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終章 人類の未来②

 勢いよく発射された小型のミサイルは、あっという間に入口のドアをぶち破り、大音響と共に建物を揺すった。

 続けて、ターニャが二階に向けて引金を引く。

 桜井はやれやれというように首を振りながらも、右手にトンプソンを携えたまま、左手にはちゃっかりと手榴弾を握っていた。

 それを、カレンがぶち開けた入口から放り込んだ。

「さっき、なんて言ってた?」

 カレンが軽い皮肉を込めた目で、桜井を見る。

「あんたの言葉を信じたのさ。それに、ここまできたら一緒だろう。念には念をってね」

 三人ともそれぞれ両手にマシンガンを持ち直し、建物に突入した。

 ヒューストンは両手に拳銃を構えている。

 どうも、マシンガンは性に合わないのだ。

 悟はカレンの後から、拳銃も構えずに付いていった。

 まるで、緊張感というものを漂わせていない。

 建物の中は、右側に階段があり、部屋はひとつきりだった。

 その部屋の扉が、カレンの打ち込んだRPGで破壊されていた。

 部屋の中を見て、桜井が息を呑んだ。

 中には、屈強な男共の無残な屍が七体転がっていた。

 その全員が、黒く焼けただれている。

 桜井が、顔をしかめた。

「フン、やるじゃない」

 黒焦げの死体を見ても、カレンは驚く様子もなく、鼻を鳴らした。

「高圧電流ね」

 ターニャも平然としている。

「えげつな」と言ったものの、悟も目を背けることはしなかった。

「二階へ行きましょ」

 カレンが、四人を促して歩きだす。

 二階も、一階と同じ造りだった。

 廊下には、五人の切断された死体が転がっていた。

 ある者は首と胴が泣き別れ、ある者は胴体の真ん中で切断され、またある者は、見事に縦に切断されていた。

 いずれも、断面から焦げ臭い匂いが漂っている。

「レーザーね」

 死体の切断面を一目見て、カレンが言った。

「どうやら、君らが派手に侵入しれくれたお蔭で、俺たちはこんな目に遭わなくて済んだようだな。しかし、我々より先に赤い金貨が来ていたとは、驚きだな」

「シホが呼び寄せたんでしょ。わたし達と争わせるためにね」

 カレンの推測は当たっていた。

 自分の居場所が探り当てられたとわかった時、劉に、自分の居所を知らせたのだ。

 カレンとターニャに居場所を知られたから、助けてくれと言って。

「何事も、慎重なだけがいいことじゃないって、わかった?」

 桜井に得意げな顔を見せるカレンに、「たまたまやろ」と悟が突っ込みを入れる。

「言ってるでしょ。男は、細かいことを気にしないって」

「痴話喧嘩している場合じゃないわよ」

 ターニャが、慎重に開けたドアから中を覗いて言った。

ここも一階と同じように、高圧電流で黒焦げになった三人の男が、まだ燻る煙をあげて倒れていた。

「この状態だと、やられてから、そんなに時間は経っていないようだな」

「そうね。さっさと三階へ行きましょ」

 カレンが促すと、四人は三階へと続く階段に足をかけた。

「手強いわね」

 モニターを見ながら、志保は唇を噛んでいた。

 劉たちとは違い、あんな方法で侵入してくるとは思わなかった。

 お蔭で、志保の仕掛けたトラップは、すべて壊されてしまった。

 体温感知センサーによるレーザー照射と、体重感知による高圧電流。

 その悉くが、外から撃ち込まれたRPG7により破壊されてしまった。

 だが、志保にはまだ奥の手があった。

 劉は、先頭に立たせた手下を犠牲にした後、残った手下共を連れて、建物から出ていってしまった。

 多分、建物の周りに散開して様子を見ているのだろう。

 カレン達を襲わなかったのは、志保の仕掛けたトラップに引っ掛かるかもしれないと思ってのことだろうと、志保は推測していた。

 世界の三凶と呼ばれてはいるが、志保が調べた限りでは、カレンとターニャ、それに劉とでは、随分開きがあるように思われた。

 モニターを通じてわかったことだが、劉は勝つためには手段を選ばない。

 自分の部下でも平気で犠牲にし、見殺しにする。

 多分、劉の辞書には、卑怯という言葉はないのだろう。

 勝つためには、手段は選ばない。

 命はひとつきりで、恰好をつけても、死んでしまっては元も子もない。

 ある意味、プロだといえる。

 カレンとターニャは、その対極にいるようだ。

 彼女らは、死ぬことを恐れてはいない。

 どちかといえば、プライドを捨ててまで生きようとは思っていないように見受けられる。

 志保が推測するに、劉は人を殺すのが趣味で、カレンとターニャは闘うのが好きなのだろうと思った。

 五人が三階に着いたとき、志保は素早くキーボードを叩いた。

 パソコンのモニター一杯に、大きなドクロマークと、黄色で『DANGER』という文字が映し出される。

 志保は、大きなドクロをクリックした。

 一瞬、ドクロが笑う。

 笑いを収めると、ズンという鈍い音がして、建物が縦に揺れた。


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