↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/108

第12章 滅亡へのカウントダウン④

 二人は、都内の、とある公園へと向かっていた。

 どこを走っていても、車窓からは、ところどころに立ち上る黒煙が見える。

 人々はパニックに陥って、道路は大渋滞していると思われたが、いつもより車が少ない。

 爆弾騒ぎは全国各地で起こっているので、みんな鳴りを潜めているものと思われる。

 広い公園を歩いてゆくと、目立たない一角にあるベンチに座り、遠い目をして空を見上げているスコットの姿があった。

 彼が見つめる先には、とても世の中が騒然としているとは思われないほど、抜けるような青空が広がっている。

 ただ、ところどころに見える黒煙と、普段はお年寄りや赤ちゃんを連れたママの散歩が多いこの公園に、まったく人影がないのが、現状を物語っていた。

 二人が何気ない仕草で、スコットの隣に腰を下ろした。

「すまない。まさか、あんなことになるなんて」

 空を見上げたまま、スコットが謝りの言葉を述べた。

「リュウのこと? それとも、隠れ家のこと?」

 スコットを見ることもなく、カレンも空を見上げる。

「隠れ家? 何のことだ」

 スコットが怪訝な顔をして、空からカレンに眼を移した。

「ゆうべ、私の隠れ家が襲われたの。武装した集団にね」

「なんだって」

 スコットが驚いた顔をする。

「大丈夫だったか?」

「だから、ここに来てるんでしょ」

 カレンが、青空を見つめたまま答える。

「そうだな。で、襲ったのは?」

「暗くて、よくわからなかった」

「そうか」

 スコットが俯いて、暫く何かを考えるように沈黙した。

 そんなスコットの態度を気にも留めずに、カレンは相変わらず空を見上げたままだ。

 悟は、何やら思い耽った様子で、前方の木々を眺めていた。

「やはり、ヒューストンだな」

 唐突に、スコットが言った。

「多分ね」

 カレンが空を見つめるのをやめ、スコットに目を移す。

「二人共、何の話をしてるんや」

 初めて、悟が口を開いた。

「裏切り者の話よ」

 カレンの後を、スコットが引き取る。

「カレンの行動を知っているのは、私とヒューストンだけだ。だったら,ヒューストン以外にはいないだろう」

「ちょっと待てや、裏切り者はあんたかもしれんやんか。あんたが裏切ってないという保証もないねんで」

「それはないわ」

 即座に、カレンが否定する。

「なんでや?」

「私が、カレンの兄だからだ」

 穏やかな口調で、スコットが告げた。

「な~んや、そうか。それやったらないわな、って、今、なんて言った? あんたが、カレンのお兄ちゃんやって?」

 驚きのあまり、悟の目が大きく見開かれた。

「そうだ。私とカレンは兄妹だ。このことは、誰にも知られていない。もちろん、ヒューストンにもな」

 重々しく頷くスコットを、悟が呆然とした顔で見つめる。

「黙っていてごめんね。別に、隠していたわけじゃないのよ」

「いや…… 別に、怒ってへんけど。そやけど、びっくりしたで。ほんま、心臓が止まるかと思ったわ。でも、二人とも似てへんな。名前も違うし。あんた、確か、スコット・グレイっていう名前やったよな」

「それは、私たちが腹違いの兄妹だからだ」

「それとね、今の名前は二人共本名じゃないのよ。私たちは、この世界に入るときに過去を捨てたの」

 スコットの言葉に、カレンが付け足す。

「そうか、色々あったんやな」

 二人の言葉に頷いた悟は、それ以上追及しようとはしなかった。

「本当にカレンは、サトルのことが好きなんだな」 

 悟が怒っていないとわかり安堵した表情になったカレンを見て、スコットが悟に右手を差し出した。

「サトル、こんな妹だが、これからもよろしく頼むよ」

「あ、ああ、まかしとき」

 悟が、差し出された手を弱々しく握った。

 一瞬ながら、悟の顔に躊躇いと困惑の表情が浮かんだのを、スコットは見逃さなかった。

 スコットの眼が、怪しく輝く。 

 再び、空に目を向けているカレンは、二人の微妙な表情に気付いていないようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。