アイス・マグマその5
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………今の俺の仲間は、かつての支部長が命を賭けて残してくれた物だと、そう思う。
前の支部長は、ギタイとしては珍しい、かなり年老いた人で、髪の毛はほとんど白く、小さな腰も曲がっていた。
いつもニコニコしており、同じ支部の仲間からはもちろん、近くの支部のギタイにも人気があった。
時に厳しく、普段は優しい。適切なアドバイスを年少者にできる、理想的な支部長だったと思う。
そんな支部長が命を落としたのは、2年前。
突如支部に「掃除人」達がなだれ込んできた。後で聞くと、近くにあったいくつかの支部も同時に襲撃されていたらしい。
俺達の支部にやって来た掃除人達は、40人はいただろう。
俺や他の男衆達は、事前に用意していた緊急の逃走経路を使い、女子供を逃がしていた。
そして、全ての避難が完了し、後は男が逃げるだけとなったとき、掃除人達は、すぐそこまで来ていた。
「ほっ……。多田君……、皆を連れて逃げなさい……」
掃除人達の殺気に当てられ、俺が絶望に支配されていた時、隣からそう、優しい声が聞こえた。
見ると、隣にいた支部長が立ち上がり、真っ直ぐ掃除人達の方を見て、臨戦態勢に入っていた。
「ついでに、次の支部長は君じゃ。………君は、自分より、仲間を優先して行動できる。仲間を守っていく為の素質があるよ」
俺はその言葉を聞いた瞬間、ああ、この人は死ぬ気なのだと、理解してしまった。
俺は絶望に支配されながらも、ここから逃げる事が出来る方法を、1つだけ見つけていた。
誰かが犠牲になって掃除人達を止め、他の仲間が逃げる為の時間を稼ぐ。
わかっていた。わかっていたのに、「俺が時間を稼ぐ」と言えなかった。
「無理ですよ……。支部長……。俺は、そんな……大層な奴じゃない………」
「………、なら、これからなって行くんじゃ。大層な奴にな。支部長になりゃあ、多少は頑張れるじゃろ」
「でも………」
「儂が出来ると言ったのだから出来る!儂の目に、狂いは無いよ」
弱音を吐こうとした俺を遮り、支部長は言った。
「お……おい!多田ぁ!速くしねぇと……!!」
「……だ、そうじゃ。……速くいけぃ!!」
「そんな!!支部長!!支部長も一緒に……!!」
中々動かない俺を後ろにいた仲間が無理矢理引っ張り、支部長の背中が離れて行く。
「………多田君。頑張りなさい。君ならできる」
仲間に引っ張られながら見た支部長の曲がった背中は、とても大きく、もしかしたら全ての掃除人を倒し、追いかけて来てくれるのではないかと思うほどだった。
(………それなのに……、たった2人の掃除人からも仲間を守れないのか!?俺は!!)
支部長が命を賭けて残してくれたものを、簡単に壊させてたまるか。
その一心で多田は、地面を蹴る。
(……俺は何処かで、この戦いを「罪滅ぼし」になると考えていたのかもしれない。あの時、犠牲になれず、支部長を殺してしまった事への。戦う事ができなかった、自分への。)
「うおおおおおっっっ!!!!」
だが今は、その「罪」より、仲間を守ることが最優先だ。
多田の後ろから、巨大な氷の波が頭を上げる。
轟音と共に起き上がった氷は、多田を飲み込み、廊下全体にぶつかりながら、日田と黒瀬に突撃する。
「あらら……、すいません。仲間を狙うふりをすることで隙ができればと考えていたのですが……。」
「おいおいおい!!全然隙出来て無いんだけど!?むしろ力引き出しちゃった感じ何ですけど!?」
「しょうがないですね……。日田くん。溶かしてくださいよ?」
「俺頼みかよ!ちくしょぉぉぉ!!!」
次の瞬間、轟音と共に、日田と黒瀬を巨大な氷の波が飲み込んだ。




