劉曄の方は、高名な許劭に会えるということで、それを楽しんでいるかの様に見えた。
二人は、許劭の前に座った。まずは、劉渙の評価である。
許劭はまじまじと劉渙の顔を覗き込み言った。
「劉渙殿はご長男として、この家を大過なく守り通すことが出来ましょう。劉普殿のお世継ぎとして、しっかりお役目を果たされると思います。偽りの無い、きれいな瞳をしている。」
劉普が言う。
「それは、まことですか。劉渙は些か生真面目すぎるのと、人の上に立つには優しすぎる様にも感じておりました。」
「それがまさに劉渙殿の持つ美徳です。劉渙殿を多くの人が支えてくれるでしょう。」
「そうですか、それはよかった。では、次男の劉曄もお願い致します。」
許劭は劉渙の時の様に、まじまじと顔を覗き込むようなことはしなかった。そればかりか、ほとんど顔も見ずに言う。
「劉曄殿は、この戦乱の世を収める人物の側近になり、活躍をなさるでしょう。」
劉普は驚き、聞き返す。
「劉曄の才はそれほどのものでしょうか。」
「ええ。劉渙殿が家名を守り、劉曄殿は世を匡し、その名を歴史に残すことでしょう。まことにご立派なご子息たちでございますぞ。」
「許劭先生、一つよろしいでしょうか。」
ここで劉曄が言った。許劭は優しく頷いた。劉曄が言う。
「許劭先生の言う通りの、若しくはそれ以上の人物になりたいと考えますが、そのためには何をすればよろしいのでしょうか。」
「さすが、才気煥発、いい質問ですな。しかし、答えは平凡です。自分を信じて己を磨き、己の道を行く。そうすることで、道は啓けていくでしょう。」
「わかりました。劉曄、今のお言葉決して忘れませぬ。」
劉渙と劉曄が許劭から人物評価を受けた話は、たちまちに近隣で話題になった。特に、劉曄が将来有望であるという話は大きく広まったのである。




