10『拡張されてる君のインベントリと一緒にしないでくれる?』
「そういえば買い物ってどうやるんですか?」
「……君ね…ああ、君だもんね…」
久しぶりにシャードさんの家でゆっくり休んだ翌日。狩りやデイリークエストは午後にすることにして2人で中央王都をぶらついていた。
ここをこんなゆっくり過ごすのも…初めてオークションに来たとき以来だなあ。
「とりあえず倉庫を見るなら……ここかな」
シャードさんに連れてこられた豪雪地帯よりの王都のはずれ。
そこには色々な小屋が立っていた。
「おおー」
「定住向けの家はこっち。冒険者向けの家や倉庫はこっちだね」
「家ってここで買って持っていくんですか?」
「そうだね。実際にあるものを見てもいいし、店にあるカタログを見れば在庫も見せてもらえるよ。だいたい中央よりは高額品で外れに行くにつれてテントとか、安いのとか中古品が売ってるよ」
定住向けの家はモデルルームみたいな感じで
冒険者向けの家は…単身者向けのアパートの一室みたいな感じの印象のものが多かった。
と思って…あ、となる。
「……シャードさん、私そういえばどうしても欲しいものがありました……」
「何?」
「お風呂が欲しいです…!」
シャードさんは一瞬ポカーンとしてから……僅かに頬を染めた。
「……君、街の外に寝泊まりすることもあるのに無防備になるお風呂が欲しいの…」
「欲しいです!全力で欲しいです!」
布で身体を拭いたり、部屋でお湯で髪を洗ったありするのは…実はすっごく辛かった。ゆっくり!入れる!お風呂が欲しいんだ…!
全力で頷けばシャードさんは頬を染めたまま静かにそっぽを向いた。
「……わかった。家、買い直す」
「え、でもシャードさんこの前買い直したばっかりですよね。私テントですし私が買いますよ」
「僕が絶対買う」
「えー…色々見て選びたいのに「君が選んでいいから、僕が買う!!」」
半ば怒りながらそう言われて、しぶしぶ引き下がる。
色々な建売ハウスがあるものの…シャードさんはまっすぐ私の手を引いて1軒の店に入った。
「ちょっと、いる?」
「ん、ああ、シャードじゃねえか。なんだ、不備でも見つかったか」
「違う。また家が欲しいからカタログ見せて」
「なんだ、気に入らなかったのかよ」
どうやら馴染みの店のようだ。
シャードさんの後ろからひょっこり顔を出すと、大工!って感じのおじさんは嬉しそうに破顔した。
「お?おー!そういう事か!なるほどなあ、そういうのが欲しいんだ?」
「風呂付き」
「そらまた豪勢だな。あー、あんまねえけど、この辺は風呂付きだ。お前水魔法使えたっけ」
「生活に使える程度は。でも火は使えないよ」
「じゃあ行けんだろ。火も水もダメならさすがに負担がでかいからな」
どれどれとカタログを見せてもらうと、そこには数件の物件情報があった。
1部屋とトイレと風呂……は、却下だ。
私1人ならともかくシャードさんもいるから1部屋は荷物が置きにくい。
2部屋とトイレと風呂……の物件は数個あった。
「この辺のどれかって現物見れますか?」
「ん、あー…これでいいか?」
「はい、大丈夫です」
そして見せてもらった家は今の家と似た間取りのものにお風呂が着いたものだったが…これはダメだ。脱衣所がない。脱衣所なしはさすがにきつい。
でもお風呂のサイズはなんとなくわかったが……
「…ちょっと湯船小さいですかね?」
「なんで僕に聞くの!?」
「え、だってシャードさんの方が身体が大きいから」
「僕はどうでもいいよ!!」
でもねえ、尻尾もあるから小さいと思うんだよね
怒ってるせいで後ろでビタンビタンいってる尻尾を見てやっぱりそう思う。
「これに脱衣所がついて、もうちょい湯船が大きいものが欲しいですね」
「愛されてんなあシャード。じゃあちょっと値ははるがこっちはどうだ?こっちなら2人でも入れるんじゃないか?」
「入らないよ!!」
「おー、このサイズならシャードさんも安心ですね」
「知らないよ!!」
「アッハッハッハ!!お前ら良いなあ。そうだな、金額はこれくらいだが…なんか建材あればその分値引くぜ」
建材…そういえば林檎の木材があったなあ。
これとかどうですか、と木材を出せばその分値引きして貰えた。
値引きが入って金貨10枚。だがぷんぷん怒ったシャードさんは絶対に私にお金を出させてはくれ無かった。
倉庫はそれに比べて…あれみたいな感じだった。収納ボックスの、ちょっと大きいかんじのもの。
「倉庫はどんなものを入れたいかを明確に考えて買った方がいいよ。例えば割れ物を多く入れたいなら細かい棚付き、装備を入れたいなら掛けるフック付き、素材が多いなら……そこそこの棚付きかな」
だが……問題がある。
「……収納数少なくないですか」
「拡張されてる君のインベントリと一緒にしないでくれる?」
どれも50-100程で。こんなものじゃ10個あっても1時間分程度の採取量じゃないかと言ったら割と本気の力でシャードさんに頭を叩かれた。




