第19回 劉曄、曹操の冀州遠征を見送る
曹操は焦らなかった。
官渡の戦いに大勝利した勢いで冀州攻略に乗り出すのではなく、まずは戦力、国内の整備を行い、満を持して翌年に遠征をすることにした。
その最中、情報が入ってくる。
どうやら、袁紹が病を得てその症状はかなり重く、政務に影響が出ている、というものであった。
曹操にとって、まさに好機到来である。
今回も荀彧、その補佐に劉曄を付けて、許都の体制を万全にし、曹操は意気揚々と冀州へと向かった。
荀彧と劉曄は曹操の見送りに出た。その際、曹操が言う。
「荀彧、劉曄。留守は任せた。当たり前だが、何も心配はしていない。もし、何かが起きても荀彧の判断で処理をするように。」
「かしこまりました。ご心配には及びません。こちらでも冀州の情報収集は怠らないつもりでおります。何かありましたら、すぐにお知らせをさせて頂きます。」
「ああ、頼む。袁紹が病床についているとのことだが、万一の場合、後継は長男の袁譚だろうか。」
「どうでしょうか。袁紹は、明確に太子を立てていなかったと思います。その辺り、こちらにとっては、都合がよろしいかと思います。」
「そうだな・・・。あれだけの勢力だ、跡目争いが激化するのが目に浮かびそうだ。」
「はい。そうなれば、こちらが優位になりましょう。いずれにしても、お気をつけて。」
「ああ。では、行って参る。」
荀彧と劉曄は、拝礼をした。
曹操と荀彧の会話に劉曄は割って入らなかった。
二人のやり取りを聞いていて、割って入る必要性が全くないほど、二人の意志の疎通が出来ていたからである。
劉曄は荀彧に聞く。
「荀彧様も曹操様も、お互いの考えていることがおわかりになるのですか?お二人のやり取りは、常に無駄がなく、意思の疎通ができているように感じるのですが。」
「まさか・・・。私如きに曹操様のお考えなどわかるはずもない・・・。ただ、どうすればお役に立てるか、どうすればこの乱世に終止符を打ち、漢の復興を遂げられるか、ということだけは、常に考えるようにしている。」
「今おっしゃられたこと、この劉曄も胸に刻み、日頃から考える様に致します。」
「劉曄殿は今でも十分な能力をお持ちだ。さあ、まずは許都の政に滞りを出さないため、目の前の政務に励みましょうぞ。」
劉曄は頷き、拝礼した。
こうして、劉曄は、再び荀彧を支え、許都に問題を生じさせない様に、日々励むのである。




