4『非公認の師匠』
sideシャード
「あ、いすずが逃げ出した」
「あー…良いんじゃねえの?これで契約違反で無理に接近したって言って王家が不利な展開にもってけるし。いすずもその展開狙いだってわかってただろ」
「だと思うよ。でももう付き合う義理はないから僕はいすずを追いかけるから。タイラもいくかい?」
ルイスのパーティメンバーと動きの練習をしていたタイラに声をかけると、彼はすぐに行くぜ!と返答を返してきた。
「目を離すとまた問題をおこしかねないからな、いすずさんは」
「それはそうだね……うん、いすずは26階で憂さ晴らししてるって」
トーレンが連れてきた奴らが26階…?と聞き耳を立てているのを感じつつも、それらは無視して武器をしまう。タイラも片づけをしたが……
「あ、俺も行きたい。リトル、あとは任せてもいいか?」
「何でですか?マスターがあれを相手どるのが一番有効だと思いますけど」
「いや、考えてみろよ。いすずが、戦ってるんだぞ?あいつの戦闘センスの高さはもう証明されただろ。どんな実践や訓練よりあいつの動きを見たほうがいい勉強になる。だから俺はいきたい」
ルイスの言い分には納得した。だがその言い分を聞いてトレーニングをしていた全員がこっちを見た。
全員が納得し、行きたいとその目は物語っていた。
「……それはそうですね。その言い分でいうと私も見たいのですが…いっそ放置しますかあれ。そうすれば王家側でもある程度対処しやすい反応をくれるかもしれませんね」
「おー、いいなそれ。じゃあ『砂漠のオアシス』の奴らは秘密の26階訓練場に行こうぜ、いすずの雄姿を見に」
ルイスの言い分にクランメンバーが快諾し…トーレンたちが悔しそうにしながらも、俺たちは行っちゃだめなんだよな?とダメもとで頼み込んで振られていた。
まあ、実際にはダメというか無理というのが正解なんだけどね。
だがトーレンたちも所詮他クラン。立ち入れない領分というものがあるのを理解したうえであっさり引いてくれたが…奴らもただ引き下がるだけじゃなかった。
「んじゃ、こことアレの相手は俺らに任せてくれていいぜルイス。なんだったら、あいつのせいでいすずさんが逃げたって俺からも苦情を言うぜ」
「あー、俺たちも苦情言うぜ。師匠のためならそれくらいするぜ」
トーレンに続いて妙なことを口走ったのは、闘技場で三位入賞を果たしたやつだった。
そいつらにつづいて、トーレンの連れてきたバトルジャンキーたちが俺も俺もと苦情上奏に賛同し、アホみたいな笑顔を浮かべながらいすずを師匠と呼んだ。
「お前らが味方になってくれるのは助かるが…いいのか?いすずは絶対に師匠とか嫌がるぞ」
「俺たちが勝手に師匠って呼んで尊敬するだけだからかまわないさ。非公認の師匠も面白いし、わんちゃん色々助けになったらまた相手になってくれるかもしれないしな」
確実にいすずは嫌がると思うけど。だけどクラン関係ない武道会での上位入賞者たちがいすずの味方になってくれるのは正直ありがたい。
いすずに瞬殺されていたが、彼らはこの国の上位のもの達なのだ。その影響力は個々でもそれなりにあるが…人数が集まればとても大きなものとなる。それこそ…ひとつのクランよりも王家に対する影響力は大きなものになるだろう。
何せ各クランのトップクラスの人達なのだから。いすずに瞬殺されているけれど。




