5『使徒と共にあゆむがいい』
「うむ、質のいい上級紫水晶じゃ。これは『選ばれし者』がまた別の装備を手に入れたらそのエンチャントに使おうぞ」
「良いんですか?」
「うむ。『選ばれし者』も…いすず、も装備が手に入ったらアイテムと共に持ってくるが良い。わちが最高クラスのエンチャントの腕前を見せてやろうぞ。鉱石の礼じゃ」
「ありがとうございます…他にもなにか欲しいものは無いですか?一応これ、トゥルーが欲しがっていたお菓子、手土産で用意はしてたんですけど」
そう言ってトゥルーが欲しがっていた物と同じクッキーやお菓子の類も渡すと……受け取ってはくれたもの…イマイチの反応だ 。石は私がすべきことだ。礼を受けることではない。
だからこそ、なにかほかの返礼品の希望を言ってくれと言うと……シャリアは躊躇った末「色とりどりの布と糸が欲しい」と言った 。
「色とりどりの、ですか?」
「左様。布そのものは蜘蛛糸絹、蚕絹、木や草ばどの植物布など困っておらぬ。じゃが染色素材はのう…色つけにバリエーションが無くってつまらぬのじゃ」
「じゃあ、染色剤もありですね。さすがにそれ等は他の『人』の手が入ってないと手に入りにくいので人の街で買ってきてもいいですか?」
「良き良き。むしろ人の子らの物を使って、人以上のものを作り上げて見せようぞ」
これは…本当に欲しいもののようだ。
布屋はまだ行ったことが無いけれど……いつでもお土産に渡せるように暇な時に行って買っとこう 。
シャードさんの他の部位のための上級紫水晶ついでに鉱石も確保して、魂の試練で水晶も集めて……。
やることが次から次へとあって、とてもまったりする暇もない。
でも……コレが私が味わいたかった日々だ。
「…もうそろそろ日も落ちよう。今日は泊まってまいれ、部屋を用意しよう」
「いえ、私たちは帰ります」
「何故じゃ!?もっとゆっくりしていっても良いでは無いか」
「色々やることを放り出してきたので、戻らないとダメなんです」
全力で引き止めようとするシャリアをキッパリ断って……無理なら不死エリアのホラーオブボックスを呼び出して強行軍するぞと言ったら、シャリアも折れてくれて……深夜に近い時間。ようやく私はシャードさんと共に『ボスエリア』から出ることができた。
「『選ばれし者』よゆめゆめ忘れるでないぞ。そなたが道を誤ると我らの愛すべき使徒も巻き込まれるのだ。そなたの望み、わちらも配慮しよう。じゃからそのまま、使徒と共にあゆむがいい。」
シャリアは別れ際にボスの風格でそんな言葉をシャードさんにかけた。
送られたのは森林地帯の中でもボスエリアよりの位置にある街『トット』
いつもならすぐに石碑でライト村に帰る私たちだったが…深夜であることと、もうとても疲れていたので今日はトットの広場に家を置いて休むことにした。
「…なに」
家に入り……扉が閉まってふっと気が抜けた瞬間、前を歩いていたシャードさんに抱きついた。
言葉は出ない。ただ縋り付くように…力強く、シャードさんの背中に顔を埋めて抱きつく。
「どうしたのさ、もしかしてまだ痛むの?」
違う。痛かったは痛かったけれど…そんなの、治った。どうでもいい。
「…何さ。ほら疲れてるだろ、お風呂に入って美味しいご飯を食べて休むよ」
シャードさんの優しい声が染み渡ってくると、もうダメだった。
ふるふると身体が震える。
ーーーーー涙が、もう止められなくなっていた。
「…泣いてるわけ?」
「………」
しがみついて、すがりついて
声を殺して泣いて、シャードさんの背中を涙で濡らした。




