スライムその8
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「黒雷・act2」……、黒ちゃんが空から落ちてきた事による衝撃で、辺りには土煙が舞い、床には吹き飛ばされた「破片の怪物」達が転がっていた。
そのおかげで、口田達の目の前にあった肉壁が無くなり、大会議室全体が見渡せるようになった。
(大会議室と言うだけあって……、案外広いんだな……)
軽く大人が百人以上が入れそうなその空間は、物寂しいビルの外観からは想像出来ないものだった。
そして先程まで浜松が立っていた場所に、男が一人立っていた。
男はまるで会社の面接に挑む就活生の様な、使い込まれていない真っ黒なスーツに、黒いネクタイを絞めている。
さらに右手には30センチ程の高価そうな額縁に入った油絵を抱えていた。
こんな殺伐とした空間で、男は一人だけとてつもなく場違いな雰囲気を放っている。そしてそれを本人は全く気にしていないようだった。それが口田にはとても不気味で、異様に思えた。
「誰だ……お前は……」
口田の口から、自然とその言葉が漏れていた。
「ああ、そうですね。名乗るのを忘れていた。私の名前は「大門・千」。ガブのリーダーをさせてもらっている者です」
「なっ!?ガブのリーダー……。お前、それどういう……」
「おっと、すいません。もうそろそろ10秒だ。続きは後で」
「はっ!?何を……」
古田が何かを言おうとした時、
彼らの世界は、一旦終わりを告げた。
浜松の目に映ったのは、天井を突き破り降って来た、小柄な美少女。
普通なら空から女の子が降ってくるなど、何か良い事が始まる予感しかしないのだが、今回ばかりはそうも行かない。
(くそっ……!完全に不意討ち……。左手を固定して動けなくしたのはこの為か……!!)
この攻撃は……、かわせない。浜松がそう悟った、その時。
「浜松君。少し我慢してくれ」
「!?はっ……?」
瞬間、浜松は服の襟を後ろから思い切り引っ張られ、強制的に後ろに移動させられた。
ブチチッ!と言う嫌な音と共に、左手に激痛が走る。
みると、左手が真ん中で裂け、赤黒い肉と細い骨が見え、ドクドクと血が溢れ出していた。
だが、あのままあそこに固定されたままでは確実に死んでいた。それが左手一つで済んだのだ。幸運だったと思うべきだろう。
「悪いな。遅くなった」
「………ああ……、大門さんでしたか。ありがとうございます……」
隣には、自分達のボス、大門が黒いスーツ姿で立っていた。
「それじゃあ……、そこの壁を無くしてもらえますか?このままでも良いんですけど……、出来ればちゃんと姿を見せて挨拶したいいですから。」
「了解しました……」
浜松が右手を上げ、何かを操作するように指を動かすと、大会議室を二つに割っていた肉壁はドロドロに溶け、浜松の体に戻って行った。
肉壁が無くなり、視界が開けた掃除人達が、浜松と大門を見て驚愕の表情を浮かべる。
「誰だ……お前は……」
5人の掃除人の真ん中に立っていた少し小柄な男のその言葉は、大門にとって二度目の言葉だった。
だが大門は、無視するでもおちょくる訳でもなく、同じ様に、丁寧に同じ言葉を繰り返した。
「ああ、そうですね。名乗るのを忘れていた。私の名前は「大門・千」。ガブのリーダーをしている者です」




