巨漢「ひょっとこお面」その3
「ひょっとこ」の巨大な体が一瞬、黒い液状の何かに覆われ、黒い液状の何かは即座に凝固、ボロボロと崩れ去る。
(能力を行使したか………!)
「ひょっとこ」の体を見ると、全身の血管が浮かび上がり、脈打っている。そのせいでか、肌の所々が赤くなっていた。
(たが……この距離……当たる!!確実に!)
口田の目測で「ひょっとこ」と高木の間の距離は15メートル程、散弾銃の弾は、確実に「ひょっとこ」の体を捕らえる。
だが、実際。
散弾銃の弾は、「ひょっとこ」に当たる事はなく、ガガッ!と言う音と共に地面に潜り込んで言った。
つまり、口田達の前から「ひょっとこ」の姿が消えたのだ。
「上です!」
黒瀬の声に反応し、顔をそちらに向けようと首を少し曲げた時。
ゴキッ!と言う鈍い音が耳に入った。
そして完全に顔が黒瀬の方を向く。
見えたのは、恐らく空中に跳び、攻撃を仕掛けて来たのであろう「ひょっとこ」を、右手一本、「黒烏」で受け止める黒瀬。
先程の「ゴキッ!」と言う音は黒瀬の右手が攻撃を受け止めきれず折れた音だろう。
「離れろっ!!」
近くにいた日田が即座にパンチを放ち、「ひょっとこ」を黒瀬から離れさせる。
「大丈夫か!?」
「ま……まぁ……。大丈夫では無いですが……。」
黒瀬はプラン……。と変な方向に曲がり、事切れてしまったかの様に「生気」を感じない右腕を見ながら言う。
「痛みには慣れてますので……。左手に「黒烏」を持ち変えれば、ある程度は戦えます。しかし実力の半分程度しか出せないと思いますので……。すいません」
「い……いえ、無理しないでください」
口田は少し離れた所にいる「ひょっとこ」を警戒しながら、黒瀬にそう言った。
(あの「ひょっとこ」……。確実にこのメンバーの中でも実力者を狙ってきた……?)
口田は、目の前に居るギタイは自分が思っているより相当強いのではないか。と言う嫌な予感が頭をよぎり、何とかそれを振り払おうと思考する。
(「ひょっとこ」がこの隊の中で実力が高い者から狙って行っているとなると………次に狙われるのは……)
そして、口田が声を出そうとした時。
「口田ぁ!!危ねぇ!!」
日田の叫ぶ声が聞こえた。
(え?)
「ひょっとこ」は視界で捉えている。動いてはいない。
何が危ないのかが分からなかった。
口田の脳が日田の言葉の真意を探ろうと思考を始めたとき、
ヒュン!と、何かが風を切る音が聞こえた。
少し甲高い、爽快感のある音。
何の音かを確かめようと、口田は横を向いた。
「あ」
そして口田は日田の言葉の意味が分かった。
口田の目の前にあったのは、「投げ槍」の黒く鈍い光を帯び、鋭利に加工された先端。
古くは「尖頭器」と呼ばれる物だった。
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