第12章 滅亡へのカウントダウン➄
「これから、どうする?」
「決まってるわ。ヒューストンをとっちめるのよ」
「そう言うと思ったよ」
スコットが微笑を浮かべる。
「だがな、カレン。ヒューストンをとっちめるのいいが、そんな悠長なことをしている場合ではないぞ」
微笑から険しい目へ、それから苦悩の表情と、スコットの面相はめまぐるしく変化した。
「まだ、日本のマスコミには知られてはいないが、この爆弾騒ぎは、世界の主要都市でも起こっている」
それを聞いても、カレンは驚きもしないで、「そうでしょうね」と返しただけだ。
「知っていたのか?」
「知らないわよ。だけど、飛び込みも世界中で起こっていたわけだし、これも日本だけではないと思ってたわ」
「さすが、鋭いな」
悟は微妙な顔をして、二人の会話を黙って聞いている。
「このままいくと、各国が疑心暗鬼に陥り、戦争に発展しかねない」
「それはないわ」
即座に、カレンがスコットの疑念を否定する。
「世界の主要都市で起こっているわけでしょ。なら、敵対国がテロを仕掛けてるなんて馬鹿げた妄想は抱かないはずよ。それに、ロシアがこの件を掴んでいるくらいだから、よその国も、あなた達が開発していたものくらい掴んでいるはず」
「手厳しいな」
苦笑を浮かべたスコットだったが、カレンの言うことは否定しなかった。
事実、最初の爆弾が破裂した時、アメリカは中国やロシアや北朝鮮やISの仕業と思い、中国はアメリカ、ロシアもアメリカの仕業と思って、三国間に緊張が走った。
しかし、その三国に限らず、イギリスやフランスやドイツ、イタリアなど、世界の数十ヶ国で同時多発的に起こっているのを知ると、その疑念は消えた。
また、世界に名を届かせているどんなテロ組織も、そこまで同時多発的にテロを起こせるだけの力はない。
そういった訳で、優れた諜報機関を有している国なら、この原因が何に起因しているかは、おおよその察しがついていた。
そうでない国は、一体、何が起こっているのかわからず、ただ戸惑っているだけだ。
「戦争は起きないでしょうけど、そうね、このままだと、一週間もしないうちに、人口は半分くらいに減っちゃうかもね」
冗談めかしく言ったが、カレンもスコットも、それが冗談で済まないことはわかっている。
諜報機関に身を置いている者は、人間という生き物の弱さをよくわかっている。
そこを突く職業だからだ。
大抵の人間が、追い込まれればどうなるかということも見通せる。
戦争は相手あってのことだが、今の状況は相手が見えない。
目に見えないものを、人は恐れる。
この状態が三日も続けば、世界のいたるところで暴動が起きるだろう。
さらに極限状態を通り越すと、人々は疑心暗鬼に陥り、魔女狩りまで起こりかねない。
このまま、断続的に爆弾騒ぎが一週間続くだけで、人類は勝手に滅亡の道を歩んでゆくに違いない。
二人には、それがよく見えていた。
「なんとか、シホを見つけられるといいんだが」
「大丈夫よ。見つける手段はあるから」
スコットが目を瞠る。
「我々が手を尽くしても、見つけられないんだぞ。それを、どうやって?」
「それは、どうだっていいわ。それより、今は邪魔者を排除するのが先よ。でないと、先に進めない」
「そうだな」
スコットが納得したように頷く。
「そうと決まったら、行くわよ」
カレンが、元気よく立ち上がった。
いつもなら、「よっしゃ」といって続く悟は、なぜか浮かない顔をして、ベンチに座ったままだ。
「どうしたの?」
顔を覗き込むようにして自分を見つめるカレンから、悟は目を逸らした。




