大門・五田・天宮その2
読んでいただきありがとうございます!
「ふぉふぉ」
天宮の、その老練で、どこか掴み所の無い雰囲気を漂わせる顔を見た瞬間、大門の頭に忌々しい過去の思い出が、乾燥した布に染み込む水の様に、ジュワッと思い出される。
夏の強い日差しに照らされ、熱を帯びた黒い田舎の車道。
そんな風景の中に、血溜まりの中に横たわる、一人の女性の姿があった。
金色の髪の毛が辺りの光を反射して美しく光る。まるで消え行くその魂が、最後に何とか自分の居場所を知らせようと、必死に鳴いているようだった。
「天宮ぁぁ!!」
大門は普段の冷静さを失ったかのように叫び、天宮に突撃する。
会長室内は、あまり広くはない。攻撃を避けようと下がりすぎると、いつの間にか退路が無くなっている……。という事がある。
しかし、それを天宮と五田はキッチリ把握していた。
(まさか会長室で戦闘になるとは思いませんでしたが……。これも側近の務め……)
天宮は大門の攻撃を、体を巧みに使いこなす事で、全てかわしている。
いつでもカウンター出来ると言っているかのような余裕を放ちながら、大門の攻撃をさばいていた。
(しかし……チャンス!)
五田は今、大門が天宮への攻撃に集中し、五田と防御の注意が薄くなっているのを感じとり、床を蹴る。
(死ね!!)
五田の得意技、目にも止まらぬ高速斬撃が、大門を狙う。
「……はっ?」
次の瞬間、五田の視界が赤く染まった。
「ぐおっ!」
そして五田を、鈍く、洗練されていない痛みが襲う。突然の痛みに、五田は攻撃を中止し、状況把握を優先した。
(これは……)
どうやら痛みは顔面に集中しているらしい。ジクジクと熱を帯びた傷口が、五田の集中力を奪う。
(木片か……?だとすればなんの……?)
五田は頬に刺さっていた物体を抜き取り、観察する。
(……っ!これは、俺が大門を奇襲するために切った……、会長室のドアか!)
見れば、会長室の入り口付近に散らばっていた木片の数が少なくなっている。
(木片が急に飛び上がって俺の顔面に刺さった……。とは考えにくい……。となると……)
「大門に何かされたか……」
そう言って五田が大門を見ると、何故か大門は天宮の方を見ながら、悔しそうな顔をしていた。
「ほっほ……。大門くん。君は儂が相手になると、とたんに冷静さを欠いてしまうのがたまに傷じゃのう……」
「く……貴様ぁ……。どこでそれを………」
大門の顔は、今までで見たことの無いほど歪み、焦りの感情が滲み出ていた。
悔しさと後悔が渦巻く目で大門が見ていたのは、天宮の手に握られた1枚の油絵だった。




