4『頭が高いぞ』
sideシャード
「これね、エリアの端にてんてんと埋められているこれが結界を作り上げているわ」
「破壊しても良いか」
「問題ないと思うわ」
『砂漠のオアシス』が注目している村が襲われたため…幹部全員が、それぞれPTメンバーを引き連れてきた。
総数37名で調査した結果モエモエのエリアからライト村を覆うように点々と、禍々しい陶器の破片が発見された。
「『ウインドスピア』」
許可が降りた瞬間破片を魔法で破壊する。
すると……モエモエエリアを覆っていた重苦しい空気が一瞬で霧散した。
「どうだ?」
「入ってもデバフがつかない。急いで村に行くぞ!」
無言で駆け出して…モエモエを蹴飛ばし、踏んで倒しながらも最速で村にたどり着く。
「う、うぅ……シャード、か…」
「いすず!いないの!?」
よろよろと家から出てきたのはトールだった。
それを無視して雑貨屋、孤児院、飯屋を探す。
デバフがかかる状態でも探したが…やはりいすずはどこにもいなかった。
「非戦闘員の救助を優先しろ!」
歯を食いしばって、飯屋の女将さんを優先して救助する。
「…シャード、さんかい…?」
「大丈夫かい、これを飲んで」
店の中で倒れている女将さんに状態異常回復薬とHPポーションを飲ませると…ふう、といきを吐いて女将さんの意識がはっきりしてきた。
「ありがとうね、もう大丈夫だよ………何があったんだい?」
「……さあ。まだ分からないから僕は調査に戻るよ」
そして女将さんは……僕の顔を見てなにかあったのかと察したようだ。けれど彼女を立たせると…すぐに店から出る。
すると店の外で待っていたルイスに頭を軽く叩かれた。
「竜人の性ってわかってるが表に出しすぎだ。頭冷やしてこい」
「……わかった」
正直何かしていないと吠えたい気分だったが……
歯を食いしばって広場で家を出して中に入り……
バアアアアアン!!
テーブルを思いっきり叩く。
容赦なく叩いたため木製のテーブルは砕けて飛び散り…ため息をついて椅子に座る。
夜明け前に不在が判明して……もう半日。
いすず、君は今どこにいるんだ。
通信機で連絡しても通じない
メッセージも返事が来ない。
………どこに、どこにいるんだ……!
村人も村に居た人も全員無事だった。
今回のことを重く受け止め……ルイスは雑貨屋の主人…村長と話し合ってクラン拠点をライト村に設置することにしたらしい。
家にいても、そこかしこにいすずの気配があって辛いので……僕は幹部の部屋で、皆と共にいすずの居場所を考察していた。
「……いすずが原因でなにか起こった可能性が高いが、何が起きているのかは分からないか…」
「……彼女は色々訳ありだからね。ちなみに聞かないで置いた方がいいよ。これは君たちを思って言ってるから」
「でもねえ、それだと何も出来ないのよねえ」
いすずが訳ありなのは、転職の情報や採取の情報で…薄々みんな察していたようだ。
気になってはいるようだが僕からの忠告を受けてそこは誰も突っ込まない。
「…何者かがいすずを攫うために封印を施した。やはりその可能性が高いのか…」
カタカタカタ…
バタバタっ
「「「なんだ!?」」」
「おい、大丈夫か!」
不意に、全身が鳥肌立つような寒気が漂った。
慌てて全員で外に出ると……村人やクランメンバーが数人、村の中で倒れていた。
「……何か、来る」
立ち上がっているのは……パッと見120レベル超えのメンバーだけだった。
村の入口
おぞましい気配とともに………死の気配がたっぷり染み付いた、御者も馬も居ない馬車が…キィ、と不気味な音を立てて止まった。
無意識に杖を握る力が強くなり…ルイスもヤシロもみんな装備を握って入口を見ている。
だが……攻撃が通る気配が微塵も感じられない。
静かに扉が開くと………
明らかに異彩を放つ人サイズの人形が数体出てきて……中から出て来る人の為に降りる場所を整える。
そして中から…人の姿をした絶望が現れた。
「……頭が高いぞ」
絶望が無表情で一言つぶやくと、全員一瞬で足元から崩れ落ち
咄嗟に武器を支えにして膝をつく。
それでもいい方だ
倒れている奴だって多い。
そして絶望が馬車の中の手を差し出すと……その手を取って……見たことの無い、無表情のいすずが出てきた。
「そなたの献身に心からの感謝を。またいつでも来るが良い、我が名を呼べば迎えを使わそう」
「定期的に差し入れを届けますね。色々お土産もありがとうございます」
……誰だ、あれは。
絶望と対等に話すいすずは僕の知らない彼女の姿だった。
「労働に対する正当な対価だ。感謝は要らぬ」
「そうですか。では申し訳ないのですが…彼らが少々苦しそうなのでここらで」
「………名残惜しいが帰るとしよう。いつでも人を見捨ててこちらに来ても良いのだからな?」
「私の帰る場所は定まっていますので」
「残念だ。ではまたな、いすずよ」
いすずの手に軽く口付けを落とすと、絶望もモンスターたちも馬車に乗り込み……闇に消えるように去っていった。
後に残ったのは重圧から開放された僕らと……いすずだけ。
「「「「………」」」」
全員の無言の視線を受けていすずは一瞬空を見あげたあと
「えーーっと…ただいま?」
両方の人差し指を両頬の当てて子供っぽくキャピっと笑った。
「君は!!何をっ!!!!!!!!!」
それはやばい事を誤魔化そうとするいつものいすずで
いつも、一緒にいるどこか子供っぽくて大人っぽいいすずで
怒鳴ろうとしても何も言葉にならず、立ち上がりながら駆け出していすずを抱きしめた。




