5『あの子はいったい何なんだ』
『私が色々やらかしました』
首からそう書かれた看板を下げて、クランの幹部室で私は床に正座をさせられていた。
もちろんクラマスターはそんな酷いことしないよ。シャードさんの仕業だよ。
「じゃあ、とりあえず今後はこんなことは起きないんだね?」
「うん、余程のことが無い限りは私からの連絡を待つって言っていたので。街の中は安全です、神に誓って」
「……洗脳とかデバフ系の魔力はたしかに感じられません。いすずさんは正常ですね」
「当たり前だよ。こんなバカ全開で操られてるわけが無いだろ」
酷いなーと思いつつも
私のせいじゃないと思いつつも
事態が事態だったので……言い訳もしにくい。
馬車の付喪神…ホラーオブボックスさんが私に気を使って周りの人にバレないようにしてくれた封印はとても強力で、かつモエモエすら死なない命にも配慮した封印だったらしい。
普通なら意識不明で、何もかも感覚を消した空間内では起きていられなかったらしい。
だが相方が居なくなったことでシャードさんの竜人の生存本能が覚醒して目覚め
クランに連絡したことにより大騒ぎに発展し
凄まじい封印結界で色んな人が集まって対処した結果のあと、私がとんでもない存在に送り届けられた。
いやまあ私のせいといえば私のせい…なのか?
まあ、私がやらなければならないことだったけどさあ。
「……うん、じゃあとりあえず無事に戻ってこられたわけだし、今後も安全みたいだし反省会はここまで。というかつついたらとんでもないのがいっぱい出てきそうで、俺としては触れない方がいいって判断だ」
「僕は全力でつついて後でお説教だからね、何が出てきたとしても絶対に許さない」
「うん、まあ、それはシャード達の中で完結するならやってくれ」
「じゃあ行くよ」
「はーい」
足が痺れて立ち上がれないでいると、ひょいって肩に担がれる。
ルイスさんに手を振られて振り返して…
「あ、かわい子ちゃん」
「はい?」
「……君は、人間の味方だよね?」
人間の味方…?そんなの当たり前じゃないか。
「当たり前じゃないですか。『神に誓って』味方ですよ?」
微笑んで言うと、ルイスさんも…その場の全員が真顔になった。
もちろん人間の味方だ。人には、強くなってもらわないと色々と困るのだ。
「いじめないの」
「いじめてないですぅー。おしり叩かないでくださいよ」
パンッとシャードさんにおしりを叩かれて文句を言うと、さらに叩かれ。
そして幹部室から連れ出された。
sideルイス
いすずが連れ出されると…緊張から解放されて、全員が椅子に座ったり溜息を吐いた。
「ルイス…あの子はいったい何なんだ」
「……シャードの意見に俺も賛成だ。知ればきっと巻き込まれるぞ」
好奇心…というか恐怖心か。
怖くないものである保証が欲しくて、正体を気にする幹部を窘める。
あの時、俺は何も出来ない存在だと痛感した。
人間の中ではかなり強い冒険者の俺が……それこそ『気をつけなければ』モエモエを踏むような感覚で簡単に殺される存在だと痛感した。
あの存在を見て俺たちが生きているのは『いすずがそれを望んだ』だけだろう。
モエモエ以下の存在を、
いすずに気を使って生かした。
ーーーーーあの化け物にとっていすずはそれだけ大事な人物なのだ……あんなのと繋がっている存在だなんて恐怖でしかない。
「……あいつと関わるべきじゃ無かったんじゃないか」
「……だが、2次転職の情報を諦められたのか?あの時の俺たちに」
ヤシロの言葉はたしかにその通りだ……だが、それは今更だ。
巻き込まれないように、知らないようにしても
俺たちは既に関わり始めている。
「とりあえず、彼女に対しての矢面はシャードか俺がする。くれぐれも深くつついたり……危害をくわえないように」
どう対処すべきか。
知らないままでどこまで行くべきか。
銃x採掘者の問題もあるし
スキルレベル上げの問題もある。
2次転職が完了し、『深淵の探索者』になったとはいえ…俺の『選択採取』はレベル1だ。
このままでは望まずとも頼るしか道がない。
……とりあえずスキルレベル上げに戻るか。
面倒ばかりだなあ……と深くため息を吐いた。




