決戦前日
ラルクは櫓から、龍王国に集まった人々を眺めていた。
秋めく風に、髪が揺れる。そう言えば、長らく切っていなかったなと彼は思う。
「ここで全てが決まるのですね」
「……ええ、そうですね」
ラルクは疲れたような顔のまま答えた。
「選別のテーゼンシア。果たして私たちは、勝てるのでしょうか」
「……」
ラルクが無言になる。
彼は全ての試練が終わり、肉体が膨大な力で満たされているのを感じている。
ただそれでも、テーゼンシアさんは俺より強いだろうと彼は思う。
「……二人がかりなら、まあ、分からないといったところですかね」
「二人?私とラルク以外にもたくさんの人が龍王国に」
「俺と天華様を除いて、テーゼンシアさんを前に到底戦力にはなりえません」
「っつ、」
黎音は悔しそうな表情を浮かべる。
ラルクは空を見上げた。
「……ですがヴァスクという男の戦いでは、私も戦力に計上できたでしょう」
「ええ。ですがおそらく彼女は彼の比ではない」
「……ラルク、」
「分かってください。テーゼンシアさんに仲間はいない。ということは、逆説的に彼女は全ての人類を相手にして勝てると思っているのですよ」
そしてそれは、多分事実なんだろうとラルクは思う。
黎音がいたところで彼女相手には戦力にならない。それは100人だろうが1000人だろうが同じことで。
秋の寂しい風に、髪が揺れる。黎音の元から長い髪は、長さをそう変えてはいなかった。
三か月。
黎音がラルクと会ってから三か月で、多くのものがどうしようもなく変わった。
ラルクは聖絶の言う『英雄』となり、竜王は龍神となり、世界は崩壊を間近に控えている。
と、黎音が思い悩んでいると、やあと声が聞えてきた。
「……いったいどこに、って、」
櫓の下に、風見天華が立っている。黎音が彼女を見下して……、ふと天華が、軽やかに跳躍した。
「やあやあ、一体何を話していたんだい?」
紫紺の長い髪、真紅の瞳。漆黒の角と片翼と尻尾。
『龍神』風見天華は地上から45mは離れたこの櫓まで、屈みこむでもなく足首を曲げた反動だけで跳躍していた。
「……いえ、大した話ではありません」
黎音は実力の差が分からないほど未熟ではない。彼女と自分が戦えば、0.1秒で物言わぬ肉塊にされて終わることぐらいは分かっている。
ヴァスクとの戦いだってそうだ。聖絶のヨシュアがいなければ、最初の一振りで全滅していた。
「黎音、君は戦ってくれるな」
そして相変わらず見透かしたような天華に、そう忠告される。
黎音は思わず、拳を握っていた。さりとて反論をすることもできず。
しかしそうしていると、ふと天華が彼女の髪に触れた。彼女は黒の艶髪を手に取って、呟いた。
「……そう、気に病むんじゃない」
「大丈夫、ボクより強い生き物なんてこの世にいやしないんだから」
そうだ、天華はあのグルディオクラッチを一方的に打ち倒した、真の強者なのだ。
黎音は少しだけ、安心することができた。
……天華の笑顔の裏の、翳りに気づくこともなく。
今はヴァスクがテーゼンシアに敗れてから一週間ほど。
テーゼンシアは怪我を癒すと、全世界に宣戦布告をした。個人の、しかも世界の全てを敵に回そうとしている彼女に宣戦布告をする意味はなかったはずだが、騎士としてのプライドだろうか。
……ヴァスクを弑殺した今、そんなプライドなど滑稽なだけだったが。
ともかくも、一人でテーゼンシアに勝つことは難しいと判断したラルクは、龍王国にやってきていた。ラルクの知る限り最も高い実力を持つ、風見天華の力を借りるためである。
そしてラルクが龍王国にやってくることを予想した者も、龍王国にやってきていた。
三人のおもたちが、とてとてとてーとラルクに近寄ってくる。
