第13章 裏切りの報酬②
「お、おまえは……」
高柳が驚きのあまり、顔を引き攣らせている。
「どうして、ここまで?」
「入ってこれたかって?」
桜井の後を引き取りながら、カレンが二人に歩み寄っていった。
「言ったでしょ。わたし達は、どこへでも入れるって」
カレンの言葉に引っ掛かりを覚えた桜井が口を開きかけたとき、
「なにを、偉そうに言っている。ここの警備は、万全のはずだ」
驚きから立ち直った高柳がそう言うと、おまえが引き入れたんだろうと言わんばかりに、桜井を疑いの目付きで見た。
「この程度で万全と言ってるようじゃ、ここの情報はだだ漏れね」
ターニャが、ドアを閉めて近づいてきた。
「驚いたな。一体、どうなってるんだ」
言葉とは違い、桜井には、大して驚いた様子も見えない。
さきほどのカレンの言葉が、納得できただけである。
「ちょっと、確かめたいことがあって」
ターニャが、つかつかと高柳の許に歩み寄って、左手の薬指に嵌めている指輪を、半ば強引に外した。
「なにをする」
顔を赤らめて、拳を振り上げた高柳に、鋭い声が飛んだ。
「大人しくしてなさい」
いつの間にか、銃を抜いていたカレンが、高柳のこめかみに銃口を押し当てた。
「こんなことをして、ただで済むと思う……」
精一杯虚勢を張った高柳だったが、無言のカレンに、こめかみに当てられた銃口に力を加えられて、黙り込んでしまった。
「フン、やっぱりね」
指輪を調べていたターニャが、冷笑を浮かべる。
「なにが、やっぱりなんだ?」
「内側を見て」
ターニャが、桜井に指輪を渡した。
「内側?」
桜井が指輪を受け取って、言われた通り、指輪の内側を見た。
「これは?」
「赤い丸の刻印があるでしょ」
桜井が頷く。
確かに、高柳の嵌めていた指輪の内側には、綺麗な赤い丸があった。
「赤い金貨の連中はね、組織に忠誠を誓った証として、どこかに赤い丸を持ってるの。指輪であったり、ネックレスであったり、服であったり、刺青であったりね」
カレンが説明する。
「それは、知らなかったな」
桜井が知らなかったのも、無理はない。
このことは、組織の者以外には、あまり知られていないことなのだ。
カレンやターニャは、幾度となく赤い金貨の連中と戦ってきている。
二人とも、戦闘を通じて、このことを知った。
「あなたも、彼のことを疑っていたようね」
さして驚きもしない桜井を見て、ターニャが言った。
「まあね」
素直に、桜井が答える。
「きさま、なにを言ってるんだ」
高柳が、凄まじい目で桜井を睨みつけたが、当の本人は涼しい顔で受け流した。
「君たちは、なんでわかった?」
「あなたと一緒よ」
カレンの答えに、桜井が頷く。
「緒方か」
桜井は平静を装って返しはしたが、内心では、自分が高柳を疑っていることを見抜かれていたことに舌を巻いていた。
世界の三凶と謳われているが、この二人は戦闘力だけではない。
洞察力、観察力、勘。
すべてにおいて、秀でている。
だから、幾多の修羅場を生き抜いて、世界の三凶と謳われるまでになったのだろう。
今更ながら、凄い連中を相手にしているのだと、桜井は思い知らされた。




