第13章 裏切りの報酬①
「とんでもないことになったもんだ」
桜井は、高柳と向き合っていた。
全国の爆弾騒ぎのために、緊急に呼び出されたのだ。
桜井の顔を見るなり、高柳は仏頂面をしながら、わざとらしくため息をついてみせた。
恨みがましい眼差しは、おまえが早く解決しないからこうなったんだとでも言いたげだ。
この場に、緒方はいない。
高柳から一人で来いと命令を受けたので、言われた通り、緒方は置いてきた。
「で、どこまで掴めたんだ」
恨みがましい眼差しを崩さず、横柄な口調で、高柳が訪ねる。
「まだ、なにも」
桜井が平然と答える。
「なにもだって? 調査に入ってから、何日が経つ? いったい、今まで何をしていたんだ?」
高柳が、机を叩いて怒鳴った。
「緒方は、どういった経緯で発掘したんです?」
高柳の怒りを受け流して、逆に桜井が問い質した。
「なんだって?」
予期せぬ桜井の態度に、高柳の怒りは急速に萎み、怪訝な顔になる。
「だから、緒方がここへ来た経緯ですよ」
「それと今回の件と、どういった関係がある?」
高柳は、怪訝とうより、警戒するような目を、桜井に向けた。
世界の三凶が集結している理由は、調べるまでもなく明白だ。
だが、この騒ぎを起こしているのが何者か? その理由は? スマホを操っているとは思われるが、どうやって?
それがわからない。
桜井はカレンとターニャと接してから、この二人から、その情報を得るのは不可能だと悟った。
そこで目を付けたのが、緒方だ。
緒方は、桜井の勘に、びんびん響いてくるものがあった。
桜井は、独自に緒方のことを調べた。
高柳の言ったように、確かに、緒方建夫という男は、レンジャーにいた。
しかし、その男は、もう死んでいる。
PKOで派遣された先のアフガンで、流れ弾に当たったのだ。
レンジャーに、同姓同名の者は除隊した者を含め存在しないし、自衛隊入隊時の写真も、今の緒方とはまるで別人だった。
公安の審査は厳しい。
たとえ、警察や自衛隊からの派遣であっても、職務の特殊性から、身元がはっきりしていても、不適切な人物は受け入れない。
ましてや、桜井が調べてもわかるような、別の人物を語るような人間を使うはずがない。
なのに、高柳は、桜井と組ませた。
これがなにを意味するかは、素人でもわかることだ。
「あるから、聞いているんです」
「おまえが、知る必要のないことだ」
「人に押し付けておいて、それはないでしょう」
「きさま、わたしを疑っているのか」
「疑うもなにも、あんたは黒よ」
桜井が口を開くより早く、女の声がした。
桜井が振り向くと、開いた入り口のドアに、カレンが腕を組んで寄りかかっていた。