彼は彼女たちを見下すと、珍しく彼女たちは神妙な態度だった。
おもキングが合わない大きさの王冠をゆっくりと取って、
「ラルク」
「シアを助けて」
彼は目を見開いた。なぜそんなことを言うのかと思って、
「私たちには、シアを許すことはできない」
「関係があったのか?でも、ならなんで、」
「シアは今は悪ものだけど……、昔は大切な、友達だったから」
おもたちの表情に浮かぶのは、懐古の念と悲しみ。ラルクはおももこんな顔をするんだと、そう思った。
「大丈夫さ、おも」
「おもー?」
「せめてテーゼンシアさんくらいは、救ってみせるよ」
おもたちは『せめて』という言葉が気になったが、彼女に殺された者たちはもう救えないから、せめてテーゼンシアくらいは救おうという意味だと解釈した。
おもたちは、不安そうな表情のままほっと一息ついた。
おもたちはテーゼンシアとその息子、ルインと一緒に日向ぼっこをしていた。
のんびり日和。
ぽかぽかの陽気を浴びて、6人は幸せそうに寝っ転がっている。
「おも回転~」
くるくるくると中くらいのおもが転がって、テーゼンシアのお腹の上に乗っかる。彼女は優しく彼女を撫でた。
「あっ、ずるいよおも!僕もお母さんに乗っかるー!」
ぽすっ、ぽすっと、どんどんテーゼンシアの上に小さな生き物たちが乗っていく。
1mほどのおもに乗っかっている小さなおも以外、全員が彼女の上で寝始めた。
「おおおも~、大変そうだねシア~」
「ふふっ、そんなことありませんよ。可愛いものです」
「おおおも~」
大おもキングは鷹揚として、山のようだった(とは言っても精々体長1mほどだが)。
万を超える年を生き、おもたちからの尊敬と信頼を一身に集めるおも史上最大最強の超おも。
彼女は生まれて初めての平和な時代に、のんびりと生きていた。
「でかでかおも~」
大きめのおもが安心したように鳴き声を上げる。
何がさて、希望に満ちていた。……全てが終わる、あの時までは。
「やあやあ、ボクら三人で旅行にでも行かないかい?」
そう言われたのは、次の日の朝のことである。ラルクはきょとんとした表情を浮かべながら、声の主風見天華の方を見ていた。
「旅行って……、」
「なあに、たった半日だけさ。どうせテーゼンシアは、ボクの居る場所に向かってくるだろうから留守の心配もないしね」
既に声を掛けられていたのか、黎音は珍しく濃い緑の、汚れが目立ちにくい着物を着ている。
でも着物なのかとラルクは困惑しながら、天華の方を向いた。
「どこに行くんですか?」
「龍神峡」
知らない地名だった。
ラルクは少し考えた後、まあいいかと付いて行くことにした。
道中。すぐ近くの山に三人はやってきていた。
秋の色めく木々は少し寂しくも美しい。
彼は道端のキノコを拾ってはかじりながら、二人と話していた。
「しっかし不思議ですね、普段は緑の葉っぱが赤や黄色になるだなんて」
「葉ってのは元から、緑のクロロフィル以外にも赤や黄のカロテノイドを含んでいるのさ。ただクロロフィルの影響が強すぎて、赤や黄が感じられないだけで」
「ふむふむ?」
「秋は太陽光が弱まって、光合成がしにくくなるからね。光合成だけでは足りない分のエネルギーを補うためにクロロフィルをエネルギーに分解して、結果赤や黄色が姿を現し始める」
「へえ」
「まあ単純に、木が老化して紅葉する場合もあるんだけどね。……とかく紅葉は、衰微の証というわけだ」
なんだか何かを暗示しているようにも聞こえた。気のせいなのだろうが。
ラルクはひょいっと木の根を躱して、前に進む。
「初めて見るかい?」
「王国でもないわけじゃないけれど、まあ紅葉しない木が殆どでしたからねー」
「そう言えば、数週間前も殆ど緑でしたね」
「黎音、それは季節の問題じゃないか?」
