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ニャン太商会繁盛記!猫耳美少年兄弟、貞操逆転世界で成り上がる  作者: 黒猫丸


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■5 鬱屈した天才にスイッチが入るまで

本日5話目の投稿です。連続投稿疲れてきました・・・。50話までストックがあります。絶賛執筆中です。

篠輪得観子しのわえみこは鬱屈した天才だった。


中学時代から全国模試でトップに近い成績を取り続け、帝州統京都にある超進学校に進学したが「学ぶことがねえっス」と高校1年の夏にあっさりと自主退学。


その後は自宅でIT系の勉強と株式投資をはじめ、16歳になって高校の卒業認定試験に合格すると、今度は帝州にある大和神国一と名高い国立超有名大学の情報工学部にあっさり合格。


しかしそこでも「学ぶことがねえっス」と1年生の前期終了時にあっさり自主退学。


そのころには所持している株式の年間配当が2000万円をこえるようになっていたので、生活に困ることはなかった。


しかしやることがなかった。


暇つぶしにネットの海を徘徊して、株式投資の傍ら調べ始めた企業情報や経営陣の素行などから企業スキャンダルを暴くようになっていく。


得観子のIT系知識は世界でも有数のハッキング技術に昇華されており、得観子が集めて暴露した企業スキャンダルは株式相場を大きく上下させることになる。


その結果、得観子は所持する資産を1年で4倍以上にした。年間の配当は税抜きで1億円に届こうとしていた。


だが得観子は空しさを感じていた。何も楽しくないからだ。


得観子が「自分以上の天才」と認めていた妹は中学2年の夏に自殺した。「この世界は楽しくない」と言い残して。


18歳になってようやく妹の気持ちがわかり始めた得観子は、自分も近々自殺してしまうのではないかと恐れ始めた。


「ま、それならそれで仕方ないっスね」


得観子は諦観の念を抱き、色がどんどん失われていくように感じる日常生活を送っていたが、ネットである画像に出会うことになる。


木ノ下百合が投稿した、リオンから「あ~ん」をしてもらっているツーショット画像だ。


「ありえねえっス」


得観子は一瞥の元に否定した。


実は得観子は以前、国によって手厚く保護されている男性の実態に興味を持ち、大和神国の特別結界区域にある保護施設の監視カメラをハッキングしたことがあった。


そもそも併安時代は1:10程度だった男女比が1:1200にまで急激に悪化したのは、150年前に顕現した呪種特型「名玲十六年」が原因とされている。


「名玲十六年」とは、ある呪種特型が顕現した年号。


特に大きな被害をもたらした特型は暴種・呪種に限らず顕現した年号で呼ばれることが多く、俗に「年号持ち」と呼ばれる。


「名玲十六年」は年号持ちの中でも史上最悪の呪種と言われている。後に判明したその権能は2つ。


男性弱体化の呪いと他の呪種への支配・権能改変力だった。


「名玲十六年」は特型にも拘らず非常に微細な存在として顕現し、当時の陰陽局鬼倒師たちの眼を欺き討伐を免れた。


しかし10年と経たないうちにナノマシンのように大繁殖し、世界中を覆いつくして呪いをばらまいたのだ。


そしていまだその呪いを解呪できないまま150年が経ち、男女比率は1:1200以下まで低下し、人類の存続が危ぶまれている。


よって大和神国をはじめとする先進国では、人類存続省による人工授精技術の開発と貴重な男性を呪種の呪いを低減する特別結界区域(通称・特区)に囲い込むことで、出生率を人口が維持できるとされる1.65以上になんとか保っている。


しかし男性弱体化の呪いは母子感染を引き起こす。


出産前から特区に囲い込まれても産まれてきた男性は「対呪ドーム」と呼ばれる特別な結界により軽減されるものの、多少なりとも「名玲十六年」の呪いの影響を受けることになる。


そして特区に住む男性の人数や様子は国家機密に指定され、外部には一切公開されていない。


得観子は当初、「どうせ男性というだけでチヤホヤされて楽しく生きてやがるんでしょうね」と思い、義憤に駆られて監視カメラをハッキングした。


セキュリティが緩くなった古いWifiルータをまずハッキングし、内部IPを得てからネットワークのトラフィック量から監視カメラのIPアドレスを特定し、うっかり工場出荷のままとなっていたパスワードを突き止めたのだ。


