悪魔とマグマ
口田から、「周囲の警戒」を頼まれていた日田は、常にその命を遂行していた。
そんな日田だから気付いたのかも知れない。
日田達がいる校庭の東側にある、体育館。
その蒲鉾のような楕円形の屋根の上に「投げ槍」を構えて立っていた、ギタイの影に。
日田はギタイとしての能力をフルに活用し、ギタイの視線等から狙っている人間を特定する。
口田だ。
気付いた瞬間、日田は叫んだ。
時間が無かったので最低限、最速で。
だが、ギタイから放たれた槍は、ギタイの驚異的な身体能力も相まって、恐ろしい勢いで口田に突撃。その速度は日田の予想を越えた物だった。
「くそっ!!」
口田が交わしきれないと悟った日田は、地面を蹴って走り出した。
レインコートの下の両手にマグマを纏う。
「おらぁっっ!!」
そして右腕を勢いよく横に振り切り、槍を叩き「溶かし」た。
「あ……ありがとうございます……」
一瞬でも「死」と言うものに直面したからであろう。少し放心状態だった口田は何とか日田に礼を言った。
「………おい、隊長、1つ言いか」
「……は、はい!何でしょう!?」
「俺に体育館の屋根の上にいるギタイを叩きに行かせてくれ。あいつの「投げ槍」はかなり危険だ。こちらの射程距離外から必殺の一撃を叩き込まれる!」
日田は早口でそう言った。
「………」
口田は考え込んでしまっているようだ。顔をうつむかせ、眉の間にシワを寄せている。
(確かに……俺が抜ければここが「ひょっとこ」によって崩壊する可能性がある……。どちらがより隊員が安全か……。命に危険が無いか!)
揺れているのだ。口田は。
一歩間違えれば奈落に落ちるような平均台の上で。
(だが……この判断を一瞬で……。時間をかけずに自信を持って決めてほしい……!)
まだ掃除人としての経験も十分ではない口田にこのような選択をさせるのは非常に酷な事なのだろう。
(しかし、おそらく……この任務を考えた奴のねらいの中には……、今この状況の様になることもあるのだろう。)
だが……あまりにハード……。
中々答えを出せない口田に、日田はこう言った。
「悪ぃな口田……。こんなきつい状況にしちまって……。………条件をつける」
「……?条件……?」
「ああ、………俺はあの屋根の上のギタイを……5分以内に倒す!!」
「……!?」
「それだけだ……。5分……!5分で良いから俺にくれ……!」
少し考えていた日田だったが、この言葉で口田の気持ちは固まったらしい。
「なら……お願いします!「5分」!「5分」で倒して来て下さい!僕達はその間に………、「ひょっとこ」を倒します!!」
「………よし!!言ったな!!」
口田の言葉を聞いた日田は、即座に屋根の上のギタイに向かって走り出した。
そして口田もまた……、気持ちを新たにし、「ひょっとこ」に視線を向けた………。
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