お片付け
セルじいにめっちゃ怒られた後、新しい家族のアレフと一緒に朝ごはんを食べて畑仕事に行く。
いつもなら魔法でちゃちゃっと終わらせるので食後は余裕をもってのんびりしているのだが、昨日からアレフが住むことになったので私自ら色々と教えることになった。
私が食べ物に凝ってるので必然と畑にも力が入り良い作物がとれるようになった。今では私の畑の作物は町や村なのでいい値段で売れる。
村や町へ行くのはセルじいだけ。私はお留守番です。知ってる?私って文字や計算とか教養ある癖にお金の数え方知らないの。多分村の子供だって知ってるよね。この歳になって知らない平民って私だけだと思うんだ。それをアレフに言ってみたら「しょうがないよ」と苦笑いをし聞き分けのない子供を諭すように言われた。何がしょうがないんだろうか。
「よっし!アレフは畑経験ないよね?魔法はどれくらい使えるの?」
「僕は魔法はあまり得意じゃないんだ。どちらかというと武に長けてるって言われた」
「へぇ、じゃあ体力はあるんだ!今日の午前中は育ててる作物に水まきと昨日獲ってきた薬草を薬草園に移して栽培しようと思ってるんだ」
「薬草?そんなものも育ててるの?」
「そう、ここで育てたのをセルじいが調合して町に売りに行くんだ。ここのは野菜、薬草、ハーブ、牛、鶏なんかやってる。あとは作業部屋が隅の方にあるよ」
「そ、そんなにあるのかい?よく二人で育てていけるね?」
「私たちは魔法があるからね!さて、アレフは基本的に畑だけね!種まきと水まき、収穫をやってもらいます。あとは家畜の方も手伝ってもらうよ。あ、薬草園と作業部屋はまだ行かないでね。」
「分かった。で、僕は今日は水まきをすればいいのかな?」
「そ!水属性の低級魔法水をで撒くだけ。その後は動物たち見に行くよ」
「じゃあ今すぐ撒いちゃうね」
アレフが呪文を唱えて魔法が発動する。二人で管理するには大きすぎる畑に水を上手に撒いていく。
これは属性さえ持ってれば上級魔法も使えるようになるなぁ。
アレフの才能に驚きつつも無駄のない作業に感心していた。こやつ、本当に畑仕事初心者か?
何はともあれ水まきは順調にこなし終えたので動物たちの元に行く。
家の裏に畑がありその奥に動物たちがいる。家から遠いが鳴き声や放牧を考えるとこれが適切。
「アレフ!この小屋の中に牛!んでその少し離れた小屋は鶏を飼ってるよ!」
「馬以外の動物に触れるのは初めてだな」
「マジか。魔法で臭いや虫は沸いてないけど糞とかはあるけど大丈夫?」
「え”」
「糞なめんな。動物の糞は落ち葉や土と混ぜて放っておくと発酵して肥料になるんだぞ!臭いもなくなるし」
「そうなんだ・・・。うん、これも生きるためだよね。よし、やろう!」
「おお、その意気だ!じゃあまず牛を隣の搾乳室に連れて行こう。搾乳が終わったら放牧だ」
「大丈夫なのかい?野生の動物や魔獣に襲われたら・・・」
「厳重な結界を貼ってあるから大丈夫!放牧が終わったら牛たちの寝床の掃除、子牛の世話かな」
「子牛もいるのかい?」
「子供産まなきゃ牛乳は出ないからね。因みにオスはお肉になります」
「・・・・・」
うん、そんな複雑そうな顔しないで。昨日食べたビーフシチューの牛肉は子牛のモノって言わない方がいいなこれ。時間の問題だと思うけど。
私たちは成牛を2頭搾乳室へ連れて行く。そこで私が開発した魔法石で動く自動搾乳機!
どうやって作ったって?いや、魔法石に術式書いて終わりだから日本みたいに機械とか作ったわけじゃないし?アレフも驚いてたが使い方を教えたら使いこなした。・・・初心者、だよね?
搾乳中の牛は干し草をむしゃむしゃ食べてどこ吹く風。母親ってすごいな。
「終わったら放牧!まだ向こうにいる雄牛も放牧し終えたら子牛の世話。その後に小屋の掃除」
「やることがたくさんだね。午後の勉強に間に合うかな?」
「間に合わせる。そのための早起きです!」
放牧が終わった後母牛から絞った牛乳を子牛にあげる。アレフから直接母牛から貰えばいいのにとのお言葉を頂きましたがそれだと情が移って食べにくくなるので却下。母牛の抵抗もあるだろうし。
そう言うとアレフは黙った。これが生きるという事です。
子牛の世話が終わったら次は掃除。つっても5頭分の牛の掃除なんてさっさと終わるが。しかも二人がかりだし。むしろ早く終わった。そのあと、草を敷き詰めセットすればおしまい。
水?浄化の魔法がかかった器に毎日綺麗な水が並々と入ってます!
