1『敵に回す行為』
1体1では到底勝負にならないという後味の悪すぎる対人戦であったけれど
それを見ていた人たちは皆、凄まじい衝撃や感銘を受けたらしく、その後『砂漠のオアシス』勢vs『トーレン一味』で行われた個人戦はとてもいい勝負となった。
私の動きを見た事で、みんな色々と新しい扉が開いたらしく……スキルに頼らない体術などの新規開拓も始まったので…数年まてば私も楽しめる対人戦が出来るかなあ…
すごく盛り上がり新しい事にチャレンジして上手くいって喜んだり失敗して悔しがるみんなをじとっと恨めしい目で見て、はあと深いため息をつく。
まだしばらくは個人訓練の日々のようだ。
いつもならば私がしょげているとシャードさんが慰めてくれるのだけれど
「こうかな」
「こうもありじゃね」
現在、そのシャードさんも体術を開拓中である。
すごく楽しそう。混ざりたい、混ざりたいけれど…感覚じゃなく目で見てもわかるくらいレベルが違いすぎている。
でも集団の中にあってもシャードさんの学習能力?が著しく高いのがわかる。器用と言うか……さすが効率のために色々と試して、色々実験してきた研究者気質にな人だと思う。
基本能力では体術に関しては物理職の人より、
魔職ゆえ劣っているはずなのに…そんなの微塵も感じさせないで、覚えた動きの応用までサクサクとはじめている。
深いため息をついて、観客席でバトルフィールドのあたりで色々と情報提供をしあって切磋琢磨し合う人たちを見下ろす 。
ああ、つまらないなあ。
「ここは本日貸し切っているはずですが」
「そこをなんとか、今日はとても素晴らしい人がいらしてると聞いたのですよ」
あっちはすごく楽しそうなのにこっちは護衛の壁を破った、王家の人とやらの突撃の対処なんてついてない。
先程から後ろでロイドさんが止めて追い返そうとしているけれどこの人は一向に帰る気配がない。
既にペナルティとして罰金とかが確定してるのに、それくらい払うしなんならここの利用料もはらいますと、全てを金で解決させて突っ込んでくるからタチが悪い。
だがロイドさんに至るまでは突破されてるものの、最後の壁であるロイドさんはとても高くそびえ立っていて越えて来る気がしないし、ロイドさんなら大丈夫ということでルイスさんもシャードさんもバトルフィールドの方にいるのだろう。
ただでさえ不完全燃焼でいらいらしているのに……それに後追いをかけるような、王家の人は私がいちばん大っ嫌いなタイプだ。
「これは『レーニュー家』や『砂漠のオアシス』を敵に回す行為だとわかってらっしゃいますか?今なら多少の目溢しもできます。今すぐ、お戻りください」
「だが、彼女は嫌がっていないようだし挨拶くらいしてもいいだろう?」
シャードさんも構ってくれないし、ルイスさんも夢中だし王族さんもしつこいし……
もういいかな?もういいか。
うん、もう憂さ晴らしに行こう、そうしよう。
ポチポチとシャードさんに『26階で遊んでますねー。思う存分遊んだらお迎えに来てくださいね』とメッセージを送る。
「ダメです。彼女との接見は認められていません。彼女から接見の希望もございません」
そしてすくっと立ち上がると、話せるとでも思ったのだろうか?嬉しそうに私を見る王族さんを無視してロイドさんの肩をポンっと叩く。
「守ってくれてありがとうございますロイドさん」
「…い、いすずさん…」
「もう帰りますね、また会いましょう」
ロイドさんに対しては親しげに言ったつもりだったが、積もり積もった怒りが滲み出たのか…ロイドさんの笑顔がびくっと強ばった。
私とロイドさんの会話が終わったのでもういいねと王族さんが私に声をかける前に…全速力で外に飛び出して、そのまま最寄りの石碑まで突っ走って迷わず25階まで飛んで、26階に突っ込んだ。
レベル150、物理職の本気の動きを舐めるな。




