7『彼からお届け物』
しばらく泳いでいくと、広いフロアに到着した。
屋根の無い吹きさらしの神殿の広間のような場所は……ゲーム内でボス戦のフィールドとなった場所だ。とはいえその広さも半分以上が小箱に埋め尽くされているので景観も広さも台無しである。
その中央にあるとてつもない大きな貝殻の上に座った……私よりは年上だろうが、とても可愛らしい水色の髪をした女神は……私たちを見てとても嬉しそうに微笑んで手招きをした。
『こっちよ〜、よく来てくれたわね使徒。私、あなた達にと〜っても逢いたかったの〜』
このボスらしくないほんわかしたお姉さんみたいな人が……海底エリアボス、女神ユーノだ。
「初めまして、お迎えありがとうございます。ゴーレムさんからお届け物を預かって参りました」
『え、そうなの〜!?彼からお届け物…何かしら』
女神の前に3人と4体で降りて、先頭で頭を下げながら用件を話すと…ユーノはポッと頬を染め、その頬に両手を添えてくねくねしだした。
うん……?これは……?
非常に微妙な嫌な空気を感じつつも……預かった『女神の指輪』を取り出すと、それだけでベキッと空間が軋む音が聞こえた。
ちょ、これ大丈夫…?
慌てて周囲を見渡しても異変はーーーーーあった。
護衛さんが杖を構えて必死に何かを詠唱しているのだ。あ、と思ってよく見ると広間に貼られていた結界がゆらゆら揺らめいていた。
これ、だいぶヤバいやつーーー!
『嬉しいわ……全部大事にするわね。あの人が私に作ってくれたものだもの』
「……それはフィールドに配布するための物では無いのですか?」
頬を染めて千を超える小箱を受け取ったユーノに思わずツッコミを入れると…それまで頬を染めていた女神の表情が一瞬で変化した。
苛立ち、殺意……嫌悪。そんな負の表情だった。
『…これは『女神の』『指輪』よ。つまりわらわの物。わらわの私物をどうしようと、わらわの勝手であろう?』
まさにボス。ボスらしい威圧感を放つが……
「ちょっと待ってください。周囲への影響を大きくすると彼の結界が壊れてしまいそうです。圧をかけなくても話はできますので普通に話しましょう。今にはただ確認をしただけです」
『…む。それもそうね〜。ごめんなさいね、手放せって言われてつい怒っちゃったわ』
まだ、話は通じた。
即座に対話を望めばユーノは怒りを解いてくれたが……どうしたものか。
この加重空間を何とかするためには指輪を指定エリアに埋めるよう促さなければいけないのに……それを言えば即座に彼女は怒り狂うだろう。
『使徒もそこの旦那様に貰ったものは手放せないでしょ?本当に羨ましいわ……この世界に来てまだ少ししかいないのになんでもう旦那様が出来てるの?私なんてまだなんの進展もないのにぃ…』
そして彼女の言い分もまあ、わかる。
シャードさんに作ってもらったお古の装備を、手放す気になれない私も似た様なところはあるからだ。
とはいえ彼女の貰った指輪は、オーダーメイドではなくただの人の転職用アイテム。私とは違うのだけれど……いじけ出す雰囲気を見るにゴーレムさんとは別に恋人同士ってわけではないようだ。