「では鳥小屋に行きます!鶏小屋の掃除は週に2回。餌あげて卵回収して終わり」
「それだけでいいの?」
「世話は簡単なんだけど卵に付いた糞を拭かなきゃいけないんだよね」
「なるほど」
「んじゃ、今日は餌撒いて卵を回収して拭いて終了!」
「よし、始めようか」
10匹いる鶏を外の鶏専用の放牧スペースに追い立て卵を回収していく。本日の卵を一つ一つ丁寧に拭いて柔らかい布の中にそっと置く。これを冷蔵庫に入れるだけだ。ええ、はい。冷蔵庫も私が作りました!
これは必須でしょう!トリップ当初から考えてたことなんですが、私が魔法石と出会ったことで実現し可能性が無限大に広がりました!いやぁ、夏に扇風機とかあると最高ですよね!
ちなみにクーラーはない。それよりも部屋全体に一定温度に保つ魔法陣書いた方が楽だし。
そして私たちが全ての作業を終え自分たちに浄化の魔法をかけて綺麗にして家に帰るとセルじいがお昼ごはんを作ってくれてました。本日の昼食はパスタだった。まじうめぇ!!!
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さてさて、早めの昼食を終えた後は倉庫になってる部屋の移動の時間ですよ!
セルじいは私たちが畑仕事してる間に敷地内に物置小屋を作ってたらしくて準備は万端だった。
それぞれの担当は私が荷物の運搬。アレフは自室になる倉庫の清掃です。
アレフは女の私に重たい物を持たせるなんて・・・!って言ってたけど肉体強化の魔法使えば簡単だし。
実践してみたらアレフは黙った。彼はどうやら肉体強化の魔法が使えないらしい。うん。難しいよね。
中々繊細な魔法だし、失敗すれば次の日には筋肉痛と一緒におねんねだ。
テキパキと動いてたので予想より早く終わった。後は倉庫を綺麗に掃除してベッドとクローゼット等の家具の設置。それらが終わったころには日は傾いていて今日はこれでおしまいってことになった。
サクラが夕ご飯の準備を、アレフはセルじいから剣を教わっている。体力あるなぁ。
明日はセルじいがアレフの家具や服に日用雑貨、ついでに在庫のない調味料などを買ってきてもらう。
アレフは行きませんよ?彼は私と残って家の事をやってもらう。
へとへとになった彼らにタオルを渡して夕食へ。本日のデザートのプリンを食べた頃には外は真っ暗だった。
夜、各々自室でのんびりしたり寝たりしていた。
アレフの部屋は私の隣だ。部屋の順番でいうとセルじい・私・アレフの順番だ。一応防音の魔法があるのだがセルじい曰く「何かあったとき分からないから」という事で使われてない。
なので隣の音は少し聞こえるのだ!
ここで問題。隣・・・アレフの部屋からまた苦しそうな声が聞こえてくる。
大丈夫か本当に。・・・念のためアレフを起こしに行ってあげよう。私、超優しい!
コンコン
はい。返事はありませんね。まだ魘されてるんだろうか?この家の格自室って鍵が付けられてないんだよね。だからこんな風に簡単に中に入れます☆
「うう。ち・・・が・・・」
うんバッチリ魘されてるね。仕方ないので起こしてホットミルクでも飲ましてさっさと寝よう。眠い。
アレフのベッドに近づき彼を揺さぶって起こしてみるが起きない。
むしろ酷くなってないか?え、私のせい?
「アレフ、起きて」
「う・・・。いや・・だ・・」
「あーれーふー!」
「な・・・んで・・・」
埒があかん。物理的に起こしてみるか?そんな物騒なことを考えてたのがバレたのかアレフが起こしてた私の右腕を掴んだ。大層ビビった私は手を引っ込めようとしたがビクともせずパニック状態。
その後も何とか奮闘してみたが無理だった。ので、諦めて一緒に寝ることにした。アレフも落ち着いてるし。遠慮なくアレフを奥へ押しのけて寝っ転がり寝る体制に入る。床に寝るなんて選択肢は存在しない。
もしセルじいに怒られたらアレフのせいにしよう。そう結論付けて眠りに入った。
・・・翌朝、私より先に起きたアレフが混乱しながら私を起こし、騒動を聞きつけたセルじいに尋問された。解せぬ。