2『異常が発生』
ハコさんと一緒にモンスターを蹴散らして、ゆっくり安全に歩き175レベルエリアに入った時一番に異常に気づいたのは私だった。
「……え?」
トリプルショットで眼前に居る三体の敵を倒したはずだった。けれど…何故か一体だけが生き残った。狙いは確かで、無理なく倒せたはずだったのに…一体だけ生き残ったのだ。
シールド魔法や硬化系の何かを使われた気配は無い。けれど…事実として敵は生き残っている。
生存したモンスターには間髪入れずに通常弾を撃ち込むことで倒したが…狙いを外した事実に、外したことに気づかなかった自分に呆然とする。
「なにか異常が発生してると思います」
「大丈夫?」
「どうした?」
不安は即共有で、声をかけるとそれまで一定の距離を保っていた全員が集まってくる。
分身やハコさんも心配そうにしているのを軽く頭を撫でてあげながら…先程のミスを説明するも……異常が起きていることは理解したけれど、何が起きているのかは2人ともわからなかった。
「僕の攻撃はちゃんと当たってるけど」
「…そうだな」
「シャードさんの攻撃もすこしズレてると思います。ここって思った位置と10cmくらいズレが発生してるかと」
「そう??」
すぐにシャードさんが適当な敵に魔法を打ち込んで確認してくれるとやはり私の感覚はズレを感じたが、他の人には感じなかったようだ。
たしかに違和感を感じるのに誰も気づいてくれないことに言いようのない不快感を感じるも……
分からないものは分からないので、違和感込みで敵を掃討して進む。
だが……180エリアに入るとさらに増した違和感のせいで私は気持ち悪くなってしまった。
「大丈夫かい」
「役に立てずすみません」
「気にするな、俺たちだって何とかできるさ」
馬車になったハコさんの中に座り、目眩に苦しむ私を扉の外からみんなが心配そうに覗き込む。
申し訳ないと思いつつも、座席に横にならせてもらった。
「どうする、いすずの具合も悪そうだし引き返すか?」
「そうだね、迎えも来なさそうだしここら辺で少し回復するまで休んで一度戻ろうか」
目を閉じると、少し楽になる。
目に見える世界と、実際に起こる事象に対して差があるから気持ち悪くなるのだ。
例えば手のひらでパーを作る。
自分の中では開いたつもりなのに実際はまだ開き切ってない、そんな感じで全ての現実が遅いのだ。
何故そんなことが起こるのか……感覚……感知か?
思い至って脱ぎやすいアクセサリーと帽子を脱ぐと、現実と感覚の差が若干縮まった。
そういう事か、原因は分からないけれどこの現象の一端には感知ステータスの高さが関係あるようだ。
「ハコさん、少し着替えるから扉と窓を密閉して」
『かしこまりました』
フィールドで感知装備を脱ぐことは私にとっては危険極まりない行為だけれど、歩けもしない状態よりはマシだろう。
それに感知が高くても当たらないなら意味は無いしね。
そう判断し、シャードさんとデートの時に来たオシャレ着を着ると……理解出来る範囲が一気に狭まったが、誤差がかなりなくなり楽になった。
まだ少しもったりする感覚はあるけれど…相当ましになった。




