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第9章 カレン吼える④

「サトル!」

 カレンの絶叫が、木霊する。

「大丈夫や」

 別の柱から、悟の声が聞こえた。

「弾が当たるまで、隠れとるような間抜けとちゃうで」

 悟も、敵がRPG7を構えたのを見て取って、素早く場所を移動していたのだ。

 こんな激しい銃撃戦の最中でも、冷静に状況を見据えていた悟に、桜井だけではなく、ターニャまでもが驚いた。

「サトルって、最高」

 よほど安堵したのか、カレンの声が震えている。

「おう、まかしとき」

 悟が、この場の雰囲気にそぐわぬ、陽気な大声を出した。

「愛してるわ」

 カレンも、負けじと大声で返す。

 この状況で、こいつらは、一体、どんな神経をしてやがるんだ。

 桜井は、呆れるのを通り越して、空恐ろしく思った。

 長年傭兵をやってきた桜井でさえ、命を懸けた戦いとなれば、多少の緊張はする。

 だが、悟の声には、緊張感の欠片もない。

 桜井がターニャを見やると、ターニャも、同じ思いを抱いているようだ。 

 複雑な表情を浮かべている。

 カレンは、悟を危険な目に遭わせた自分の迂闊さを呪いながら、残っていたありったけの手榴弾を、矢継ぎ早に放った。

 全てを放った後、間髪いれず、グレネードランチャーの全弾を撃ち尽くす。

 相次ぐ手榴弾の爆発と、凄まじい榴弾に、トラックの残骸と共に、敵の身体が、次々と宙に舞う。

 追い打ちをかけるように、ターニャと桜井の銃弾が集中する。

 撃った方も、撃たれた方も、凄まじい硝煙が立ち昇っている。

 カレンが熱くなり応戦している時、かすかな物音を聞き咎めた悟が、二階の事務所を見上げた。

 そこには、劉が、カレンにサイレンサー付の銃口を向けている姿があった。

「カレーン」

 悟の叫び声は、激しい銃撃戦の音に掻き消された。

 劉が邪悪な笑みを浮かべると同時に、悟が、劉とカレンの間に身を投げた。

 飛出し様、悟が、劉に向けて発砲する。

 どちらの銃口からも、硝煙が立ち上った。

 悟の放った弾は、奇跡的に劉の持つ拳銃に当たって、劉の手から拳銃が弾け飛んだ。

 背後の銃声に三人が振り返った時、三人の目に、悟が腹を押さえて倒れる姿が映った。

 倒れた悟の延長線上に、劉の姿がある。

 三人は、瞬時に状況を理解した。

「サトル」

 カレンが悲鳴に近い声を上げながらも、劉に向かい引金を絞る。

 ターニャと桜井は、外の敵に向き直り、一瞬の隙を突いてこちらに走ってくる敵に、的確な掃射を浴びせた。

 敵は、これで全滅した。

 カレンの銃口から弾が着弾する寸前、意味ありげな笑みを残して、劉が事務所に飛び込んだ。

 直ぐに、ガラスの割れる音が聞こえてくる。

「外に出るのよ」

 カレンが叫ぶと、悟に駆け寄った。

 桜井も駈けてきて、二人で悟の両脇を抱え、悟の足を引き摺りながら、外へと急ぐ。

 ターニャは二人よりも先に出て、油断なく銃口を周りに向けている。

「おまえも手伝え」

 外に出ようとする緒方を、桜井が呼び止める。

 桜井の声に応じるように、ターニャの銃口が緒方に向いた。

 緒方は、素早く踵を返して、悟の足を持った。

「少しでも、遠く離れるのよ」

 外へ出ても、三人は悟を抱えたまま、足を急がせた。

 露払いするように、ターニャが銃を構えながら先頭に立っている。

 トラックの残骸を過ぎた時、轟音と共に、倉庫が揺れた。



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