9『オレ、雷帝!』
『魂の挑戦』の低層階では今のところ、混雑以外の混乱は起きていないらしい。
友好関係を結ぶほどのクランだけあって狩場横取りやカツアゲなども起きていないらしい……が、混雑問題はかなりやばいことになっているとトーレンさんたちにも聞いた。
多いときでひとつのフロアに30人以上居たらしく…うん、絶対に行きたくないと聞いた瞬間思ったよ。
人の多さが他クランが階層を登る足枷になり、そのおかげで25階層を突破した人はまだうちのクランのみ。
採掘者の重要度にいち早く気づいて二重転職までしたクランマスターがいるうちは採掘者も潤沢にいて……まだ、他のクランや王国に対して数歩のリードは守れているそうだ。
でも、徐々に2次職になった採掘者を確保しているクランも増えてきて……今や『採掘』は欠かせない存在とかしてきている。
このまま順調に人が強くなっていけば…世界のバランスが取れるようになる日も近いかもしれないね。
という訳でサクッとレベル170。
ちなみにシャードさんは173
タイラさんは168になった。
タイラさんのレベルが急上昇している理由はあれだ、タイラさんだけは補給と売り込まれたアイテムのやり取りと情報収集を兼ねてこまめに外に出てサブクエを真面目にこなしていたからだ。私とシャードさんは休日に出た時のみサブクエをやっていた。
狩場は28-30階でやっていたため、再度登り直すための破片が勿体なかったのとタイラさんとのレベル差を調整したいとうことを兼ねていたので、彼だけレベルが急上昇してるように見えるのだ。
あと五日もすればタイラさんも3次転職が可能だが…待たずにさっさとやるのには理由があるのだ。
3次転職は開始が早ければ早いほどいい。
逆に言えばさっさと始めなければ…大損を食らうのだ。
3次転職はセントラル…中央エリアの街中の一角で始まる。
170レベル、2次転職済みのソロの状態で街を歩いていると……視界がぶれる箇所が発生するの。
ブ…ブブ…
私の場合は、人気のない公園の隅の方でそれは発生した。
「あったあった」
ブレている箇所に手を伸ばすと…頭に電子音が響いた。
『条件を達成したプレイヤーの存在を確認しました。貴方はさらなる転職を求めますか?』
-イエス
-ノー
電子音と共に目の前に選択ウィンドウが発生してそれを迷わずイエスをタップする。
するとブゥンという音とともに選択ウインドウが消えて…羽の生えた小さな丸いロボットが代わりに現れた。
まるで某エクソシストの傍に飛んでいたあれのような、私にとっては馴染みのある懐かしい存在だ。
『この子は貴方の分身です。貴方と共に旅をして思い出を記録し、あなたに適した職業を決めてくれるでしょう。記録が貯まるまで一緒に暮らしてください』
『よろしくマスター!!』
丸いロボットから手の代わりのアームを出して、子供声の電子音で挨拶をする小さなロボット。
ゲーム内ではこんなコミカルな動きは無かったけれど……これはこれですごく可愛い。
『名前をつけてよマスター』
お願いお願いと甘えてくるロボットの名前をふむと考える。
ゲーム内でつけたトラックは却下だ。
シャードさんみたいなベルとかそういうのも私のキャラじゃないから却下だ。というかシャードさんを模した名前とか思い浮かばない。
ちなみに余談だが、話題には出さなかったがシャードさんの分身は朝ごはんの時には彼のそばに居た。
『いすずもう起きたのかー?』
『いすず様おはようございます』
ハコさんの前に喋っていたのが、男の子なのにベルと名付けられた可愛らしい小竜だ。
話は戻して私の分身であるこの子は転職を完了してもしばらくの間は形状は変わらない。
転職が完了して……かなり経ったら形状は変化するはずだが……希少種に変化させられる課金アイテムの『幻獣のカード』が手に入るか否かで転職後の雷帝の形状は変わるが……当分はこのままだだ。
「じゃあ、雷帝」
少し悩んで…雷王よりもこっちの方がカッコイイかな程度のノリで決めると、雷帝は嬉しそうにぴょこぴょこと動いた。
『雷帝、雷帝。オレ、雷帝!』
掌を出すと羽と手を格納してぽふっと球状になって掌におさまる雷帝。よろしくねと笑いながら反対の手で雷帝の無機質な丸みを撫でる。
『よき名をつけてもらったな。名前負けせぬよう励むがいい、雷帝よ』
無機質な転職の声が急に感情のある声に変わり…聞き覚えのある声にぴくんと反応する。これは多分…ランクアップの時にであったゴーレムさんの方だ。




