終章 人類の未来①
「ついに、見つけられたか」
自分の居場所を突き止められた警告音に、志保が唇を歪めた。
志保の指が、踊るようにキーボードの上を滑っていく。
逆探知を行うと、この場所を特定したコンピューターは渋谷にあった。
残り時間は90分。
十分間に合う。
志保の居る建物は、古びた三階建てのビルだ。
その地下室に志保は陣取り、一階から三階までは無人である。
そのいたるところに、トラップを仕掛けていた。
建物内部はもちろん、建物の外の広範囲まで、志保は監視カメラを設置している。
地下室の壁面に、それらを映し出すモニターがびっしりと埋め込まれていた。
志保が微笑みを浮かべながら、スマホを取り出した。
コンピューターに接続し、あるボタンをクリックする。
「さあ、どうなるかしら」
うきうきとしながら、志保は沢山のモニターを眺めた。
「あのビルね」
カレンが見据える先には、古びた三階建てのビルがあった。
周りの建物は、爆弾騒ぎのお蔭で、ほとんどが破壊されている。
瓦礫にまみれた土地で、ただひとつぽつねんと佇むその姿は、奇跡でも起こったように見えるが、そうでないことは、その場にいた誰もが知っていた。
志保が、この建物だけは破壊されないように、人々をコントロールしていたことを。
「待てよ」
建物に向かって無造作に踏み出そうとするカレンを、桜井が止めた。
「どんな罠が待ち受けているかもわからんのに、あまりにも無鉄砲過ぎるだろ」
「そんなこといってる場合じゃないでしょ。わたし達に残された時間は、あとわずかかもしれないのよ」
驚異的なカレンの勘だ。
瓦礫や放置された車に埋まった道を走ってきたため、ここまで来るのに結構時間を費やしており、タイムリミットまで、あと20分しかなかった。
「待ち構えてるんだったら、慎重にいっても同じでしょ」
まだ何か反論しようとする桜井の肩に、ターニャが手を置いた。
前述したように、この辺りは瓦礫の山に埋もれ、まともな建物は皆無といってよいくらい無い。
これも、志保の策略だった。
お蔭で、武装した四人が、人目に立つことはなかった。
ヒューストンも、現役の頃は武闘派で鳴らしたエージェントだ。
当然のごとく参加している。
悟は、今回も護身用の拳銃一丁だけだ。
「わたしの後をついてきて」
悟にそう言って、カレンが歩き出した。
建物の数メートル手前まで来たとき、カレンが手を挙げて、皆を止めた。
手にしていたM16を右肩に掛け、代わりに、左肩に掛けていたRPG7を手に持つ。
ターニャも、AK47からRPG7に持ち替える。
「そんなもんぶち込んだら、結城を吹っ飛ばさないか」
「大丈夫よ」
カレンが、桜井の心配を一笑に付した。
「彼女は、そんな間抜けじゃない。これくらいのことは想定してるでしょ」
そう言って、建物に向かいPRG7を構える。
「さあ、カーニバルの幕開けよ」
陽気に言うと、RPG7をぶっ放した。




