↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/108

第3章 赤い守り神③

 老板が指を鳴らすと、三人のスパイを見張る役目の二人を残し、残りの猛者共が老板と劉の前に整列した。

 みんな、顔に緊張感を漲らせている。

「劉、おまえを呼んだのは他でもない。帰国早々で悪いが、これから日本へ行ってもらう。おまえにしか出来ない仕事だ。何をするかは、後で教える」

 老板が、整列している男共に目をやった。

「こいつらは、今日から、おまえの部下だ」

 劉が、静かに首を振った。

「なにも、おまえの部下が頼りないと言っているわけではない。おまえの部下は、優秀だよ」

 老板がサングラスを外した。

 人の心の奥底まで見透かすような、冷徹な目が現れる。

 その目で見つめられると、誰しもが恐怖で凍り付いてしまいそうだ。

 老板の目が、じっと劉に注がれた。

 劉は顔色ひとつ変えずに、凍てつくような老板の視線を、平然と受け止めている。

 茫漠たる目は、老板の視線を捉えているのかどうかすらわからない。

 周りの男たちが、緊張に耐えかねて、ごくりと唾を飲んだ。

「こいつらは、長年日本で働いている奴らだ。おまえは、日本は初めてだろう。今度のミッションは、断じて失敗は許されない。だから、日本に精通している者達をおまえの下に付けるのだ」

 静かだが、有無を言わせぬ口調だ。

 劉が、無言で頷く。

 劉は、まだ一言も口を利いていない。

「こいつらは、おまえの噂は知っているが、まだ、おまえの実力を見たことがない。噂だけでも十分だろうが、一度おまえの力を見せておいた方が良いと判断した。そのために、わざわざ日本から呼び寄せたのだ。さっきも言ったように、今度のミッションは、絶対に失敗できないからな」

 そう言って、ボスが三人のスパイに目を移した。

 妖刀のように冷たい光を放つボスの目に見つめられた三人は、一様に目を逸らした。

「おまえ達、この男に勝ったら、助けてやろう」

 三人の眉が、ぴくりと震えた。

「といっても、劉相手に、三人ではちょっと不利だな」

 老板が片頬を歪めて、部下の一人に目で合図した。

 合図を受けた部下は、三人の縄を切り、刃渡り二十センチはあろうかという大きなナイフを、三人に手渡した。

「それは、ハンディだ。劉は、素手で相手をする」

 劉は、なんの感情も表に出さず、その光景を静かに眺めている。

 ナイフを受け取った男たちが、劉と手にしたナイフを交互に見た。

 三人とも、劉の噂は嫌というほど耳にしている。

 そして、目の当りにして、劉の不気味な迫力に圧倒されてもいた。

 それでも、犯罪組織に潜入するくらいだから、男たちも腕には相当覚えがある。

 それぞれ、組織で鍛え抜かれてきた連中だ。

 三人で掛かれば、いかな劉でも倒せるのではないか。

 男たちは、そう判断した。

 三人が目を見交わせ、同時に頷き合った。

 それが合図でもあるかのように、無表情のまま、劉が無造作に一歩踏み出した。

 三人が、また、目を見交わす。

 もう一度頷き合い、それから意を決したように、一斉に劉に襲い掛かった。

 自分に向かって繰り出された三本のナイフを、劉はなんなく躱すと、一人の腕を掴み、軽く捩じ上げた。

 骨の折れる嫌な音と、小さく呻く声が重なった。

 さすが、選び抜かれた男とあって、腕を折られても叫び声を上げはしない。

 だが、その呻きが絶叫に変わった。

 劉が、男の首を片手で掴んで、宙に持ち上げたのだ。

 その絶叫も、長くは続かなかった。

 劉が、男の首を掴んだ手に軽く力を入れて捻った。

 それほど力を入れていないよに見えたが、乾いた音とともに、もがく男の足が止まった。

 首が、あらぬ角度に捻じ曲がっている。

 劉が手を離すと、糸の切れた操り人形のように、男の身体がことりと床に転がった。

 その間、ものの数秒と経っていない。

 残る二人が、両側から同時にナイフを突き出してきた。

 軽いステップを踏んで後退した劉は、二人の後頭部を掴み、お互いの顔面を叩きつけた。

 グシャッという音と共に、二人の顔面がみるみる朱に染まる。

 そのまま二人を放り投げると、劉は、何事もなかったかのように、老板の前に立った。

 もう興味を無くしたように、三人の骸を見ようともしない。

 老板も、満足げに頷くだけで、三人の死体には目もくれない。

 部下の男たちは、声も出せずに、呆然と立ち竦んでいるばかりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。