多田と万月
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校舎3階のとある教室。
「や、ヤバいですよ多田さん!「ひょっとこ」さんも「悪魔」さんも倒されちゃいました!」
「分かってるよ!」
屋上への避難を完了し、外を見ていた男のギタイが声を上げる。
(まだ後3人万月様から贈られたお面の皆さんは居るが……。立て続けに戦力を潰されたこちらが圧倒的劣勢……)
先程見た限りでは、校舎の中に入ってきたのは途中空から降りてきた少女も含め4人。
(1人削れたが……それでも……)
新しくやって来た少女もかなりの強さだった。
(もし後3人のお面の皆さんが倒されてしまったら……)
最悪の想像が頭に浮かび、多田の背中から嫌な汗が吹き出す。
「大変だねぇ~。多田くん。」
「!?」
ふぅ、と耳に暖かい吐息が触れた。
驚いて多田が後ろを振り向くと、そこには万月、そしてその隣には、赤いパーカーのフードを目深に被った少年が立っていた。
「万月様……。どうしてここに……」
「うん?いやいや。どうやら僕の部下達が殺られてしまったと言う連絡が万月イヤーに入ったのでね。つい心配で来ちゃった……。という訳さな~」
「……!ならば万月様も戦っていただけると言う事ですか!?」
多田の後ろに立っていた男のギタイが歓喜の声を上げる。
「んん~~。いや、そうじゃあないよ」
「え……?」
そう万月に言われ、喜びをバッサリと切り捨てられた男のギタイは口をぽかんと開け、呆然としている。
「戦うのは僕じゃあない、君だよ~。多田くん」
万月はゆらりと片手を上げ、多田を指差した。
「君はどうやらこの支部の仲間を守りたいと思っている「心」が中々強い~~。もはや家族同然だと思ってるみたいだね~~」
「なっ!」
多田はいきなり万月にそう言われ、恥ずかしさで顔を赤くする。
(いや……まぁ、確かにそう言われちゃそうだけども……。)
「と、言うわけで~~。君にこれをあげよう」
万月はずぃ、と多田に近づき、多田の右手にポン、とひんやりとした固形物を握らせた。
「何ですか……これは?」
多田は万月から渡された物をみる。
卓球で使われるボール……。いわゆるピンポン玉ほどの大きさをした、………おそらく「氷」だ。キレイに加工されており、傷1つない球体になっている。
そして全く溶ける気配は無い。握りしめても体温で一部が水になると言う事が全くない。普通の氷では無いのだろう。
「その氷を飲み込むと、ギタイとしての力……、「ステージ」を強制的に上げることができます~。……いざと言うときにお使い下さい……」
万月は多田の耳元に口を寄せ、多田にしか聞こえない声でそう言った。
「ふふふ………。それでは、僕は「彼」を治療しに連れていかないといけませんので……。健闘をお祈りしますよ~~」
そう言うと、万月は少年と共に部屋から出ていった。
「………万月様……一体何だったんですかね……」
男のギタイの声が後ろから聞こえた。
「あ……ああ……。そうだな……」
手の中にある氷の冷たい温度が、多田の体を動かさなかった。
ピンポン玉程の大きさの物が、ひどく重かった。




