↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/108

第14章 騙し合い①

「これから、どうするんだ?」

 桜井が、カレンに尋ねる。

 三人は、公安のビルから、かなり離れた場所まで来ていた。

 見渡す限り、爆破の煙がたなびいている。

 一斉の爆破騒ぎは収まっていたものの、単発的にあちこちで、手製の爆弾が破裂している。

「あのソフトには、まだまだ欠陥がありそうね」

 カレンが微笑を浮かべたまま桜井の問いに答えずにいると、ターニャがたなびく煙を見ながら、誰にともなく呟いた。

「わざととも思えるけど、多分、そうね」

 カレンが頷く。

「どういうことだ」

「脳に与える影響が、人によって時間差があるということよ。それに、影響を受けない人もいる」

 今度は、カレンが即座に答えた。

「そういうこと。今でも十分恐怖に落し入れているけど、シホはが狙っていたのは、こんなものじゃなかったはずよ」

「そうね。もっと大勢を動かすつもりだったんでしょうね」

 二人の見解を聞いて、桜井はただ唸るのみだった。

 ここまで悲劇的なことが起こっているというのに、二人とも冷静に状況を分析している。

 幾多の修羅場を潜ってきたからなのか、人の死に心を動かされないのかはわからないが、自分とはまったく次元の違う人間だということだけは、桜井には認識できた。

「それも、直ぐに修正してくるでしょうね。明日になれば、もっと死者が出る」

 ターニャは、恐ろしいことをさらりと言う。

「このままだと、後二三日もすれば、魔女狩りが始まるでしょうね」

 カレンの言うことは、桜井にも理解できた。

 恐怖を通り越した人の取る対応は、大きく分けて二種類ある。

 ひとつは、将来を絶望して無気力になり、なにもしないで、ただ死ぬのを待つ。

 もうひとつは、自己防衛本能が活発に発動し、自分を守るために、周りの疑わしい人々を血祭りにあげてゆく。

 そんな人間が大勢出てくると、無気力になっていた人間までもが、リンチに加わってくる。

 まさに、中世の魔女狩りがそうであった。

 そこに、理性は働かない。

 無意味に、罪のない人々が殺されてゆくのみである。

 げに、群衆心理というものは恐ろしいものだ。

 いつ、どこで、爆弾の巻き添えになるかもしれないという恐怖は、人々をそこまで狂わせるに、十分過ぎる。

「で、これから、どうするんだ?」

 再びの問いに、今度はカレンが答えた。

「決まってるわ。シホと決着をつけるのよ」

「居場所はわかっているのか」

「任せといて」

 カレンが快活に頷いてから、「でも、その前に片付けなくちゃいけないことがあるわ」と付け足す。

「片付けること?」

 言ってから、桜井は先ほどから感じていた違和感がなんなのかわかった。

「そういえば、杉村がいないな」

「そうね、いつも一緒のあなた達が、珍しいと思っていたのよ」

 ターニャも、なにかを感じていたようだ。

「それは、これからわかるわ。ミスター・サクライ、あなたにも関係のあることだから、よかったら、一緒に来る?」

 言われて、桜井はピンときた。

「緒方か」

 緒方には、最初から引っかかるものがあった。

 自分を失脚させるために、高柳が付けたと思っていたのだが、高柳が赤い金貨のメンバーであった以上、彼が引っ張ってきた緒方もそうだと言わざるを得ない。

「んふ」

 それが答えだとでもいうように、カレンが短く笑うと、スマホを取り出した。

「ハイ」

 電話に出た相手に、陽気に挨拶する。

「こっちは、片付いたわ。サトルは元気?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。