4『そういうギミック』
「はぁ……勝てねぇー」
ボヤきながらも、身体は淡々と魚型のモンスターを倒して経験値を稼ぐ。いや違う、経験値を稼ぐ私の夢をまた見ている。
(また思い出が実写化している夢かな…)
夢だとわかっているのに…私の意識は、過去の自分へと重なっていく。
昨夜、海中地帯のボスへ5度目の挑戦をして見事に返り討ちにあった。
それは集めるのがしんどいボス挑戦のためのキーアイテムを5度ロストしたという事でもあり、勝てなければもちろん得たものはゼロ。単純にドロップ運がクソで出ないと言う現象よりも酷い結末に涙が出そうだ。
4回の全滅を経て、今回のメンバーは熟考に熟考を重ねて考えた面々で挑んだ。
だが相手はまだワールド全土で討伐実績が無いボス。
運営の悪意、レベル解放が来ないと無理なクソゲームと言われるボスだけあって勝ち筋が全く見えなかった。
ボスがね、強すぎるのだ。
今のレベル制限は200ぞ?
ボスと取り巻きのレベルは300だったぞ?
取り巻きの攻撃だけで即死レベルですわクソが。
「生存するためにはガチ守備振りの盾役とステータス向上をさせるバフ役の回復役だけじゃなく、敵を弱体化が必須かなあやっぱり。…アンチアタックだけじゃ足りないから敵の攻撃力を下げるデバフ特化のヒーラーもいるか…でも回復2枚だと火力面がなあ…」
4人パーティで、防御特化、味方強化タイプの回復、敵弱体化タイプの回復、ちょっとだけ攻撃を相殺できる火力の私。
うん、火力不足で取り巻きを一体倒すのだけでもきついのが想像つく。
耐えられなければ負けるが、たとえ耐えたとしても敵を倒せなければ意味が無い。
どのアイテムを使うか
どの構成で行くか
装備のエンチャントはどうするか
スキル構成は何がいいか
ボスに挑むためのキーアイテムの入手方法が出回ってから、仕事も手につかずクランメンバーとも毎日攻略について語り合っているが……海中地帯ボス討伐の目処はいっさいたっていない。
「女神もやばいけど、あの護衛はなんなん。攻撃が一切当たらないってどんだけ回避が高いのか……そういうギミックなのか」
レベル解放を待たねばならないのか、それとも何らかのギミックをクリアする必要があるのか。
女神はどの攻撃も1ダメージしか入らないけれどそれはまだマシな分類で、何故かボスより弱いはずのくじらに乗った杖と本を持った女神の護衛?の魚人は1ダメージすら入らないのだ。
そのくせ打ってくる攻撃魔法は盾職以外が受けたら全て即死クラス。本当にやってられないクラスの難易度だ。
「回避をあげるか…うーん、でも感知盛らないと火力落ちるしなあ…」
火力が落ちるのは致命的だが、生存力が上がるのは魅力的でとりあえず…バランスを考えつつ素早さエンチャントの装備を作ってみるかな。
ゲーム画面を小さくし、インターネットブラウザでサッとwikiを開いて、エンチャントアイテムを調べ……どうやって?
私はいま、実写状態なのに……どうやって、ゲーム画面とは別の画面を開いた?
実写化することにより、絶対的に無理な行動を再現させようとしてフッと『夢の私』と『私』の意識が剥離する。
(……完全に同調してた…)
自分なのに自分じゃ無くなるような、言いようのない恐怖感を感じる間にも……夢の私は、記憶通りの行動を繰り返していく。
確か、この後は…
「うおおおおおお、いすずうううううう」
そう。大量のモンスターを引き連れた一塁が突っ込んできたのだ。
「助けてくれええええ!!」
「ちょ、何やってるのバカ!『トリプルショット』『シューティングスター』」
20体以上のモンスターを引き連れた一塁の背後に、必死に攻撃スキルを打ち込む過去の私。
……うん、改めて見ても思うけれどこの時の一塁はとんでもない迷惑行為だったよね。
「わ、わりぃ…なんか変なボタン押したら急にモンスターがうじゃうじゃ湧いてさあ」
「変なボタン?……何!?」
必死に敵を減らして、ようやく一息つくと……私の前にはあの憎き一切の攻撃が当たらない女神の護衛が、半透明の状態で現れた
過去の私はそれを警戒するけれど……私はもうその答えを知っている。
『…強き者よ、そなたを認めよう』
これはボス弱体化のためのギミックだ。
理由は分からないけれど1度でもボスに挑み、かつボスに勝てないプレイヤーがギミックのトリガーとなり様々なギミックをクリアするとボスや護衛たちがどんどん弱くなっていくのだ。
このギミックはモンスターラッシュ。
ギミックを起動したのは一塁だったけれど過半数を倒したことにより、私がギミック解除者になった瞬間だった。
「え、なんだ今の」
「もしかして、ボス対策のギミック…!?」
見たことの無いイベントを見て、一塁と真顔で見つめ合い……私と一塁はフィールド中にあるギミックを探すべく走り出した。
海中地帯のボスである女神のワールド初の討伐を達成したのは、この一週間後の出来事だった…。




