虎と愛と緊急会合
ガタコン。
自動販売機から、ジュースの入ったカンが落ちた音が聞こえた。
東京都のとある路地。「協会」からの帰り道だ。人通りは少なく、大量の建物の屋根から出来た影の下に居ると、たまに吹く風がたまらなく気持ちいい。
「ん………」
「おう、サンキュー」
何も言わずに俺、「岩本・虎」にジュースのカンを渡した女、「高木・愛」は、自分のジュースのカンのプルタブをひねり、早速中に入ったジュースを飲み始めた。
「………ふぅ。……それで、虎は、どう思ってる?」
「あ?何が?」
「……口田さんの事……。隊長として………」
高木のガラス玉の様な、何の曇りもない2つの目が、真っ直ぐに俺を見る。
………俺は昔から、何となくこの目で見つめられると、嘘が言えなくなってしまう。
「いや……まだ、ちょっと頼りないかとは思うぜ?だからこその
今回の任務何だからよ」
「………そう」
「んだよ……。そう言うお前は何か思うところがあんのかよ?」
岩本は逆に高木に聞き返した。
「……私は……はっきり言って……とても口田さんに虎を預ける気にはならない………」
「ん?預けるって何?お前は俺のオカンか!?」
「虎はよく一人で突っ込み過ぎて孤立する………。実際の現場ではそれは命取り………。虎の突っ込みをきっちり止めてくれる様な……。そんなしっかりしてくれる人がよかった……」
どうやら、高木の口田への印象は、少なくとも部下にバシッ!と物を言えるような、気の強そうな人では無いと言うことなのだろう。
「………まぁ、それもこれも今回の任務次第でしょ!案外口田さんもやるのかもしれねぇしよ!」
虎はジュースを一気に飲みきり、勢いよく立ち上がった。
「それに……本当に口田さんが「ダメダメ」なままだったら……、俺達で援護すれば良いだろ!隊長のサポートも、隊員の務め……だっ!」
シュバッ、と飲み干したジュースのカンを、岩本はバスケのフリースローの様な構えから少し離れた位置にあるゴミ箱に向かって投射。カンはカランカラン、という心地よい音を立てて、ゴミ箱の中に吸い込まれて行った。
「………それも、そうか」
高木は小さくそう言うと、ゴミ箱の方を見ずに、無造作に腕を振り、カンを投げた。
投げられたカンはカタン、とゴミ箱の中にあった岩本のジュースのカンにぶつかり、隣合う様にして、ゴミ箱に収まった。
ぐぬぬぬ………。と悔しそうにしている岩本を見て、高木は少し笑った。
東京都のとある住宅街の片隅にある、現在は廃校となってしまった小学校。そこは1ヶ月程前、「ガブ」の手によって買い取られ、今、ガブの「活動支部」となっていた。
ガブの「活動支部」は、志を同じくする構成員達の出会いの場となったり、食料を調達したり、今後の予定を決めたり、情報交換をしたりと………。言わばゲーム等で言う「セーフティスポット(安全地帯)」のような場所だ。
「活動支部」には、それぞれ「支部長」が立てられ、支部長の指揮の下、活動をしていく。
そしてこの、小学校の校舎を買い取って作られた「活動支部」の構成員達は、現在、緊急の会合を開いていた。
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