第18回 劉曄、曹操と話す機会を得る
官渡の戦いの圧倒的な勝利を得て、曹操は許都に凱旋をした。曹操は荀彧を呼び出し、劉曄も帯同をした。曹操が言う。
「荀彧よ。お前の言う通り、我慢して耐え忍んだ結果、こちらに勝利が転がり込んだ。礼を言うぞ。」
「礼など・・・。私は、ただ、我慢の時、としか言っておりませんので・・・。」
「しかし、あの一言に救われたのは事実だ。あまりの劣勢に、袁紹側に寝返ることを考えた者も少なからずいたくらいだからな。」
「その者たちの処遇はどうされますか?」
「証拠となる様な書状などは、全て燃やした。あの状況では、私でもそういう考えになった可能性があるからな。」
「さすがのご英断です。実は、戦後処理でその点を一番気にしておりましたので。」
「そうか。ところで、こちらでは特に何の問題もなかったか?」
「はい。政務は滞りなく進みました。劉曄殿の協力のおかげとも言えます。」
「そうか。ところで劉曄、荀彧と留守を預かってどうだった?お前は本当のところ、前線に出たかったのではないかと思っていたのだが。」
「正直申し上げれば、おっしゃる通りです。前線で参謀陣の末席にでもという考えはありましたが、留守を任されることの大切さや、後方からでもできることがあるのは荀彧様から学ぶことができ、自分にとっては良い経験になったと思います。」
「そうか。私は、これから新たに軍の編成を行い、なるべく早い時期に冀州に侵攻しようと思っている。その時も、荀彧にお前を付けようと思っているが、どうだ?」
「はい。ご命令に従うのみです。」
「わかった。お前には、大きな才があると考えている。王佐の才の近くで、共に働き学ぶようにせよ。」
「かしこまりました。」
荀彧と劉曄は拝礼して、立ち去った。
荀彧が言う。
「劉曄殿。今度の冀州遠征の帯同を希望できる機会であったと思うが、大丈夫かな?」
「はい。今は、曹操様のおっしゃる通り、荀彧様から学ぶべき、と自分の心を定めました。お邪魔にならないよう、精一杯やらせて頂こうと思っております。」
「それならいいのだが。私も、劉曄殿には、他の参謀陣にはない何かを持っている様な感じを受けているので、いてくれると本当に助かる。これから、長い戦いになるとおもうが、よろしく頼むぞ。」
「はい。長い、とはどれくらいの期間をお考えなのでしょうか?」
「そうだな・・・。腐っても名門袁家。その勢力は前にも言ったが、侮れるものではない。短くて五年、長ければ一〇年くらいかかってもおかしくはない。」
「それほど、袁家は強大であると。」
「ああ。それに耐え忍んで勝たれたのであるから、曹操様は真の英雄というにふさわしいであろう。」
劉曄は深く頷いた。
こうして、荀彧の言葉通り、袁家との本当の戦いが幕を開けることになるのである。