そして得観子はそこで見た映像に衝撃を受けた。


「チヤホヤされて楽しく生きている」と思っていた同年代の男性は、「名玲十六年」の呪いの影響でほぼ寝たきりになっていた。


呪いは男性の精巣に作用するらしく、耐えがたい鈍痛が続くらしい。


国は莫大な予算をかけている対呪ドームの性能を偽っていた。いや、毎年のように強大化する呪いに結界の強化が追い付いていないのだ。


男性は35歳になると精巣切除の道を選べる。


切除すると呪いからは解放されるがそれまでの過酷な苦痛の反動で性格が悪い方に激変する男性も少なくないらしい。


「国は何をやってるんっスか!」


同年代の男性の悲惨な実態に怒りを感じた得観子は、結界技術を調べ始めた。


そして得観子をもってしても、「これはヤバいっス・・」という結論に至った。


結界技術は討伐省陰陽局に所属する鬼倒師が独占している。


いや独占というのは正しくない。霊力を使える鬼倒師だけが結界技術を扱うことが出来る。


正確には通常の人間が持つ魔力である沁統力とはまた異なる、「霊力」を使えるものだけが鬼倒師になれる。


そして結界技術に用いられる「陣」は併安時代に完成しており、進展がなかった。


科学技術の発展でなんとかなるものでもないらしい。


得観子も調べてみたが、霊力を持っていないため一番簡単な「陣」ですら起動できなかった。


「名玲十六年」は討伐どころかどこにいるかも分からず、年々その呪いは強大化している。


「・・・詰んでるっス」


得観子は国が行っている男性保護の調査を中断した。その時に感じた無力感は忘れることが出来ない。


その知識があればこそ。


手元にある、木ノ下百合が投稿した、リオンとのツーショット画像を見て怒りが湧いてきた。


「こんな合成画像を作って広めるなんて、今も苦しんでる男性たちへの冒涜っス」


得観子は早速画像を調べ始めた。


一緒に写っている女の特定はすぐ終わった。


得観子自身が開発したAIスクリーニングクローラーを5分回したところ、木ノ下百合のSNSのアカウントや交友関係のある友人たちのアカウント、所属大学や出身高校に国民IDなどインターネットから得られる情報の約95%が判明した。


「・・・なんの偽装もないっスね。この女はオトリに使われた一般人かも?」


だが一緒に写っている少年?はまったくヒットしない。


閾値を40%に下げてもダメで、25%に下げるとようやく男装女子の画像サムネールが数件ヒットしたが、得観子の目視でも別人と分かる。


「少年っぽいのは成果ゼロ。AI生成のCGっスかね?でもベースモデルの手がかりもなし。うーむ」


AIスクリーニングクローラーを信用するなら、この少年風の画像はこれまでインターネットに出たことがないようだ。


得観子は続けて画像ファイル自体を調べることにした。


「ラブ亀使ってるっスか。IMGタグには男性AI判定のOKもちゃんと出てるっスね。・・・思ったより手が込んでる」


ラブラブ2ショットカメラ。通称「ラブ亀」は男性とのツーショットに特化した人気アプリだ。


大和神国の多くの女性たちが「いつか男性とツーショットを撮る時のために」とラブ亀をダウンロードしているが、おそらくは誰も使ったことがない伝説の不要アプリと言われている。


