2『私の旦那は何処だ』
森林地帯ボスエリア、樹林御殿。
世界樹の麓に立つ和風の神社を思わせる木造の大きな…まるで清水の舞台の、足場全てにも部屋があるような大きな屋敷。
系甲冑の弓を背負ったエルフと
ローブをまとったエルフと
……巫女服や狩衣をまとったエルフ。
それら全てが1本の道に向いて跪く
全てのエルフたちが跪いて待つ中…私は道の先である『彼女』の前に降ろされた。
『ハイエルフのシャリア』
金銀の髪が多いエルフの中で……その髪は闇のような漆黒。瞳は怪しく深紫にキラメキ、まるで花魁のように豪奢な服装をしていて……シャリアが首を傾げるとシャラリと、簪の飾りの優美な金属音が静寂の中に響いた。
「ようまいられた、使徒よ」
「………」
蠱惑的な美しさのトゥルーとは系統が違う…雅な美貌のハイエルフは、私を見てとても嬉しそうに目を細めた。
「わちらの無粋も無礼も詫びよう。番をさらわれて怒り狂う者がおるのはドラゴンで知っておるのでな……ああ、そのように毛を逆立てて子猫のように怒って、使徒はとても可愛らしゅうのう…」
ころころと、鈴を鳴らすように笑う声が辺りに響き渡る。
周囲には100人はエルフがいるのに……まるで物かのように、シャリアと私以外の物音は一切ない。
そこには……私のせいで、凄まじい緊張感が漂っていた。
「でものう……」
すうっと目を細められて……親愛とは別の、咎めるような視線へと
王者の、威圧する……圧倒的な圧を寄越される。
「武器を構えたまま、というのはわちを前にして些か礼儀知らずぞ?そちでなくば、生かしては置けぬぞ?」
でもそれがなんだ。
私は銃頭こそシャリアに向いてはいないが……銃をしっかり構えていつでも動ける状態を保って、圧に震えながらも……しっかりとシャリアを睨みつけた。
「それは……私のパートナーも生かさぬという意味か」
時間にしてほんの数秒だったのだろう。
数十分とも感じられるような圧倒的な威圧感の中、紫の瞳をしっかり睨め付け。
シャリアは鬱蒼と笑った。
その笑みは、玩具をいたぶる傲慢な強者の笑いだった。
「……少々躾が必要なようじゃな?」
瞬間、後ろに仰け反り入口まで退避する。
私がいた場所には雨雲が現れて黒い雨が降っていて、私の近くにいたエルフがその雨に触れて倒れるのが見えた。
今のは…拘束の最高クラスの技だ。あの雨に一滴でも触れれば動けなくなる。そしてあの雨は…追尾効果がある!!
「『集中』『ダブルショット』『トリプルショット』」
こちらに向かってきた雨に5発の弾丸を打ち込んでから右に回避する。
狼狽えるエルフたちを邪魔に思いながらも…壁際まで行くと、数十人のエルフを巻き込んで雨雲は消えた。
あの雨は追尾効果もあるが……拘束をする人数が定まっている。銃でダメージを与えて弱体化さえさせればこれだけの人数のいる場では、エルフを巻き込めば怖くない。
『しずまりくださいませ!御館様、使徒様』
狼狽えて静止する声をあげる狩衣を纏ったエルフの中に紛れ駆け抜け……二波も避け続ける。
だがエルフを巻き込んでも雨雲の移動スピードは変わらない。
さすがにこれ以上巻き込むのはあれなので…飛んで壁に足をついて壁を蹴ると同時に…銃口を壁に当てた。
「『ダブルショット』」
採掘を使っていればダブルショットを物に打ち込めばそこから採掘ができる。
だが、採掘を使わなければどうなるか。
『ドーンドーン!』
見た目は木造でもここはボスの住まう居城。壁も当然固く……銃口と壁で爆発が起きるのだ。
「……何をしておる!」
銃口で爆発がすればどうなるか、当然その反動は銃と……持ち主の私にくる。
だがダメージを負っても爆発で急加速した私は…一気にシャリアとの距離を縮めた。その際1人のエルフの服を掴んで一緒に吹っ飛ぶ。
プレイヤーとの距離が縮まった時
シャリアは……防壁を張る。
「…っ、『マジックバリア』」
『う、うわあああああ』
「『邪魔じゃ!!』」
エリアボスの張る障壁だ。適正レベルが数人いて初めて敗れる強度、そんなもの適性よりだいぶ下の私の破れるわけが無い。
ワールドスターの世界線、でならね。
その防壁にエルフをぶつけて視界を遮り…中級水晶、銃弾、砂鉄をばらまき……テントを出す。
「こんな戦い方、知ってるかな?」
そしてテントとシャリアの結界で、出した銃弾や水晶などを挟んで…「『トリプルショット!』」撃ち抜く。
すると、水晶は割れて銃弾や砂鉄は……設置した銃弾の中の火薬に引火して大爆発を起こした。
テントは専用の家具職人じゃないと『壊せない』家だ。
当然爆発も耐え抜き……テントに向かうはずだった全ては跳ね返り、シャリアのバリアに全てが当たる。
「なんと、まあ…」
トリプルショットのダメージと
多数の弾丸による火薬の爆発と
散弾効果を高める砕けた水晶と
全ての攻撃を受けて、シャリアのバリアは消えた。ここまでして、ダメージは然程入ってないって本当にどんだけ強いのよ。
……撒き散らされて、煙幕のように舞い散る砂鉄。テントを無事な手でどかして……視界が悪いうちに目を閉じてシャリアの頭に銃口を突きつける。
「私の旦那は何処だ」
壁打ちの反動で全身ボロボロで
テントと結界の隙間を撃ったせいで右手は水晶の破片や爆発を受けて骨もむきだしだ。正直引き金が引けるのかは分からないが……そこは気合いで引いてみせる。
だが
私の銃口はしっかりとシャリアに届いた。
「あっぱれじゃ、見事なり」
全く、ワルスタの世界線で戦場系のゲームの小技を駆使するとは思わなかったよ。
-エリアボスシャリアの討伐に成功しました。経験値を獲得します。
ーーーーまだ銃口をつき当てただけでダメージは与えてないんだが??