「……確かに」
黎音の黒の髪と、天華の紫紺の髪は秋の山々に映える。
草をかき分けながら、されどラルクの目は上に向かっていた。
「っと、そろそろ下りだ」
「下り?……ああ、峡谷だから」
「そうさ。黎音は来たことがあるだろう?」
「ええ」
そうしてすぐに、開けたところに出た。向こうの斜面を覆う赤黄の木々と、白の鋭い奇岩で形成された谷が目に入る。
谷の底には、大きな川がうねりながら流れていた。それはさながら、龍の蛇行のようで。
「ここが龍神峡ですか?」
「そうさ」
白の岩、珍しいなとラルクは思う。するとそれに気づいた天華は微笑んで、
「想像つくだろうけど、この国は火山活動が活発だからね。火山岩でできてるってわけさ」
「へー、そうなんだ。ってことは、龍神様が作ったとかじゃないんですね」
「ここは、500年以上前から龍神峡という名前だったそうだよ」
「500年も前からなんだ!…………ん?」
そこでラルクが、不思議そうな表情を浮かべた。
「あれっ、龍王国がここに移転したのって200年前のことじゃあ、」
「そう。だからたまたま先住の人間がここにいて、たまたま龍神峡って名付けられてたわけなんだ」
「へえ、凄い偶然もあったもんですね」
「だろう?……ただまあ、多くの竜人にとってここは、龍神ゆかりの聖地となっているわけだけどね。おそらくは君が思っていたように」
そう言って彼女は、断崖絶壁の上の東屋の椅子に腰かけた。
風が通って涼しい。
峡谷の底からは40mほどだろうか。美しくも危険な場所だ。
「とかく誤謬と虚偽の多いこの世界だ。正しいと胸を張って断言できることは皆無と言って差し支えないだろう」
「……」
「かく言うボクも、虚偽と悪辣に満ちている。黎音、人を殺したことはあるかい?」
唐突な話題の転換に、天華の横に座った黎音は驚いたような表情をした。
「い、いえ。殺そうとしたことはありますが」
「そうか、君はいい子だね。ラルクたちを襲った時も、鬱憤や怒りを貯め込み過ぎていたんだろう。自分を傷つけようとする者ぐらいは、殺したほうが良いだろうに」
「……天華様?」
「ボクはこれまでに、ええと、詳細な数は忘れたけれどたぶん四桁人は殺してきた」
黎音もラルクも、その発言には驚かなかった。一国の王なのだから、人を殺さなければならなくもなることも多いだろう。
それにそもそも天華はラルクの基準では下衆だ。彼女は初対面のラルクたちを、癇に障ったからというだけの理由で殺そうとした人間なのだ。驚くことはない。
「……天華様、一体何を仰ろうとしているのですか?」
「……」
天華はこのとき、ひどく曖昧な笑みを浮かべていた。彼女らしくもなく。
そうして、眼下に広がる白の絶景を眺めた後で、呟いた。
「ボクはさ、龍神を名乗ってはいるけれど、その役割は統治者だ」
「……え、ええ?」
「だがこの美しい国に、ボクのような悪徳の王は相応しくない」
「っ、そんなこと、」
「あるさ」
ゾッとするほど美しい真紅の瞳は、黎音に非ず未来を捉まえていた。
「だからボクがテーゼンシアに敗れ死したその時は、黎音、君が王になれ」
「どうかこの清らなる祖国が血や外資に、染め上げられぬよう」
この時ラルクたちは、初めて気づいた。この傲岸不遜の竜人の王は、しかし死を密かに覚悟していたということを。
……。
少しして、天華は一人谷底の方に向かって斜面を降りて行った。紅葉は好きじゃないから、先に行く、だそうだ。
「……勿体ない」
「そういえば天華様は、美的感覚が歪んでいると自分で仰っていましたね」
「へえ、意外」
ラルクが意外だと思ったのは、天華の美的感覚が歪んでいることに対してではない。
彼女が美的感覚に、『歪み』などというものがあると思っている、つまり美的感覚に規範があると思っていることに対してだ。