「透かしも入っている。ラブ亀加工チェックは・・・これもクリア」


ラブ亀はユーザーへの無償サービスとして画像の加工判定を行っている。


得観子は画像ソフトを使って、ツーショット画像に1ピクセルの白い点を書き込むなどして何枚かの「加工済サンプル画像」を作り、再度ラブ亀の加工チェックを通してみた。


「加工チェックはアウト。あたしが改変した画像はハネたから、加工チェックも信頼できそうっスね」


ラブ亀のアプリ仕様を見てみると、暗号化技術はBFT-256bitを使っているとある。


民生用の暗号化技術としてはおそらく最高峰の物だ。


「撮影は昨日。まさかBFT-256bitを破ったハッカーがいる?」


それこそありえない。


もしBFT-256bitが破られたとなると、クレジットカードや電子マネー、暗号化資産に至るまで公開鍵と秘密鍵を使っているシステムが総崩れになるからだ。


得観子は万が一を考えて、自分が保有する株式のうち電子商取引やフィンテックが絡む銘柄をすべて成り行きで売却することにした。


改めて画像を見てみる。


優し気な美少年だ。少々笑顔が固いが、そばに女性がいるので緊張しているのかもしれない。


だがとても健康そうで、「名玲十六年」の呪いの影響など微塵も感じさせない。


どこかに手がかりがあるはずだ、と考えて得観子は巨大モニターに少年の画像を大写しにした。


すでにAIを使って超高精度化してある。


少年の瞳に反射で写っている風景を確認するためだ。


得観子が少年の画像を凝視していると頭の中がドックンドックンとうるさくなってきた。


ふと手首のスマートウオッチを見ると心拍数が200を超えている。発汗もひどい。


なぜか股もヌルヌルして気持ち悪い。


「このあたしが、まさかコーフンしてるっスか?」


少年の画像から目を離したいのに、離せない。


得観子は少年のエプロンに書かれていた店の情報を思い出した。


「ハルカのサンドイッチ屋さん・・・明日も天気が良ければ武蔵国文寺公園に出店予定とあったっスね。とりあえず現地にも足を運びますか」



翌日、朝から武蔵国文寺公園に足を運んだ得観子は驚いた。


すでに50人近い女たちが待っていたからだ。


しかも全員、気合が入ったメイクとファッションをしている。


ファッションやメイクに興味がない得観子は、「もったいないから」といつも家で着ている高校時代の学校指定ジャージで来てしまった。もちろんスッピンだ。


午前10時前になると、予告通り黄色いキッチンカーがやってきた。


そして車から降りてきた美少年を見て、周りの女たちが「「「うっぉぉおおおおおお!」」」と雌叫びをあげる。


リオンは一瞬身体をビクンとさせたが、ちょっと困ったような笑顔を浮かべて女たちに手を振った。


それをみてまた女たちがスマホを握りしめたまま「「「うわぁあああああああ!!」」」と雌叫びをあげる。


スマホで撮影している女が1人もいないのは、スマホのOSに組み込まれたAIが男性の同意がない撮影をブロックするからだ。


得観子も撮影を試みたが、ダメだった。


『AIプロテクトは仕事してるみたいっスね』


得観子には本能で分かっていた。


AIプロテクトで確認するまでもなく、目の前にいるのが正真正銘の男性であると。


『身体が疼くって、こういうことなんスね・・・』


ほとんど性欲がなかった得観子は、いきなり自分自身の身体が「オン」になったことに驚くとともに、周りの女たちが超絶に興奮しているのを見てドン引きした。


10時になると、それまで輪になってキッチンカーを取り囲んでいた女たちが訓練された軍隊のように1列に並んだ。しかも誰に言われたわけでもないのに、キチンと3か所で折り返している。


得観子が呆気にとられていると、腕を掴まれて列の後ろの方に並ばされた。


どうやら周囲の女たちは自分たちが並ぶべき順番が分かっているらしい。


列の先頭から25人は「就職活動腐れゾンビ」チャンネルのメンバーだ。


SNSサービスのマウントで木ノ下百合にリオンとのツーショット画像を送られて血の涙を流した友人たち24人と、木ノ下百合自身も並んでいる。


そしていよいよキッチンカーがオープンした。


得観子は驚いた。


『マジで美少年がサーブしてくれるんっスか!?』


オープニングの添え物として短い時間立っているだけだろう、と思っていた美少年は女たちからのオーダーを受け、出来上がったサンドイッチをキッチンカーから受け取り、客に渡していた。


