9『貴女が選んだ、貴女の旦那様よ』
ライト村でスイーツを仕入れて、不死エリア…よく言っている120レベルエリアに向かう。
ここは攻撃する度に分裂するクッキーの付喪神で…その面倒性、倒してもお菓子がドロップする訳じゃないので人気がなく人気がない。
そのエリアの隅っこでインベントリからとある陶器の小さな破片を取り出して「ハコさん、ちょっといいですか」と声かけると……数分後辺りが前も見えない霧に覆われて、その中からぬっとホラーオブボックスが現れた。
ここには何度か来ていて、見慣れた光景だが…何度見てもぬっと現れるハコさんはとても怖い。
「こんにちはハコさん。少し伝言を頼みたいんですけれどいいですか?」
『お久しぶりでございます使徒様。その頼みは少々お待ちください、わたくしよりも頼みを聞きたくてウズウズしていらっしゃるお方がおりますので』
怖い見た目だけれど、ハコさんは静かに馬車の車高を落とすと…中から数人の執事人形やメイド人形が出てきた。
……この流れは、と思った瞬間超美女が私に飛びつくように馬車の中から出てきた。
「いすずー!逢いたかったわ!!」
「…久しぶりトゥルー。と言ってもこの前あったばっかりな気もするけど」
「良いじゃない。いつも遊びに来てって言ってるのにいすずったら全然城まで来てくれないんだもの」
「1人にすると心配で怒っちゃう人がいるからね」
「愛されてるのね、素敵よ。だからわたしも我慢してるわ」
「これお土産」
ちなみにトゥルーがハコさんに乗ってくるのは初めてじゃない。それどころかエルダーさんもたまに乗ってきている。
不死エリアボスの嫁とキャッキャしながら……手土産にライト村の女将さんから買ったスイーツを渡すとトゥルーブラッド(純吸血鬼)のトゥルーは嬉しそうに笑った。
「人の作ったものは嫌いだけどスイーツはずるいわよね。ありがとう、コックに解析させるわ。いつかコックが作ったのをいすずとも一緒に食べたいわ」
「機会があれば」
とりあえず立ち話はなんだと言われて馬車の中に乗って隣で座り合う。
もちろん馬車は動き出さないままだ。
「それで、今日はどうしたの?」
「うん、森林地帯の統治者さんにお逢いしたくって……トゥルーかエルダーさんに繋ぎを撮って貰えたらなって」
「ああ、貴女神様に反抗しているものね。素敵で大好きよ、良いわ聞いてあげるーーーー……」
「ありがとう」
うふふ、と色香たっぷりに微笑むと…トゥルーは目を閉じて少し頭を揺らした。
私たちの通信機器のようになんらかの手段で連絡を取っているようだ。
「あら?いすず、シャリアが早く来てよ待っているわって言ってるわよ」
「…そうなの?」
どうやらやはり呼ばれていたようだ。
じゃあこの後に行こう。その帰りでも秘密の花園に行ってるシャードさんと合流しようかな。
「……まあ、シャリアったらずるいわ!!私たちが一番にいすず達を招待したかったのに!」
そんな考えは、トゥルーの言葉で一瞬真っ白になった。
いすず…………達?
たちって…もう一人って、誰?
そんなの1人しかいないのに…心がそれを否定したがる。
「もう、いすず今度は2人でうちに来てね。『選ばれし者』はもう来てるから、早く来てねですって」
「……『選ばれし者』って…だ、誰のことですか」
「あら?貴女が選んだんでしょ。貴女が選んだ、貴女の旦那様よ」
そう言われた瞬間、私は馬車から転がり落ちながら飛び出した。




