口見・瞬
口田の前でニカッ!!と快活な笑顔を浮かべた、茶髪で天然パーマの男性、口見はクルッと口田の前で「回れ右」をし、近くの机の上にあったマグカップを手に取る。
恐らく染めたのであろう茶色い髪に、赤い色の眼鏡をかけているため、そこだけ見ると研究者と言うよりはただのチャラ男だが、しかしその服装は、Tシャツの上に白衣を羽織ったもので、顔から下は何処からどう見ても研究者であった。
「ほれ!飲めぃ!!」
「あ……ありがとうございます」
ドラマ等で見る戦国大名の様な力強さで、コーヒーの入ったマグカップをズイ、と口見は口田の前に差し出し、それを口田は怪しい薬が入っているかも知れない茶を渡された弱小大名の様に、恐る恐る受け取った。
ちなみに、コーヒーはまともなものだった。インスタントの物だろう。
「さてと……口田君も昨日今日の激務で疲れているに違いないから、早くすませて帰らせてあげたい……。早速、用件を言って良いかな?」
「はい……。よろしくお願いします……」
口田がそう言うと、口見はドカッ、とキャスター付きの椅子に座り、机の上にある資料に手を伸ばす。
「それじゃあまず………。僕が口田君……、君を呼んだのは他でもない。この「黒雷」を君専用の「掃除道具」にするためだ。」
「………?」
「おや、ポカンとした顔をしているね。……その様子だと月島から何も聞いてなかったようだ」
「………?月島さんから?」
「ああ、まず……そうだな。僕は基本的に、掃除道具は全部オーダーメイドの物しか作らないんだ。依頼人一人一人に、専用のね。」
「ふむ………」
「それで、もちろん月島の「黒雷」も、月島専用の掃除道具として、月島以外の人間にはかなり使いにくい仕様になっていたんだが………」
「……?」
口田はそこで1つの疑問を覚えた。
スカルヘッドとの戦いの時、口田は黒雷を普通に使えた。今思ってみれば、重いだの、反動に手が耐えれないだの、そんな不具合は1つもなかった。
「月島が最近、なぜか黒雷の大幅な改良を申し立てて来たんだ。軽く、多少威力が下がっても良いから反動を小さくしてやってくれってね。………まぁ、急にスカルヘッドの依頼が入ってきたお陰で、8割くらいしか出来て無かったんだけど………」
「!、まさか………」
「ん、気付いたみたいだね。………どうやら月島は、君に「黒雷」を譲ろうとしていたらしい。……君を認めてか、どうかは知らないけどね」
そこまで言うと口見は手に持っていた資料を口田の前に差し出した。
「そして今、……まぁ、こうして無事「黒雷」は帰ってきた訳だけど、月島は帰って来なかったわけだ。………つーわけで、この黒雷の主を2度と死なせないために………、月島と同じ目に会わせないために。俺はこの「黒雷」を完璧に「改造」して、君専用の「最強掃除道具」に生まれ変わらせてみせる!!」
口見は力強く、口田を真っ直ぐ見ながら、そう言った。
「で、そこの紙束はそのための同意書と、改造後の黒雷の説明書みたいなもんだ。取っといてくれ」
「あ……ありがとうございます!」
「おう!完っ璧に仕上げてやるわ!!」
そう言って口見はまた、ニカッ!と笑った。
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