自由な天華のことだ。美なんて人それぞれだと思っていそうな気がしたが。
それとも意外と、自由人じゃないのかもしれない。
「……まあいいや。本当に、山中まっかっかで綺麗ですね」
「ですね」
だがそんなこと、この荘厳で閉ざされた世界からすればどうでもよかった。
人は美しいモノと共にあることができれば、それだけでいいのだという気すらした。
黎音の黒い瞳に、紅葉が映る。
見ほれているようだった。
「ここが、黎音さんが見せたいと言っていた場所ですか?」
「ええ」
「確かに龍王国は、結構好きだな。俺の故郷と一緒で、時間が停まっているようにのんびりだから」
黎音は微笑んだ。
……だがゆっくりと流れる時間とは反対に、山地だから陽が落ちるのは早い。山間から覗かせる太陽を眺めて、二人は谷底へと降りて行った。
転ばないように気を付けて、ジグザグに、僅かに道に見えなくもない道を進む。
木々に覆われて、東屋から見下ろした谷の白壁は見えない。深山幽谷、というほどではないが、それなりに人里離れた場所に来ている。
「ふぅ」
そうして歩くこと数分、ラルクたちは開けた場所に出ていた。
川は蛇行している。
だから流れの内側、流れの遅いところに小石が堆積されて小島ができ、峡谷の真ん中まで降りられるようになっている。
小石の高台から降りて、川のすぐ手前までやってきたとき……、思わず黎音は、息を呑んでいた。
「すごい……」
峡谷底から遥かに見上げる白岩の絶壁。山々によって秘匿され時の止まった世界。
その雄大な姿には、否応なしに龍神峡は上から眺めるものではないのだと理解させられる。
神秘的……、これは絶景を表すにはあまりに陳腐で中身のない表現だったかもしれないが、下から見上げる、否、内から見渡す龍神峡は本当に神秘的な何かを連想させた。
ここにいるだけで地面と水と木々と世界と調和して、一体になって存在しているような気すらする。万物に淀んだ、しかし美しい気が宿っている。
「龍神峡、か」
ラルクがぼそりと呟く。彼もこの景色に、空気に、もしくは存在そのものに、感動していたようだった。
……そうしてふと黎音とラルクは、小石でできた島の上に腰かけて座る、紫髪の竜人に気が付いた。
女性にしては長身の、美しい見目をした少女。
「先に行ってから、ずっと座ってたんですか?」
「………ん?」
声をかけると、ゆっくりと彼女はラルクたちの方を振り返った。
一切の夾雑物の混じりえぬ純粋な真紅の瞳が彼らを見つめる。
「ああ、そういうことか」
白亜の峡谷で一人佇む紫髪の竜人の姿は、神性な雰囲気を帯びてすらいた。
なるほど龍神峡に、風見天華。美の規範は確かにあるんだなあとラルクは思った。
「しっかし、腰痛くなりません?」
「……大丈夫、ボクは神様だからね。君たちも座るかい?」
「じゃあせっかくなんで」
ひょいっと彼が彼女の横に座ろうとして……、思い直して黎音を挟むように座る。流石に姉妹が隣の方がいいだろうと判断したのだ。
すると彼女は、静かに流れる水面を眺めながら呟いた。
「黎音、君も戦うのかい?」
それは本日二度目の質問だった。
一瞬だけ緊張した空気が流れて、されど彼女は首を振る。
「……いえ、私には私の、役割がありますから」
「そうか。……そうか。それは、よかった」
安堵したように息を吐く。ほぅっと、大地に空気が染み込んでいく。
王がなんだの言っていても、やはり姉として妹を失いたくはなかったんだろうなとラルクは思う。
「シアが明日、龍王国に来るね」
「……明日、ですか」
「でもそれは、大したことではない」
彼らは驚いた。テーゼンシアが来るのが大したことではない?世界が滅ぶかもしれないというのに?
