月と五人のお面共
「本日、緊急で会合を開いたのは他でもない」
元々職員室として使われていた室内に集められた20人程度のギタイ達の中の1人が口を開いた。
少しくびれたYシャツとジーンズを着た30歳程度の男性。
彼はこの支部の「支部長」、「多田・建」。この支部の中では年長者の部類に入り、少し格闘技が出来ると言うだけでこの地位に祭り上げられてしまった、苦労人である。
「近々、「万月」様がこの支部にやって来られると言う連絡が入ったからだ。」
そう多田が口にした瞬間、室内が一斉にざわめく。
「万月」。
「それに伴って、この支部全体の掃除と、おもてなしするための料理等を相談しようと思ったのだが……」
「ちょっ、ちょっと待ってください!!」
聞いていたギタイの1人が声を上げる。
「そっ……その……「万月」様が来られると言うのは、本当なのですか!?」
どうやら、未だにこの事実が信じられないらしい。
それもそうだ。
「万月」………「万月・光」。
「ガブ」の最古残のメンバーの1人であり、主に、活動のための金銭面、新人勧誘等の業務を担当している「幹部」の1人。
ギタイとしても「ステージ4」の力を持っている、ここにいるギタイとは、別次元にいるような者である。
「本当だ。俺に直接メールが来た。………何で俺のメールアドレスを知っていたのかは謎だかな………」
そう説明してもなお、ざわつきは止まらない。
興奮、疑惑、緊張、困惑、あらゆる感情が飛び交っているのが多田にはわかった。
「ま、もう来てるんだけどねー。」
「「「「!!!!」」」」
全員の視線が、職員室の入り口に向けられた。
そこに立っていたのは、前髪の一部を赤く染めた、長身の整った顔立ちの青年。何故か浴衣を着ている。今が夏だからか。
「まっ………万月様………」
「はいよ〜〜。万月でーす」
一言一言の間にやたらと間の空いた、気が抜けたしゃべり方。
(これが………万月様……)
多田は何故か自分でも驚くほど冷静に、万月を観察していた。
果たして、目の前の男が本当に「万月」様なのか………。
写真で顔は見たことはあるが、そんなものはいくらでも偽装できる。もし彼が変装した「掃除店」の人間だったら………。
(俺にはこの支部の仲間を支部長として守る義務がある……。)
「うぅん……?おじさんは疑ってるみたいだねぇ」
「!!」
気付けば、間近に万月の顔があった。
高い鼻に切れ長の目。やたら整った顔立ちと、何処からか漂う良い香りのせいでか、全く不快感はない。
「だ〜いじょ〜〜ぶ。用を済ませたらすぐ帰るから………。」
そっと、頬を指で撫でられた。まるで恋人にするような、優しい手つきで。
「入っておいで〜。みんなぁ〜〜」
万月が入り口の方を見て言う。
すると、ぞろぞろと、5人のブラスチックのお面を付けた、背格好も何もかもまるで違う男女が入ってきた。
(何でお面を………。しかもかなり安っぽいぞ。縁日とかで100円位で売ってるやつだ)
「彼らは全て「ステージ3」のギタイだよ〜〜。実は彼らをこの「支部」に置いておこうと思うんだよ。」
「………何故……?」
多田は万月に尋ねた。
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