第9章 カレン吼える③
「新井」
桜井が、崩れ折れる新井を支える。
カレンとターニャは、開いた扉の陰から、油断なく銃口を外に向けている。
「しっかりしろ」
そうは言ったが、新井の目から、命の光が消えかけているのを、桜井は見てとっていた。
「ぶ、武装した奴らが…… た、竹田は、竹田は… や、殺られま、し、た」
口から血を流しながら、かすかな声で、とぎれとぎれの新井の言葉を聞き漏らすまいと、桜井は耳を傾けた。
「敵の数は?」
無情なのはわかっていたが、桜井が、目を閉じかける新井の身体を揺さぶった。
「さ、三十人く、らい… む、無念で…」
最後の命を絞り出すようにそれだけ言うと、言葉途中で、新井の眼から光が消えた。
桜井は、もう喋ることの出来なくなった新井の身体を静かに床に横たえると、マシンガンを手にして立ち上がった。
「畜生お~」
緒方が叫びながら、外に向けて撃ち放った。
狙いも定めず乱暴に引金を引く、緒方のマシンガンの銃口が激しく上下に揺れ、数秒後静かになった。
装弾数三十発の機関銃も、フルオートで引金を絞りっ放ししにすれば、弾が尽きるまでに、ものの数秒とかからない。
いくら実践が初めてで、仲間が殺されたとはいえ、レンジャーで鍛えられたにしては、あまりにお粗末すぎる。
桜井の疑念は、確信に変わった。
「どけっ」
全弾撃ち尽くして、なおも引金を引いている緒方の襟首を掴み、桜井は乱暴に横に振り払った。
緒方が、尻もちをつく。
「杉村あ~、俺たちから、目を逸らすんじゃないぞ」
大声で悟に声をかけておいて、桜井は扉の陰から、外の様子を窺った。
カレンとターニャも、桜井の言葉の意味を理解したようだ。
「あなたは、足手まといだから、引っ込んでなさい」
ターニャが、緒方からマシンガンと弾倉帯を取り上げ、カレンが悟に軽くウィンクした。
悟が、指で丸を作ってみせる。
悟も、理解しているようだ。
カレンとターニャが、外の様子を窺う。
三台のトラックが、カレン達のいる倉庫へ、ゆっくりと向かってくる。
トラックを盾にするように、銃を構えた男たちが、後に続いていた。
カレンが、扉の陰からマグナムを構え、トラックのエンジンを狙い撃った。
その弾が、正確にエンジンを貫き、トラックは轟音を発して、前半分が砕け散った。
すかさず、ターニャが、別のトラックに向けて、手榴弾を放る。
ターニャも、絶妙だった。
手榴弾は、運転席の窓に当たると同時に爆発し、フロントガラスと一緒に、千切れた運転手の身体が飛び散った。
舵を失ったトラックが、カレンに破壊されたトラックとぶつかる。
残る一台のトラックが、猛然と倉庫に向かってスピードを上げた。
桜井の投げた手榴弾が、そのトラックの車体の下で破裂した。
轟音と共に、車体が宙に舞う。
盾を失った男たちが、銃を乱射しながら倉庫に突進してくる。
それを、カレンとターニャは、三点バーストで、正確に撃ち倒していった。
半数が倒され、残りの半数が、トラックの残骸の陰に身を隠す。
慎重になった敵は、トラックの陰から、散発的に弾を浴びせてくるだけだ。
戦いは、膠着するかのように見えた。
その時、敵の一人が、RPG7を構えるのが、カレンの目に映った。
「散って」
カレンが叫んだ。
ターニャと桜井が、素早く反応する。
二人は、ステップを踏んで、扉から離れた。
直後に、敵の放ったRPG7の榴弾が飛んできて、柱に当たって爆発した。
その柱は、悟が隠れていたところだった。