しかもサンドイッチが出来上がる時間があれば、一言二言客たちと会話している様子も見てとれる。


そして客がチップを出すと、さもそれがサービスの一部かのようにツーショットに応じてくれていた。


『ありえないっス!!!!』


そもそも呪いで苦しんでいるはずの男性が、特区外にいること。


健康そうな様子で、女たちの相手をしてくれていること。


そして男性にとって何の得もない、ツーショットに応じていること。


並んだ客たちは美少年のエプロンのQRコードで支払いをしているらしい。


『いったいいくら支払ってるんっスか!!??』


得観子はスマホで電子マネーの残高を確認した。5万円しかない。とりあえず500万円をチャージした。


ツーショットは次の客が本人のスマホを預かって撮影していた。


女の客は誰もかれも蕩けそうな笑顔を浮かべている。


そしていよいよ得観子の番がやってきた。


「ご注文、何にしますか?」


呆然としている得観子に、美少年がラミネートされたメニューを見せてくれた。


メニューは3つしかない。


生ハムのサンドイッチが500円、濃縮還元のオレンジジュースが200円、サンドイッチとジュースのセットが50円引きで650円だ。


得観子はメニューを隅々まで見たが、チャージ料の記載がない。


『ご、500万円で足りるっスか!?!?!?』


得観子は電子マネーをもっとチャージしておくんだったと後悔した。


美少年との2人っきりのシチュエーション。


華族や大名家ならいざ知れず、何の後ろ盾もない平民の自分が美少年と1対1で話す機会を得た。


そもそも美少年というだけで貴重なのに、その上こちら(女性)に高圧的だったりイヤイヤだったり無言だったりせず、女性同士の様に普通に接してくれる。


おそらく大和神国広しといえど、特区外でこのような奇跡の現場に居合わせることができるのは価値を考えると、「プライスレス」という答えしか浮かばなかったからだ。


「・・・せ、セットでお願いするっス」


得観子は株式投資で成功してから、日常生活での支払いで請求額を確認することを気にしたことはなかった。


だいたいの請求額が予想通りか、特に支払いに苦痛を覚えるような金額ではなかったからである。


しかし今回の支払いではスマホのカメラをかざして、やや震える手で美少年のエプロンに印刷されたセット支払い用のQRコードを読み取った。


『650・・・650万っスか!やはりもっとチャージしておくべきだったっスね・・・』


残高が足りなくて支払えない恥をさらすことになるが、せっかくの男性の機嫌を損ねるよりは・・・と考え、得観子は支払いボタンを一旦押してから不足額をチャージしようとしたのだが。


『あれ?支払いが通ったっスね。ナンデ???』


呆けている得観子を見かねてか、リオンの方から話しかけた。


「ツーショットの写真、撮るですか?」


「と、撮りたいっス。あっ・・・・」


得観子はここで自分のミスに気付いた。


得観子の前に並んでいた女たちは、チップの現金を美少年のエプロンのポケットに入れてツーショットを撮ってもらっていた。


すなわち現金が必要なのだが、引きこもりで電子マネーやクレジットカードのネットショッピングだけで生活を送っていた得観子はミリオネアにもかかわらず現金の持ち合わせがなかった。


みるみる得観子の顔が青くなってゆく。


その反応を見て慌てたのはリオンだ。


他の女性たちが(ツーショットを意識して)とてもきらびやかな格好をしているのに対し、目の前の客の格好はとてもみすぼらしい。


退色して擦り切れた学校ジャージの上下を着ているからだ。


ひょっとすると、この子はあまりお金がないのでは?とリオンは考えた。


元世界の旅路でお金がない苦労はリオンも散々している。


だから助けてあげることにした。


「チップありがとうです。ツーショット撮りましょう」


背後の客からの視線を得観子の背に重ねて見えなくして、リオンはあたかもチップをもらったような振りをして得観子に声をかけた。


「えっ・・・?」


次の客が訓練された兵士の様に呆然としたままの得観子の手からスマホを奪い取り、リオンとのツーショットを1枚だけ撮影する。


そして得観子に画面を見せてクレームがないと確認したところで、スマホを返した。


「えっ・・・?」


ほどなくサンドイッチが出来上がったのか、リオンがトレーを両手に持って得観子の前に差し出した。


「ありがとう、です。よかったら、また来てくださいね」


「えっ・・・?」


片手に生ハムサンド、片手にオレンジジュースの入った紙コップを持った得観子は『邪魔だ、どけ。次はあたしの番だ』と目で語る後ろの客に押しのけられた。


その後、得観子にはどうやって自分の家に帰ってきたか記憶がない。


だが手元のスマホには、呆けた顔をしている自分と美少年のツーショット画像が残っていた。

この世界で男性が少なくなった理由や、現在の男性の境遇について、ハッキングした第3者の目線で説明してみました。


私もですが、説明や設定を長く読まされると白けてしまうことがあります。だからちょっと工夫してみました。


あーでも「目覚めたら病院」「女医さんがセクシーで看護婦さんが可愛い」というテンプレな説明は苦痛なく読めます。


テンプレおそるべし(笑)。


あとここで出ました、強い敵=年号持ち!


強い敵の呼び名をどうするか(どう自分の個性を出せるか)いろいろ考えました。地味な工夫ポイントであります。


励みになりますので、よろしければ作品評価をお願いします!

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