「この世界は、大いなる調和とともにある」
「シアが人間の魂を世界樹に捧げれば、人は永遠に全ての世界からいなくなるのだろう」
「だがそれでも木々は繁茂し動物たちは歌い踊り、いつしか新たな星の支配者が生まれ。……また滅びては生まれ、そうして世界は寿命を迎え消えていく」
「何も変わることはないんだ。この永遠で無窮な世界からすればね」
なるほど、確かに人間など、小さなものかもしれない。いくつも存在する世界の、無数に存在する星の、無数に存在する種の一つに過ぎないのかもしれない。
だがラルクは、納得がいかなかった。
納得がいってはいけないとすら思った。
だから言った。
「でも俺たちは生きていますよ。全身全霊、力の限り」
あるいはそれこそが、ラルクの淵源なのかもしれなかった。
龍神は一瞬だけ目を見開いて……、すぐに微笑んだ。
「そうだね」
「君たちは全力で生きている。だからきっと、尊いのだろう」
その時風が吹いた。胸をすくような涼しい風が、空から吹いて谷底を清らかな気で満たした。
矢庭に彼女は立ち上がると、舞い踊るように背後の巨岩に飛び乗った。
その姿は今までに見た何よりも、流麗で美しく。
「シアは無敵だ。単純な力で言えば、彼女に勝てる人間などいるはずもない」
「だけれど人の歴史は、その始まりから奇跡の連続であった。あるいは幾億幾兆回目かのありふれた奇跡を起こすのは、君たちなのかもしれない」
神聖な気が辺りに遍満する。
「未練がなくなったよ。まあもとより、残滓たるボクに何かができたわけでもないけれどね」
「――じゃあね」
それだけ言うと、音もなく龍神は天に向かって飛翔した。
消えていく。両の黒翼は次第に空の色に溶け込んでいき、輪郭を失っていく。
少しして空にはまだ高い陽と、鷹揚に流れ行く雲のみが残った。
「……綺麗」
呆気に取られたラルクは、少しして気が付いた。先ほどまで天華の座っていたはずの場所の砂利が凹んでいないことに。
思わず首を傾げてしまう。
「……これは、」
「やあやあ、存外早かったね。むささび橋の方には寄らなかったのかい?」
すると後ろから、聞き覚えのある声が聞えてきた。
すぐに二人が振り向くと、そこには先ほどまで話していたはずの風見天華が立っていた。
「えっと、これは、いったい、」
「……天華様、先ほどまで私たちと話していませんでしたか?」
「……?いや、ボクは橋のほうに寄り道していたから、ここにはいなかったけれど……」
ラルクと黎音は顔を見合わせた。嘘を吐いているようには見えない、というか天華は無意味な嘘を吐く人間ではない。
ラルクは首を傾げたあと、しばらくして合点がいったように頷いた。
「確かに偽物の多いこの世界だけれど」
「どうにも、偽物だけというわけでもないらしい」
宴会があった。
これで最後かもしれないからとでも思ったのか、あるいは違う理由でもあったのか、ラルクは彼らしくもなく豪勢に食事をしていた。
どんちゃん騒ぎ。こんな日がいつまでも続いたら、幸せだろうにな。
いいや、違う、続かせるんだ。俺達の力で。
俺達で、テーゼンシアさんに勝つんだ。
アルマはこの場に来ていない。でもそれでいいと思った。
アルマはエリクシルを作り、俺は世界を救う。
アイツだけでも、理想に至れたらな。
強くなって、世界がよく見えるようになった。
世界が良く見えるようになった結果、色々なことがよく分かるようになった。
炎は、静かに。
朝の光が注いだ。
子を殺されて、狂った騎士か。
ボクに君の気持ちは分からない。子を平気で捨てる親すらいるというのに、なぜ子のために夫も友も全てを捨てることができる?
「ああ、でも僥倖と言えば僥倖か」
「理解できないからこそ、ぶちのめすことができるのだからね」
朝、ラルクたちが起きるより先に天華は外に出ていた。
そして眼の前では、金眼の怪物が飄々と世界に君臨していた。




