↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
94/108

第15章 天使と悪魔④

 カレンが、悟の言葉に肩を竦めた頃、志保が最後のキーを押した。

 深々と椅子に背をもたせ掛け、瞑目する。

 人類が終焉を迎えるまで、あと48時間。

 もう、後戻りはできない。

 志保は、このウィルスに対するワクチンなど作っていない。

 赤い金貨と違い、お金を儲けることなんて考えていないからだ。

 これを止めるとするなら、志保の目の前にあるコンピューターを破壊するしかない。

 電源を抜いても、内臓している特殊なバッテリーで、48時間後には自動的に再起動し、10分は稼働する。

 それだけあれば、全世界にウィルスをばら撒くには十分だ。

 トロイの木馬型といわれる、ある時期が来れば作動するウィルスを仕掛けることもできた。

 そうすれば、今、ここにあるコンピューターを壊されても、防ぎようがない。

 それをしなかったのは、天国に行ったであろう瑞穂が、志保の肩に手を置いていたからだ。

 悪魔に変貌した志保の中に、瑞穂という天使が宿っていた。

 志保は、自分はミュータントではないかと思っている。

 人類を滅ぼすために、自然が、地球が生み出したミュータント。

 どんな高度な知識を有しているハッカーでさえ、志保のコンピューターの技能の前では、子供同然だ。

 ただ、そんな地球も、志保に一片の良心を与えていた。

 それが、瑞穂だ。

 瑞穂が生きている限り、志保の悪魔が目覚めることはなかった。

 瑞穂が死んで、一時は良心を失い、悪魔に身をやつしたものの、今また瑞穂という良心が、志保の行く手を遮っている。

 もう一人、自分の邪魔をするかもしれない人物がいた。

 志保は、自分の邪魔をするであろう世界の三凶について、徹底的に調べていた。

 劉については、記録は抹消されていたものの、掘り尽くせば出てきた。

 劉は志保の護衛役だったが、瑞穂の復讐を誓う志保にとっては、最初から邪魔者だった。

 ターニャも、過去の経歴を巧妙に組織が隠ぺいしてはいたが、志保の手に掛かっては、なんなく過去を知ることができた。

 ただ一人、カレンだけがわからない。

 徹底的に調べても、ごくありふれた経歴しか出てこなかった。

 その経歴によれば、ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の学生生活を送っている。

 それを信じるならば、CIAに入った途端、変貌したということになる。

 志保には、そんなことは、とても信じられなかった。

 これまで普通の生活をしていた者が、突然、優秀な暗殺者になりうるはずがない。

 組織が改竄していたのなら、劉やターニャと同様、志保は掘り当てていただろう。

 それが、どんなに手を尽くしても掘り当てられないということは、カレンも志保と同等の技術を持っているということになる。

 もし、カレンが、自分同様ミュータントだとすれば、これは手強い。

 カレンは、殺しのテクニックにも秀でているのだ。

 そういった意味では、カレンは自分以上だということになる。

 もう一人、志保が気になる人物がいた。

 それは、悟だ。

 カレンが結婚した人間として、一応調べてみた。

 二流の大学を卒業して、三流の商社に入社した。

 志保が気になったのは、悟の記録に空白の期間があったからだ。

 悟の父親も商社マンだった。

 悟が中学一年の時、アメリカに転勤になり、家族共々移住している。

 そこから、悟が帰国する高校三年までの記録が、どこを探してもみつからなかった。

 悟には、二つ年下の妹がいた。

 両親と、その妹の記録が、渡米後ふっつりと消えていた。

 日本でもアメリカでも死亡届けは出ていないので、記録上は健在といえるが、渡米後間もなくから、医療記録も出入国記録もない。

 なのに、現在は日本で働いていることになっている。

 もし、志保を止める人間がいるとすれば、この二人だろう。

 志保は、瑞穂の良心と、二人に対する好奇心から、自分の居場所を特定できる微かな穴を開けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。